司法書士ってこういう仕事です独身男の本音と日常

司法書士ってこういう仕事です独身男の本音と日常

朝から晩まで電話と書類と裁判所

司法書士の一日は、静かで穏やかなものを想像されがちですが、実際は電話対応と書類処理、そして裁判所対応に追われる騒がしい日々です。特に地方の事務所では人手が足りず、一人事務員と私だけで切り盛りしています。事務所に着くや否や、電話の着信履歴を確認し、留守電を聞き、折り返しの電話をかける。そんなルーチンに追われていると、自分の時間などあってないようなものです。

朝の始まりは着信履歴の確認から

朝9時の始業前から、すでに「折り返しお願いします」とメッセージがいくつも残っていることが多々あります。なかには深夜や早朝にかけてきている人もいて、「この人、私をなんだと思っているのだろう」と苦笑いしながらも、無視するわけにはいかないのがつらいところです。前の日に寝落ちして見逃していた通知を見て、慌てて謝罪の連絡を入れることもあります。朝から神経をすり減らすのが日課になってしまいました。

コーヒー1杯飲む間もなく電話対応

私の朝は、コンビニで買った缶コーヒーを片手に始まります。が、ゆっくり飲む暇もなく、着信音が鳴り響きます。たとえば、登記の相談で「今日中に必要なんです」と言われれば、もう一日そのことで頭がいっぱいです。焦って対応した結果、ミスに繋がることもあります。忙しいときほど、丁寧さが失われていく自分に気づきながら、それでもやるしかない。そんな朝が繰り返されます。

緊急ですって言われると断れない性格

「本当に急ぎなんです」と言われると、ついスケジュールをねじ込んでしまうのが私の悪い癖です。元野球部の性格が出てしまうのか、「頼られたら応えたい」という気持ちが先走ります。ですがその結果、他の業務が後回しになり、夜に帳尻合わせをする羽目になります。自分のキャパを把握しきれていないことに毎回反省しながらも、また次の「緊急です」に心が揺れてしまうのです。

書類の山に埋もれてため息が出る

机の上は常に紙とファイルと付箋だらけ。書類を探して5分、間違ってシュレッダーにかけてしまって10分。こんな非効率な作業に、正直うんざりすることもあります。でも、誰かがやらなきゃ終わらない。そんな責任感だけで動いている日も少なくありません。事務員さんもフル稼働ですが、それでも処理が追いつかない。片付けようとするたびに、どこから手をつけていいのか分からなくなるのです。

登記簿の記載ミスに気づいた時の冷や汗

何度チェックしたつもりでも、見落としは起こります。とくに登記簿の住所表記や地番の数字の一桁ミスで、法務局から呼び出されたときの心臓のバクバク具合といったらありません。お客様からの信頼に傷がつくことは何よりも恐ろしく、「ああ、やってしまった」と机に突っ伏す夜もありました。そういうときに限って、夕飯を買いに行く気力もなく、冷えたカップラーメンで空腹をごまかします。

自分の字が読めないという悲劇

焦って書いたメモや手書き書類が、あとで読めないことが本当に多いんです。まるで暗号のような走り書きを見ながら、「これは…なんて書いたんだっけ?」と頭を抱える。結局、電話で再確認する羽目になり、余計な時間がかかります。字が汚いくせに、手書きに頼ってしまう自分を恨みつつ、それでも今日もボールペンを手に取ってしまうのです。

司法書士は誰にも頼れない仕事なのか

この仕事は一見すると「知的で安定している」などと思われがちですが、実態はまるで孤独な戦場です。間違いは許されず、でも判断を委ねる相手もおらず、ひとり現場で答えを出し続けなければいけません。たまに「気軽に相談できる相手がいたら」と思うこともありますが、そんな贅沢は言えない立場です。

孤独な現場判断にいつも胃がキリキリ

たとえば、裁判所に提出する書類を前にして、どの条文を引くか、どの添付書類を選ぶか。その判断を一人で下す瞬間の重圧は、経験を積んでも薄れることがありません。「この選択が間違っていたらどうしよう」という不安に胃がキリキリと痛みます。先輩司法書士に相談できる環境があればいいのですが、地方ではそういう繋がりもなかなか持ちづらいのが現状です。

責任感だけで踏ん張っている現実

誰かに褒められることもなく、理解されることも少ない。けれど依頼者が「助かりました」と言ってくれる、その一言のためだけに踏ん張っています。誰かの生活の一部を守っている実感が、私にとって唯一のやりがいです。でも正直言えば、心が折れそうなときも多く、なんとか誤魔化しながら日々を送っているのが本音です。

相談できる相手がいないと心が荒む

仕事の愚痴を言える相手がいないというのは、本当に堪えます。事務員さんは優しくてしっかり者ですが、やはり立場上、全部を話すわけにもいかない。夜、一人でテレビを見ながらビールを飲んでいるとき、ふと「誰かに聞いてほしい」と思うことが何度もあります。けれど、誰にも連絡を取らず、そのままソファで寝落ちしてしまうのです。

事務員さんの優しさが唯一の癒し

そんな中で救いなのは、事務員さんの気遣いです。「先生、今日はごはん食べました?」と聞いてくれる一言が心にしみます。彼女の存在がなければ、もっと精神的に追い込まれていたかもしれません。独身でモテない私にとって、こういう人間関係がどれほど大切か、身に染みています。

外から見たら立派でも中身はギリギリ

スーツを着て、名刺を差し出し、堂々とふるまっているように見えるかもしれません。でも、その内側はギリギリの綱渡り。仕事量、責任、孤独感に押し潰されそうになりながら、何とか踏みとどまっています。「司法書士ってかっこいいですね」なんて言われた日には、どこから否定したらいいか悩むほどです。

スーツを着てても中身は疲労困憊

人は見た目が9割なんて言いますが、私の場合はその9割が虚勢です。スーツを着てビシッとしているようで、実は前の晩も眠れず、顔はむくみ、心は擦り減っています。とくに夏場の法務局回りは地獄です。汗だくのスーツ姿に、自分で自分が嫌になる日もあります。

お金より時間が欲しいと思う日々

この仕事は「食っていける職業」だとは思います。でも、お金があっても時間がない。そんなジレンマがずっと付きまとっています。旅行に行きたいと思っても、スケジュール的に無理。人に会いたくても予定が合わない。結局、コンビニ弁当を持って事務所にこもる。そんな日々が続いています。

モテる職業とは程遠い現実

「先生って、女性にモテるでしょ?」と聞かれることがありますが、それは大きな誤解です。出会いの場はほぼゼロ、合コンにも呼ばれない、趣味もない。私の休日は洗濯と掃除で終わります。SNSで同級生が家族と過ごしている投稿を見ると、「何やってるんだろうな、俺」とため息が出ます。

婚活の話をされるたびに心が折れる

親戚の集まりや同窓会では、ほぼ毎回「結婚は?」と聞かれます。悪気がないのは分かっているけれど、そのたびに心に小さなヒビが入ります。婚活サイトに登録してみたこともありますが、「仕事が忙しい」という理由でうまく続かない。結局、今日も一人で夕飯を食べている自分に落ち着くのです。

それでもこの仕事を続ける理由

正直、辞めたいと思ったことは一度や二度じゃありません。でも、それでも続けているのは、自分なりに意味を感じているからです。この仕事には苦しさもありますが、同時に確かなやりがいもあります。誰かの不安を取り除けたとき、自分が誰かの人生の一部を支えられたと感じられたとき、それがすべての報酬になります。

誰かの役に立てたときの安堵感

たとえば、相続で悩んでいた依頼者が「これで安心して眠れます」と言ってくれたとき、心の中にふっと灯りがともるのです。その一言で、これまでの疲れが少しだけ癒されます。「司法書士で良かった」と思える瞬間は、ほんのわずかかもしれないけれど、確かにあるのです。

「ありがとう」って言葉の重み

何百枚の書類を作っても、どんなに裁判所を回っても、「ありがとう」と言われるだけで報われます。これは本音です。報酬より、効率より、その一言の重みが身に沁みます。それがあるから、また明日もがんばれる。そんな日々の繰り返しです。

自分なりの誇りを持てる瞬間がある

誰かに褒められることはなくても、自分だけは自分を認めてやろう。そう思って生きています。完璧じゃなくても、不器用でも、依頼者の人生に真剣に向き合ってきた。それだけは誇れる。そういう積み重ねが、司法書士という仕事の価値だと思っています。

たまにだけど、笑える日もある

すべてが辛いわけじゃありません。事務員さんと他愛ない話をして笑った日。依頼者が「おかげで親と和解できました」と報告してくれた日。そんな瞬間があるから、続けられるんです。人生において、笑える日がたまにでもあるなら、それは悪くない生き方なんじゃないかと、そう思っています。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。