また誘うよが嘘じゃないと信じた日

また誘うよが嘘じゃないと信じた日

会いたい気持ちはあったはずなのに

「今度ごはん行きましょう」「また近いうちに」——お決まりのようなそのやりとりは、誰にでも一度は経験があると思います。私も例外ではなく、昔の友人や付き合いのある業界の方とそんな会話を交わすことがよくあります。でも、その“今度”はだいたい来ない。仕事が忙しい、家庭がある、体調が悪い…理由はそれぞれ。でもどこかで、会うという行動にまで至らないのは、心のどこかでそこまで会いたいと思っていないのではないか、と考えてしまうこともあります。

予定を合わせるという試練

私のような司法書士の仕事は、スケジュールが流動的です。朝一番の登記申請が入れば、それに合わせてすべてが変わります。裁判所や法務局の時間にも縛られ、事務員のスケジュールにも気を使う。だからといって「予定が合わない」はいつもこちら側の都合ばかりでもないんです。誘いを受けた側もまた、同じようにバタバタしてることは分かっているつもりです。だけど、お互いに譲らなければ、永遠にその予定は合いません。

手帳の空白と心の隙間

予定が詰まりまくった手帳の中で、たった1時間の空き時間を見つけて「この日空いてるんだけど」と連絡する。相手からの返事は「その日は厳しいかも」。そうやって擦り合わせを繰り返すうちに、だんだん誘うのが億劫になってくる。でもふと気づくんですよね。自分の手帳には時間があっても、心には余白がなかったなって。相手に合わせる心の余裕、相手と会いたいという想像力。司法書士としての段取りの上手さが、私生活ではかえって邪魔になっているのかもしれません。

お互い忙しいからで済ませていたこと

本当にそうなのか、って思うこともあるんです。「お互い忙しいから」って言い訳のように使われるけど、それって本心じゃないことも多い。優先順位の問題だと思うんですよね。人と会うって、時間を使うし気力も使う。だからこそ、会おうと思える関係って大切だし、それを大事にしようとしていた自分がいた。でもそれを伝える術を、私はどこかで失ってしまったのかもしれません。

断られるたびにこちらの熱も冷めていく

誘っても断られる日が続くと、「もういいかな」と思ってしまうことがありませんか。何度も声をかけることで、しつこいと思われたくないし、相手が無理して付き合ってくれているのかもと疑う自分がいる。相手を気遣っているようで、実は自分が傷つくのが怖いだけ。それに気づいてしまってからは、誘うことが一種の賭けのように感じられるようになりました。

三回断られたら脈なしって本当か

昔、恋愛指南本か何かで「三回誘って断られたら脈なし」と読んだことがあって、意外とそのルールが今でも頭に残っているんです。友人関係でもそう。三回声をかけて全て流れたら、もうそれ以上誘うのはやめようって、どこかで自分に線を引いてしまう。でも、それが本当に正しい判断だったのかは今でも分かりません。あの時もう一度だけ連絡していたら、何か違ったのかもしれないと思うことがあります。

誘う側ばかりが疲れていく現実

人付き合いには、どうしても「動く側」と「受け身な側」が生まれます。私のように自営業だと、仕事でもプライベートでも“動く側”であることが多い。だからこそ、誘って断られると「なんで俺ばっかり…」という気持ちになる。それが続くと、だんだん人と会うこと自体が面倒になる。司法書士という肩書きの裏で、人との関わりに消極的になっていく自分がいました。

こちらからの連絡が途絶えた理由

ある友人との関係が、まさにそんな感じで終わってしまったんです。何度か食事の誘いをしても断られ、理由も曖昧で、返事も遅くなってきて。最後のLINEに既読がついたまま返ってこなかった時、もうこれ以上は追わないと決めました。こちらが連絡しなければ、関係は続かない。そういう人間関係って、年齢を重ねるほどに増えていく気がします。

仕事に追われていると言い訳してみる

忙しいという言葉は便利です。「ちょっと今立て込んでて」「月末までは無理かも」そんな風に言えば、ほとんどの人は察してくれる。でも、いつからかそれが習慣になって、誘いを断ることが当たり前になっていた時期がありました。仕事に追われているというより、心に余裕がなかっただけだったかもしれません。

土日が潰れる司法書士という仕事

私のような個人事務所の司法書士は、土日だからといって休めるわけじゃありません。クライアントの都合や金融機関の対応に合わせて動かなきゃいけない。そうすると、せっかくの休みにも打ち合わせや書類作成が入ってくる。結果的に、友人と会うチャンスが減っていくんです。スケジュールは埋まっていくのに、心はどこか空っぽなままという感覚に陥ることもありました。

誰かと会う余裕より登記の期限

「今はちょっと大事な案件を抱えててさ」なんて言い訳も、司法書士あるあるです。登記の期限はシビアで、遅れたら責任問題。だからつい、人と会うことを後回しにしてしまう。でも、本当にそれでいいのか?って思うこともあるんです。書類は完璧に仕上がっても、人間関係は未完成のまま。そういう不完全なものに、向き合う勇気が必要なのかもしれません。

だからこそ会いたかった気持ち

本当は、あのとき会いたかった。無理してでも会っておけばよかった。そんな後悔が、ふと夜中に押し寄せてくる。仕事の責任もあるけど、人生の責任はもっと重いのかもしれない。人とのつながりを疎かにしていたら、どんどん孤独になっていく。司法書士としての誇りと同時に、人としてのあたたかさを忘れないようにしたい。そんな気持ちで、また誰かを誘ってみようかと、今日は思っています。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。