婚活アプリでのやり取りが長続きしない僕の現実

婚活アプリでのやり取りが長続きしない僕の現実

やり取りが途切れるたびに感じる虚無

婚活アプリを始めたのは、「このまま一人で年を取るのか?」という焦燥感からだった。地方の司法書士として日々忙しく働いてはいるが、人と深く関わる機会は少なく、気づけば会話のほとんどが依頼人か法務局の担当者とのものばかり。そんな中で始めた婚活アプリだが、やり取りは長続きしない。いいねをもらっても最初の数通で終わることが多く、虚しさばかりが積み重なっていく。

最初は返信が来るのにすぐ既読スルー

最初の数往復は問題ない。「こんにちは」「はじめまして、よろしくお願いします」と、定型文のやり取りをして、それなりに丁寧に返す。だが、それが続かない。ある女性には、三通目の「お仕事はどんなことされてるんですか?」に答えた瞬間、ピタッと返信が止まった。「司法書士です」と書いた途端に。そんなに堅いのか、怖いのか。既読マークだけが残り、ため息が出る。理由はわからないまま、自信だけが少しずつ削れていく。

よくあるパターンその一 丁寧すぎる返信

昔から礼儀を重んじるタイプで、特に文章になるとどうしても形式張ってしまう。ビジネスメールみたいな文面になってしまい、「よろしくお願いいたします」が無意識に付いてしまうのだ。ある人には「なんか堅いですね」と言われ、それ以降は砕けた文を意識してみたが、そうすると今度は「真面目な印象がなくなった」と言われた。正解がわからない。ちょっとした言葉遣いで、人とのつながりが断たれるのが怖くなっていった。

よくあるパターンその二 質問責めになっていないか

会話を続けるには質問が大事だ、とネットに書いてあったので実践してみた。でも「最近ハマってることありますか?」「週末は何されてますか?」と続けて聞くと、「なんか面接みたい」と言われたことがある。確かに、司法書士の仕事柄、聞き出すクセがついてしまっているのかもしれない。沈黙を恐れるあまり、無意識に相手にボールを投げすぎていたのだろう。結果として、自分のことは何も話せていなかった。

「会話が広がらないですね」と言われた夜

ある夜、珍しく一週間やり取りが続いた女性から唐突に言われた。「会話が広がらないですね」と。それはもう致命的な一言だった。自分なりに頑張っていたつもりだった。面白い話題を探し、タイミングも見計らって返信していた。でも、足りなかった。器用に話を広げたり、気の利いた返しをするのは昔から苦手だ。あの日は、スマホを握りしめたまま、冷えた麦茶だけが虚しく減っていった。

雑談が苦手な元野球部の悲哀

高校時代は野球部で、上下関係が厳しかったせいか、「余計なことは言うな」と叩き込まれてきた。無口でいることが美徳、そんな環境で育ってしまったから、雑談というものがよくわからない。話題を振っても「なんか真面目ですね」で終わる。ふざけたくても、そのセンスもない。今さら身につけようにも、もう45歳だ。もう遅いのかもしれない、そんな諦めの気持ちが日に日に強くなっていく。

LINE世代との会話のテンポ感に苦しむ

若い世代はLINEやSNSで軽妙なやり取りをするのが得意らしい。スタンプ一つで空気を読む、短い言葉で深い意味を伝える。でも僕はスタンプ一つ選ぶのにも時間がかかる。無理に明るいスタンプを送っても、どこかぎこちない。文章もどうしても長くなってしまい、相手は読むのが面倒なのだろう。タイミングも合わず、気づけば既読スルー。あのテンポ感に乗れない自分を、時代に取り残されたように感じる。

そもそも婚活アプリ向いてない説

この頃はもう、「婚活アプリそのものが自分に向いていないのでは?」という気持ちになっている。向いている人は自然体で会話が続くのだろう。でも僕は、構えて、悩んで、空回りして、結局疲れる。手軽に出会えるはずのツールが、逆に自分の弱さを突きつけてくる。

プロフィール写真の撮り直しすら面倒

マッチ率が上がらないからと、友人に「写真を変えてみたら?」と言われた。でも、写真一つ撮るのにどれだけエネルギーがいるか。笑顔がうまく作れない。カメラを前にすると表情が固まる。スーツ姿の証明写真じゃダメなのはわかってるけど、それ以外の自分をどう写せばいいのかがわからない。結果、載せるのは何年も前の、どこかで撮った他人任せの一枚。そんな自分にまた少し嫌気がさす。

笑顔が不自然と言われ続けて二十年

「もっと自然な笑顔を」と何度言われたかわからない。でも、自然ってなんだ。仕事柄、真面目な顔をしている時間が多く、鏡に向かって練習してもどうしても口元が引きつる。婚活アプリのプロフィール写真に必要なのは“笑顔”らしいけれど、その一枚を撮るためにどれだけ心をすり減らしたか。そんなことすら、アプリの画面には伝わらない。

趣味欄に書けることがなさすぎる

プロフィールの「趣味」欄を埋めるのも一苦労だ。旅行?行かない。映画?観るけど語れるほどでもない。野球?やってたけど今は観る時間もない。結局「仕事です」って書いたこともある。でも「仕事が趣味」はあまり好印象ではないらしい。そんなことでまた落ち込む。

「野球部でした」が刺さらない時代

昔なら「体育会系で誠実そう」なんて言われたが、今は違う。「昭和の匂いがする」とか「体育会系怖い」とか言われたこともある。頑張ってきたことが、時代によって否定されるのは地味に堪える。自分のアイデンティティが、通用しない。これは地味にしんどい。

司法書士って固い印象あるらしい

「司法書士」という肩書は、信頼感よりも「真面目そう」「話しづらそう」といったネガティブな印象を持たれることが多い。実際に「難しそうなお仕事ですね、私には合わないかも」と言われて終わったこともある。真面目に生きてきたつもりなのに、その真面目さが仇になる。なんとも皮肉な話だ。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。