気づいたときにはもう遅い登記に響く住所ミス
司法書士の仕事で怖いのは、見落としではなく「見えているのに気づかない」ミスです。今回もそれでした。登記手続きの真っ最中、書類一式を提出してあとは完了を待つだけ、という段階で、法務局から補正の連絡。「住所が違います」と。え?なにが?間違えてる?そう思って調べたら…依頼人本人が、自分の現住所を間違えて記載していたんです。しかも、住民票すら旧住所。引っ越し届を出していなかったとのこと。こっちは正しい情報を前提に動いていたので、完全に想定外でした。
書類を見て違和感まさかの本人住所違い
登記の申請直前、なんとなく違和感がありました。依頼人が出してきた免許証の住所と、住民票の住所が食い違っていたんです。でも本人曰く、「あ、これ前のままですね。大丈夫ですよ」と軽い返答。いやいや、大丈夫じゃないって。と思いながらも、信じてそのまま申請へ進めてしまったんです。どこかで「まあ通るだろう」という甘さもありました。
依頼人に確認すると「引っ越してて…忘れてました」
法務局から補正の連絡を受けて、すぐに依頼人に確認の電話をしました。すると開口一番、「あー、引っ越してましたね。あれ?住民票変えてなかったっけ?」と、まるで冷蔵庫に牛乳がなかった程度の感覚。こっちは血の気が引いてるのに…。本人確認の意味すらちゃんと伝わっていなかったのかと思うと、肩がガックリ落ちました。
登記完了目前での補正指示表に震える
補正の指示表がFAXで届いた瞬間、あの紙の重みがズシリときました。もう書類も作成済み、関係者にも報告済み、予定も組んであって…その全部が「やり直し」です。登記は一字一句が命。だからこそ、補正が入るとその修正には膨大な手間がかかる。たかが住所、されど住所。舐めてかかると本当に痛い目にあいます。
ミスの火の粉はすべて司法書士に降りかかる
こういうとき、「間違えたのは本人なんだから、本人がなんとかしてくれ」と思いたいところですが、現実は違います。司法書士が窓口となっている以上、すべての責任と手間はこっちが背負うことになります。依頼人が気軽に言った一言で、こっちは何時間も補正に追われる羽目になるんです。正直、やるせない気持ちでいっぱいになります。
登記官からの問合せに冷や汗が止まらない
登記官からの電話って、なぜあんなに心臓に悪いんでしょうか。「あのですね…ちょっと確認したいことが」と言われた瞬間、頭が真っ白に。電話越しに冷や汗をかきながら、あれこれ説明し、補正対応の段取りを確認する。言葉遣いにも気をつけつつ、内心は「マジか…」と叫んでいる。こんな時ほど、メンタルがすり減ります。
補正申出書の作成と再確認地味に時間を奪う
補正申出書の作成って、ほんと地味だけど時間を食います。しかも一文字でもミスがあれば再提出。しかも今回は本人の住民票も取り直し。それを待って、再提出して、法務局の確認を待って…一体この何の生産性もない時間は何なんだと、机を叩きたくなる衝動にかられます。
なぜこっちが謝らなきゃいけないのかと空を見上げた日
補正が終わって、ようやく登記が通ったあと、依頼人に連絡しました。「すみません、お手数かけました」と一応の謝罪はされましたが、こちらはその何十倍も手数をかけてるわけです。なんとなくやりきれない気持ちで、事務所の窓から空を見上げて、「何やってんだろうな」と独り言。誰にも聞かれないように、ため息ひとつ。
こういうときに限って他の案件もバタつく
トラブルは単独で来ない。決まって重なってくる。補正対応でバタバタしている最中に、別の依頼人から急ぎの相談が入り、法務局にも別件で呼び出され、気づけば昼飯も抜き。椅子に座る暇もなく立ちっぱなしで対応していると、「ああ、もう今日は負けだ」と感じる日もあります。
事務員も手一杯こっちは電話対応で詰み
うちの事務員も一人で頑張ってくれてますが、限界があります。書類の整理、来客対応、郵送、補正資料の準備…全部一緒にくるとパンクします。そんな中、僕は電話対応に追われっぱなし。「何度も同じ説明をしてるな」と思いながらも、やめるわけにもいかず、声もどんどん疲れていく。
「登記遅れてますか」と依頼人の無邪気な一言が刺さる
ようやく対応が一段落したところで、最初の依頼人から電話。「登記、そろそろ終わりましたか?」と、まるで何事もなかったかのような声。うっかり「地獄でした」と言いそうになるのをグッとこらえ、「もう少しですので、少々お待ちください」とだけ返す。自分の忍耐力を褒めてやりたい気分でした。
対策していても防げない依頼人起因のミス
こちらも工夫しています。住所記載ミスを防ぐためのチェックリストや、身分証と住民票の突き合わせなど。しかし、それでも依頼人が嘘や勘違いをしていたら、防げないんです。だからといって、「じゃあ全部こっちで確認します」と言えば、それはそれで手間とコストが爆増。なんとも難しいバランスです。
チェックシートを渡しても記入ミスは消えない
提出前にチェックシートを用意しているんですが、「ちゃんと見てない」「字が読めない」「そもそも違う住所を書いている」というケースが後を絶ちません。特に高齢者やITが苦手な方には、記入そのものがハードルになることもあります。優しく説明しつつ、ミスを見抜く力も求められる。簡単じゃないです。
同姓同名や表札違いによる混乱も多数
都市部ならともかく、地方では表札と実際の住民名が違う家も多く、たまに「お隣さんの住所です」なんてことも。さらにややこしいのが、同姓同名の別人が同じ市内に住んでいるケース。住民票を取りに行ったら別人だった、ということも。まるで間違い探しのような世界に、神経がすり減ります。
心が折れそうになったときの対処法
そんな日々の中で、どうやって心を保っているか。それは、昔の自分との対話かもしれません。元野球部時代、炎天下でのノック地獄、声が枯れるまでの走り込み。あれに比べたらまだマシだ、と。正直、そうでも思わなきゃやってられません。
野球部時代のしごきよりマシと自分に言い聞かせる
あの頃のしごきは理不尽のかたまりでした。でも、その分、根性はついた。今、補正書類で深夜まで残業しているとき、「あのノック100本に比べりゃ楽勝だろ」と自分に言い聞かせます。そうでもしないとやってられない。体育会系の意地が最後の砦です。
愚痴れる人がいるだけで少しは救われる
結局、一番の救いは「話せる人がいるかどうか」。同業の友人にLINEで一言「また補正やらかされた」って送るだけで、気持ちが軽くなる。反応が「うちも昨日あったよ」だったら、もうそれだけで少し前向きになれる。誰かと共有できるだけで、人間はなんとか耐えられるもんです。