会話の始まりはいつも「何の仕事してるんですか」から
地方で司法書士をやっていると、初対面の人との会話で必ず聞かれるのが「お仕事は何を?」という質問だ。別に嫌なわけじゃない。むしろ人間関係を築く第一歩だから大事なやりとりだ。でも、司法書士って説明がややこしい職業なんだよね。ざっくり言えば「登記とか、相続とか、法律関係の手続きの専門家です」って言うけど、ここからが問題。相手の「?」が見えるんだよ、リアルに。
司法書士って一言じゃ伝わらない職業
たとえば「司法書士です」とだけ言っても、返ってくるのは大体「弁護士さん?」とか「行政書士と何が違うんですか?」という質問。いや、それもまた正当な疑問なんだけど、そこから話がどんどん広がっていって、本題に入れないことがしばしばある。お酒の席なんかだと「お金の相談できるんですか?」とか「裁判できるんですか?」みたいな話にもなって、気づいたら僕がセミナー講師みたいになってることもある。
「弁護士さんですか?」の誤解から始まる
司法書士と聞いて、まず「弁護士」と間違われる。これはもう、あるある中のあるあるだ。「弁護士さん、すごいですね!」って言われて、訂正するのも気まずい。でも、間違ったままだと話がどんどんズレるから、やんわり訂正するんだ。「いや、弁護士とは違ってね…」って。そこでまた、細かい説明が必要になって、1分の会話が10分に膨れ上がる。気づけば、話してるのは僕だけになっている。
登記とか債務整理とか言っても余計に混乱させてしまう
「登記」とか「債務整理」っていう専門用語を出せば正確になると思ってる節があった。でもね、それが逆効果なんだ。聞き手からすると、何のことかよく分からない言葉を連発されてるだけ。ある日、知人に「なんか難しそうだね」って言われた時、ようやく気づいた。僕は分かってほしいがあまり、逆に相手を置き去りにしていたんだって。だから最近は、「土地や建物の名義変更のお手伝いをしてます」とだけ言うようにしてる。
簡潔に話そうとして逆にややこしくなる
短く説明しようとして「不動産とか借金のことに関わる仕事です」なんて言うと、それはそれで誤解を生む。融資の仲介?不動産屋?金融業?と、違う想像をされることもしばしば。要するに、短くしすぎても、逆に相手の想像の余地を広げすぎてしまう。ちょうどいい説明ってほんと難しい。
例えるなら…が例えになってない問題
例えるのがいいって聞いたことがあって、「病院でいうと、診察の前に保険証出す手続きとかやる人です」って言ってみたことがある。でも、逆に「え、それって受付の人?」と返されて終わった。例え話って、相手の前提知識とマッチしないと意味がないんだよね。例えることが余計に話を複雑にするケース、かなり多い。
話すほどに「えっと、つまり何?」の顔をされる
一生懸命説明すればするほど、相手の顔に「で、何をしてる人なの?」って文字が浮かんでくる。自分でも「あれ、何の話してたっけ?」ってなることもある。まるで、自分の職業を毎回プレゼンしているような気分になる。しかも、毎回不合格を突きつけられているような虚しさが残る。
気づけば本題に入れず会話が迷子に
せっかくの飲み会や雑談の場で、会話のスタートが仕事の話になっただけなのに、なぜかずっと僕のターンになってしまう。そして、その説明が終わるころには、会話の空気が変わってしまってる。初対面の人と「普通の会話」ができるって、思っている以上に難しいんだなと実感する。
「すごいですね」からの気まずい沈黙
ようやく説明が終わって「へぇ~、すごいですね」って言われたあと、空気が止まるあの感じ。たぶん相手は褒めてくれてるんだけど、こっちは「うわ、これ以上何話そう…」って焦ってる。なんというか、会話の潤滑油になるどころか、油切れの機械みたいになってるんだよね。
あれこれ言いすぎて聞き手が疲れる
気づけば、こっちが勝手に興奮して話してる。専門用語も連発してるし、たぶん表情も真面目すぎて怖かったと思う。以前、合コンみたいな場でやらかしたことがあって、それ以来「仕事の話は最初にしない」と決めた。だって、仕事の話が盛り上がったことなんて一度もないんだもの。
説明が脱線して自分でも何を言ってるかわからなくなる
最初は「司法書士ってね」だったはずが、最終的に「昔、部活で野球やってて~」とか言ってることもある。なぜか学生時代の話に飛んでる。仕事の説明から人柄を伝えようとしすぎて、自己紹介がただの昔話になってしまう。そんなとき、「俺、何してるんだろう」と思うよ、本当に。
じゃあどうしたら伝わるのかっていう話
色々試したけど、結局は「相手に合わせて言葉を選ぶ」しかないんだと思う。話す側の正確性と、聞く側の理解度、そのバランスが難しい。でも、それを考えすぎるとまた話が不自然になる。自然に伝わる方法って、実はものすごく高度なテクニックが必要なんじゃないかなと感じる。
短くまとめる努力はしてるが限界がある
「一言で言うとね…」と始めても、結局3~4文必要になる。それでも削って削って「名義変更の手続き専門家」くらいに絞ってる。でも、それだと「役所の人?」とか「不動産屋?」とまた誤解される。もう、これが宿命だと思ってる。司法書士という仕事自体が、説明しにくい運命なんだよ。
三行で伝えようとすると正確さが犠牲になる
「何でも屋です」くらいまでシンプルにしたら?と言われたことがある。でもそれじゃ、逆に何も伝わらない。「何でも」は便利だけど、中身がないんだ。だから、三行におさめようとすればするほど、ぼやけた印象になるし、説明する意味もなくなる気がしてしまう。言葉って難しい。
相手の興味関心に合わせるしかない
唯一うまくいくのは、相手が興味を持ったテーマだけに絞って話すこと。「親が相続で揉めてて…」という話が出たら、そこだけ掘り下げる。「不動産売る予定があるんだよね」なら登記の話にする。こっちから全部を伝えようとしない。それが一番誤解されにくい方法だ。
不動産の話が出たら「登記」の話に絞る
例えば「土地の名義ってどうやって変えるんですか?」って聞かれたときはチャンス。そこだけピンポイントで答える。「あ、それ僕の仕事なんです」って感じで。そうすると、相手も「ああ、なるほどね!」って言ってくれる。全体を説明しなくても、断片だけで理解されることもあるんだなと思った。
相続や借金の話ならそこだけ話すようにしてみる
ある日、知人に「親が亡くなって、相続ってどうすればいいの?」と聞かれたことがあった。ここぞとばかりに、相続放棄や遺産分割のことを話してみたら、意外とちゃんと聞いてくれた。相手の「今、知りたいこと」にフォーカスすれば、話は脱線しない。勉強になったよ、本当に。
話が通じた時のうれしさと寂しさ
長々と説明して、ようやく「あ、それ前に親がやってたかも」とか「司法書士って必要なんだね」と言われると、涙が出そうになる。ようやく報われた気持ちになる。でも、そんな場面は滅多にない。だからこそ、たまに通じた時のうれしさは格別だ。
「あ、それうちの親がやってたかも」で救われる
この一言を聞いたとき、「この会話、報われたな」って思える。無駄に思えた説明が、誰かの記憶とつながった瞬間。自己紹介にやたら時間がかかる仕事だけど、それでも話してよかったって思える瞬間はある。それがあるから、また次もがんばろうと思える。
でも基本的にはまた次の脱線が待っている
とはいえ、次の日もまた新しい人と出会って、また同じやり取りをして、また脱線して…その繰り返しだ。でもまあ、これはもう、僕の職業の宿命かもしれない。笑って話せるうちは、まだ元気なんだと思う。だから、また今日も誰かに説明して、脱線して、ちょっと疲れて帰るんだ。