朝は書類より先にエンジンをかける
地方で司法書士をやっていると、何よりもまず「移動」が仕事になる。事務所から登記所まで車で30分、法務局まで1時間。たまに車検や点検で車が使えないと、その日一日が終わる。都会のように電車移動なんて便利な手段はなく、エンジンをかけるのが自分の業務開始の合図。エアコンの効かない軽バンに書類を積んで、今日も1日が始まる。
出勤前に畑の確認それから郵便局
僕の朝はちょっとだけ早い。というのも、母親が細々とやってる畑の様子を見にいくのが習慣だからだ。夏は特に心配で、トマトやナスがカラスにやられてないか、雑草が伸びてないかチェックする。司法書士というより農業支援員みたいな気分だ。その後は郵便局に寄って速達を出す。これが地味に大事。遅れるとまた電話が来るから、気が抜けない。
地方あるあるの朝仕事ルーティン
都会の同業者に話すと笑われるが、地方ではこれが普通だ。役所に行っても「○○さん、今日も大変ですね」と顔を覚えられるほど通ってるし、商工会の集まりにも顔を出さないと地域との関係が冷える。司法書士である前に、町の一員としての振る舞いが求められるのが地方のリアルだ。朝のちょっとしたルーティンが、そんな人間関係を保つための潤滑油になる。
車が壊れたらもうアウト
一度、真夏の昼下がりに車がエンストして法務局に行けなかったことがあった。結局その日は手続きできず、依頼者にも迷惑をかけてしまった。バスも電車も通っていない地域では、車が生命線だ。軽くて燃費のいいワゴンを選んでるけど、もう10万キロを超えている。買い替える資金があったら、まず冷房直したいんだけどね。
スーツより作業着の方が稼働率高め
「司法書士はスーツが基本でしょ?」なんて言われるけど、僕の場合はスーツを着るのは法務局か裁判所に行くときだけ。普段は動きやすさ重視で作業着が基本スタイル。田んぼのあぜ道を歩く日もあれば、古民家の床下を覗く日もある。スーツだと汚れて仕方がないし、何より肩が凝る。元野球部のくせに最近は肩が痛くてね。
登記より草刈りのほうが早いかもしれない
ある時、相続登記の依頼を受けて現地調査に行ったら、土地の境界に雑草がびっしり。依頼者から「見えなくてすみません」と言われて、結局僕が草を刈った。帰ってきて事務員に「草刈りはサービス外です」と言われたけど、なんだかんだでお客さんが喜んでくれたのは嬉しかった。書類を整えるより、草刈りの方が達成感ある時もある。
朝一番の電話は大体トラブル
午前9時。事務所の電話が鳴る。だいたい「ちょっと教えてほしいんですが…」から始まる。無料相談という名の依存が始まる瞬間だ。優しく答えてるうちに30分が過ぎる。「それだけ?」と言いながらも、きっと僕も誰かに頼りたいのかもしれない。でもね、朝の電話は心臓に悪い。おだやかな立ち上がりなんて夢のまた夢だ。
「ちょっと教えてほしいんですけど」から始まる地獄
「○○の土地が父名義のままで…」という相談から、最後は相続関係図の書き方まで全部説明させられる。しかも「また後で連絡しますね」で終わるケースが多い。つまり、依頼にはならない。断ればいいんだろうけど、つい対応してしまう。人の良さって、こういうところで損をする。誰か「断る技術」教えてほしい。
無料相談じゃなくてただの依存
無料相談といっても、聞かれる内容は専門的なことばかり。「それ行政書士の仕事ですよ」と言っても通じない。田舎では「先生」に全部任せたいっていう空気がある。相談者からすれば気軽でも、こっちは責任があるから大変だ。挙句に「ちょっとくらいならタダでしょ?」と言われると、やる気はゼロになる。
行政とのやりとりは気力削りマシーン
役所に行って書類をもらうのも一苦労。「それは別の窓口です」「担当が休みで」など日常茶飯事。書類1枚もらうのに2時間かかることもある。その間にも電話は鳴るし、依頼者からのLINEも来る。待合室で一人、ため息ばかりついている。行政手続きのプロって誰だっけ?と自問する時間になる。
FAXと電話だけで令和を生きている
行政のデジタル化なんて、地方じゃ夢のまた夢。いまだに「申請書はFAXで送ってください」と言われる。PCも古いし、ネットも遅いし、紙の山に囲まれての仕事は精神を削る。令和って本当に来てるのか?とふと思うことがある。でも、紙じゃないと安心できない人が多いのも事実だから、時代についていけない自分も否定できない。
午後からが本番の孤独な闘い
昼休みを取るヒマもなく午後に突入。事務員はパートなので15時には帰る。そこから先は完全にワンオペ。書類を確認して、押印して、スキャンして、また確認。誤字一つで登記は跳ね返されるから、集中力が必要だ。でも、疲れた頭でミスなく進めるのは至難の業。結局、夜までかかる。
相談の後に来るのは書類の山
午前中に3人相談があると、午後はその書類で埋まる。財産目録、委任状、戸籍、住民票…。しかも内容が複雑なことが多く、相続関係だけでも三世代にわたるケースもある。1枚ミスすると、全部やり直し。精神的にきつい作業だが、誰にも頼れないからやるしかない。机の上の書類を見て、ため息をつくのが日課になってしまった。
誰も片付けてくれない現実
机の上に積まれた書類を片付けるのも、全部自分。事務員さんにお願いしたいけど、彼女は既に帰宅済み。残業代も出せないから、無理は言えない。気がつけば電気をつけたまま資料の山に埋もれていて、「これ、いつ終わるんだろう」とつぶやく。片付ける相手がいないというのは、地味にこたえる。
事務員も限界自分も限界
事務員のSさんはとても真面目でよく働いてくれる。でも、彼女も家庭の都合で夕方には帰るし、限界まで働かせるわけにもいかない。僕も自分のペースでやるしかないが、なんとなく孤独を感じてしまう瞬間がある。「一人事務所ってこういうことか」と、改めて痛感する午後の時間帯だ。
「今日はちょっと早く帰っていいですか?」の破壊力
以前、急ぎの登記があった日にSさんから「今日は早く帰ってもいいですか?」と聞かれた。もちろん「いいよ」と答えたけど、その瞬間、心の中で膝から崩れ落ちた気分だった。帰った後、結局ひとりで全部やるしかなくて、気がつけば夜9時。地方の一人司法書士、今日も誰にも頼れず頑張っている。