クライアントより郵便局の人に頼られる日

クライアントより郵便局の人に頼られる日

クライアントより郵便局の人に頼られる日

朝一番の郵便局から始まる

「シンドウさん、レターパックは青ですか?赤ですか?」
朝の9時、いつものように事務所に出勤した僕を、サトウさんが睨む。片手にレターパック、もう片手には昨日の未発送の書類。
「うーん、速達扱いなら赤だね。でも内容証明には向かないんだよ、たしか……」
サザエさん一家が波平の代わりに書留を出しに行ったら、きっとこうなる。窓口で大混乱。
事務所を出て、郵便局へ向かう道すがら、僕はすでに嫌な予感しかしていなかった。

サトウさんの睨みとレターパック

郵便局に着くと、窓口の局員・山村さんが僕を見るなり小さく手を振る。「あ、シンドウ先生、ちょうどよかった」
いやな予感は的中だ。書留の種類の選定で揉めていたらしく、「クライアントさんがこれでいいって言ってましたけど…先生のご判断で」と、半笑い。
やれやれ、、、なんで司法書士が郵便の種類まで判断しないといけないんだ。

なぜかこちらが説明係

「これはね、配達証明付きじゃないと困るから、この書類には合わないです」
後ろに並んでる人の視線を感じつつ、僕はプロのように話す。いや、プロじゃない。郵便局員より詳しいだけだ。

控え室で交わされる奇妙な一言

「先生、この間の本人限定受取の件、すごく助かりました。うちの新人も知らなかったみたいで」
おいおい、郵便局の中で僕が教育係か。

書類の山と切手の選定

事務所に戻ると、サトウさんがすでに次の発送準備をしていた。
「先生、84円切手でいけます?」
「それ、重さ次第じゃ92円だよ」
「ですよね、念のためです」
まるで探偵助手がボスにトリックを問いかけるような口調。僕はコナンじゃないぞ。

依頼人よりも先に動く郵便局の窓口

「郵便局で“司法書士の先生が来るから聞いてみましょう”って言ってたわよ」
とある依頼人の言葉。あの局、どうやら僕を便利な相談窓口扱いしているらしい。

「司法書士さんなら分かりますよね」問題

いや、わからんこともある。というか、郵便局の制度は毎年ちょっとずつ変わるのだ。

切手サイズで始まる推理劇

この封筒、なぜ角2サイズなのか?なぜ82円ではなく94円切手が?
それはクライアントが勝手に「いける」と思い込んでいたから、という推理が的中。

疑惑の配達証明と消えた通知

「先生、通知届いてないって言われてるんですが」
サトウさんが受話器を手で覆って言う。嫌な予感。もう一つの事件が動き出した。

局員の証言が曖昧すぎる

再度郵便局に確認に行くと、「配達はしてると思うんですが…記録がですね…」
おいおい、それじゃアニメの最終回前編で終わってるのと同じだろう。

サトウさんの記憶力が鍵を握る

「確か、受領印もらったって言ってました」
なるほど、それがあれば証明になる。やはりサトウさんは頼れる。

「その封筒、昨日見た気がします」

局員の一言で決定打。封筒は別の場所に誤配されていた。

やれやれと思ったそのとき

全てが判明した後、局員がこちらを向いて頭を下げた。
「やっぱり先生は頼りになります。正直、うちの新人よりも…」
やれやれ、、、また評価が上がってしまった。喜んでいいのか、複雑だ。

再配達記録と謎の書き込み

配達記録の裏に「先生に確認済み」とある。誰がそんなメモを書いたのか。
もはや郵便局の一員なのかもしれない。

真犯人は誰よりも近くにいた

配達員が「この前と同じお宅だと思って…」と誤配したと告白。
人間の思い込みは、推理ものでも現実でも罪深い。

切手の貼り方でわかった動機

封筒の切手が斜めに貼られていた。プロの仕事ではない。
クライアントが自分で貼ったらしい。やっぱり、素人判断はダメだ。

真相とサトウさんの溜息

「郵便局の人に頼られてるってことは、優秀ってことですよ」
サトウさんはそう言ったが、苦笑い気味だ。
僕は事務所の椅子に沈み込んで、ひとことつぶやいた。
「やれやれ、、、次は配達証明の講義でもするか」

クライアントの誤送信がすべての始まり

発端は住所の書き間違いだった。それがなければ、この騒動もなかった。
でも、こうして誰かのために動いた記録は、確かに残った。

「だから私が全部持って行きますって言ったのに」

サトウさんがぽつりとこぼした。
たしかに、彼女一人の方が効率は良かったのかもしれない。
でも、少し誇らしげな表情を見て、まあ、悪くなかったと思うことにした。

郵便局よりも信頼される司法書士の悲哀

誰よりも郵便制度に詳しく、誰よりも利用して、誰よりも窓口で質問される。
そんな日常に、少しだけ名探偵気取りの誇りを感じた僕だった。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓