見た目も地味仕事も地味目立たないまま終わるのか
そもそも司法書士ってそんなに華がない
司法書士という職業を口にしても、多くの人の反応は「ふーん、法律関係の人なんですね」で終わる。ドラマにもならないし、キラキラしたイメージとは無縁だ。資格を取るのは確かに大変だった。だけど、その苦労をわかってくれる人は少ない。開業してからも、華やかさとはほど遠く、誰にも気づかれない地味な日常が待っていた。元野球部だった自分は、もっと目立つ人生を想像していた気もする。
資格はすごいと言われるけれど現実は地味の極み
「司法書士って、難しい試験ですよね」と言われることはたまにある。だけど、その先の「すごいですね」で終わるのだ。その一言がすべてを物語っている。資格を取ったところで、派手なビルにオフィスを構えるわけでもなく、依頼がなければ収入もない。地味な日常、地味な作業、そして地味な服装。人生の大半が「誰にも気づかれず終わる」作業で埋め尽くされる。
スーツも地味顔も地味書類も地味
スーツは量販店で買った無難な紺かグレー。髪型も冒険できないし、顔も目立たない。さらに追い打ちをかけるように、扱うのは法務局への書類の束。依頼者に「これだけで何万円ですか?」と言われるたびに、内心「地味な作業にも価値があるんだ」と言い聞かせる。でも、声に出して言えたことはない。だって、それもまた地味な自分をさらけ出すようで怖いからだ。
開業しても看板を出しても誰にも気づかれない
地方の小さな事務所に看板を掲げても、「ここって美容院だった?」と勘違いされる始末。開業当初は「よし、地域に貢献するぞ」と気合を入れていたが、実際は飛び込み客なんてほぼゼロ。駅前のコンビニの方がよっぽど地域に知られている。結局、紹介と口コミだけが頼りで、看板は自分の存在証明にすらならない。そんな現実が日々、静かに心を削っていく。
事務所経営という名の孤独との戦い
開業したはいいものの、すぐにぶつかるのが「経営ってこんなにしんどいのか」という現実だ。司法書士の仕事が好きなだけでは、食っていけない。ましてや地方での開業となれば、なおさらである。依頼が来るかどうかもわからない中で、事務員を一人雇う決断をするのは相当な覚悟がいった。人件費はのしかかるし、自分の給料は後回し。孤独で、胃が痛くなる日々が続く。
事務員ひとり雇うだけでも胃が痛い
事務員の採用も慎重にした。というか、応募がほとんどなかった。なんとかひとり来てくれて、今は一緒に働いているが、ミスがあれば最終的には自分の責任。とはいえ、怒鳴ったら辞められる。そんなギリギリのバランスの中で、仕事を進めていく。休みを取られた日は「今日、自分ひとりで全部回せるか?」と朝から不安でいっぱいになる。たったひとりを雇うだけでも、生活はガラッと変わるのだ。
給与も出さなきゃいけないし休まれると詰む
月末には必ず振り込まなければならない給料。自分の報酬が出ない月があっても、それだけは何があっても守る。けれど、その負担がどれだけ精神的に重たいか、同業者でないとわからないだろう。「今日、子どもが熱で休みます」と言われるたびに、「そっか、大丈夫?」と笑顔で言いながら、内心はパニックだ。顧客対応、登記作業、郵送手配、全部自分に降ってくる。
愚痴を言う相手がいないから自分の中で煮詰まる
飲みに行って愚痴をこぼせる友人も少なくなった。結婚して家庭を持っている友人とは話が合わなくなってきた。愚痴を吐き出す場所がないと、人間はどんどん心が狭くなる。気づけば、夜中に天井を見ながら「なんで俺、こんなに頑張ってるのに誰も気づかないんだ」とつぶやいていることがある。虚しさは、誰にも見せない分だけ深く積もっていく。
経営者なのに自由はないという不思議
「自営業って自由でいいですよね」とよく言われる。だが、実際には休日も電話が鳴るし、緊急対応は断れない。特に相続の案件などは、土日に連絡が来ることも多い。自由に見えて、実は会社員よりも拘束されているのが司法書士という仕事だ。顧客に合わせて動くのが当たり前で、自分の予定は常に後回し。経営者であるはずなのに、日々に縛られて身動きが取れない。
休日に限って電話が鳴るというあるある
不思議なことに、日曜の昼下がりに限って電話が鳴る。しかも初めての依頼者が「急いでるんですけど今お時間いいですか?」と来るパターン。対応しないと他の事務所に行かれる気がして、結局出る。温泉にでも行こうかと思っていた気持ちは一瞬で消える。「仕事熱心ですね」と言われるが、本音は「ちょっとでいいから、静かに昼寝させてくれ」なのだ。
電話対応にビビる45歳のリアル
正直、電話は苦手だ。聞き間違えたらどうしよう、相手が怒っていたらどうしようと、無駄に緊張する。事務員が出てくれるだけで少し安心するのだが、留守のときは自分で出るしかない。声のトーンを気にして、何度も深呼吸してから受話器を取る。45歳にして、電話一本にこんなに神経を使っている自分が情けない。でも、これが現実だ。
地味でも必要とされる誇りのようなもの
地味だし、目立たないし、華もない。でも、そんな司法書士の仕事にも誇りはある。不動産登記が止まれば、家の売買もできない。相続が片付かなければ、遺族の生活も進まない。誰にも気づかれないけど、社会の裏で確実に必要とされている。地味な仕事だからこそ、そこにある小さな感謝がずっしりと心に残ることがある。それだけで、なんとか続けていけるのかもしれない。