「司法書士ってどんな仕事？」と聞かれた朝
ある朝、親戚の子どもに「司法書士ってなにする人？」と聞かれて、正直ちょっと戸惑った。専門的な言葉を使えば使うほど相手の目が虚ろになっていくのがわかる。「登記とかね…」と始めるも、相手にとってはピンとこないらしい。だけど、これが現実。華やかさもなければ、目立ちもしない。そんな職業だ。でも、だからこそ「縁の下の力持ち」としての責任は重い。簡単に説明できないほど、地味で、奥深くて、そしてしんどい仕事だと思う。
想像より地味で、想像以上に神経使う
登記の仕事って、いざやると神経のすり減り方がすごい。ちょっとした記載ミスが大きなトラブルにつながることもあるし、お客様にとっては一生に一度の重要な手続き。事務所で黙々と書類をチェックする時間が圧倒的に多く、華やかな場面はほとんどない。それでも「安心しました」と言ってもらえるときだけは、少し報われる気がする。でも正直、毎日が細かい確認作業の繰り返しで、心が疲れてしまうときもある。
登記のミスは誰のせい？結局すべて自分に返ってくる
昔、あるお客様の登記で誤字を見落としてしまったことがある。法務局から補正の連絡が来たときには、血の気が引いた。その件はなんとか修正できたけれど、頭の中では「もし登記が完了しなかったら」「損害賠償になったら」と最悪のシナリオがぐるぐる。確認の体制は整えていた。でも、どれだけ注意しても「完璧」はない。誰のせいでもなく、自分が責任を負うのが司法書士という仕事なのだ。
「確認したはず」が一番怖い
「確認したつもりだったんです」と言い訳したくなることもある。でも、つもりじゃダメなんだよなあ…。チェックリストを作っていても、忙しいとどこか抜け落ちてしまう。目を皿のようにして書類を見る日々。たとえば、数字の「１」と「７」の見間違いで冷や汗をかいた日もある。思い込みやうっかりは、時にとんでもない事態を招く。それに気づいてからは、確認のための確認をするようになった。二重、三重のチェックは、自分を守る最後の砦だと思ってる。
事務所を開いてからの日々は、孤独との闘い
開業してからというもの、基本的に一人で全部まわす日々。誰にも「お疲れさま」と言われないし、ミスしても慰めてくれる人もいない。仕事の山を前に、ふと「これ、本当に自分にできるのかな」と思ってしまう瞬間がある。忙しさで紛れるけれど、本音を言えば誰かに頼りたい。でも、自分で決めた道。愚痴をこぼしても、やるしかない。そんな孤独感と毎日、静かに戦っている。
朝イチで出社しても、誰にも「おはよう」は言われない
朝7時すぎ、事務所のカギを開ける。静まり返った室内に自分の足音だけが響く。パソコンの電源を入れて、メールをチェックしながら「おはようございます」と小さくつぶやく。誰に向かって言ってるのか、自分でもわからないけれど、声に出すことでちょっとだけ気が引き締まる。でも、やっぱり寂しい。たまに郵便屋さんに会うと、無性に話しかけたくなる自分がいる。
事務員さんがいてくれて本当に助かってる
事務員さんが一人いる。それだけで、だいぶ違う。登記情報の入力や郵送の手配、役所とのやりとり…本当に助けられている。とはいえ、仕事を頼むときには毎回「こんなことお願いしていいのかな」と気を遣ってしまう。こっちが忙しくても、あちらも人間。体調や気分もある。だからこそ、言葉には気をつけてるつもり。でも内心は、もっと頼っても大丈夫かなと葛藤している。
でも「これお願いできますか？」と言うのも気を遣う
小さな事務所ゆえに、業務分担の境界が曖昧になる。例えば「この資料、スキャンしてもらえますか？」と言うだけでも、タイミングを見計らってしまう。向こうが忙しそうなときは結局、自分でやる。まるで人間関係の微調整をしながら、仕事してるような感覚。もっと割り切れたら楽かもしれないけど、それができない性格だから余計に疲れるんだろうなと思う。
ミスをしても泣けない、自分を責める夜
登記が終わった夜、ふと気づいたミス。もうお客様には言えない。自分の中でぐるぐる反省会を開きながら、布団に入っても眠れない。こんなとき、誰かに「大丈夫だよ」と言ってもらいたくなるけど、そんな相手もいない。だから、自分で自分を責めるしかない。自己肯定感なんてものは、いつの間にかどこかへ消えていた。
お客様には「すみません」しか言えない
ミスを伝えるときのあの空気。言い訳なんて通用しないし、誠実に謝るしかない。どれだけ準備しても、思わぬところでほころびは出る。あるとき、提出日を1日勘違いしてしまって、慌てて法務局に駆け込んだことがあった。お客様には「すみません、すぐに対応します」と何度も頭を下げた。でもその夜、家に帰ってから、何とも言えない虚しさに襲われた。結局、自分が許せないんだと思う。
誰かに怒られたいけど、怒ってくれる人がいない
不思議なことに、怒ってくれる人がいないと、逆に辛くなる。怒られたら「直せばいい」と思えるけど、自分で気づいて、自分で反省して…っていうサイクルは、どこまでも深く沈んでいく。昔、上司がいたときは、「何やってるんだ！」って怒られた後のほうが気が楽だった。今は誰にも叱られない。だから、ずっと心の中で自分を責めてばかりだ。
営業？集客？そもそもそんな時間がどこにある
開業したばかりの頃、「営業が大事だよ」と先輩に言われた。でも、正直言ってそんな余裕はない。目の前の仕事で手一杯。日々の業務をこなすだけで、夜にはバッタリ倒れこむような日々。Webマーケティング？SNS？やれたらいいけど、その前に、ちゃんと寝たいんだよ…。
ホームページ更新すら手が回らない
事務所のホームページ、正直言って全然更新できていない。最初は「ブログ書こう」と意気込んでたけど、1年で3記事が限界だった。書きたい気持ちはある。でも、まとまった時間が取れない。夜中に画面を開いても、頭がぼんやりして文章にならない。「ちゃんとやってる感」が欲しくて始めたけど、むしろ「できてない感」が増してしまって、開くのも怖くなった。
「SNSやってますか？」と聞かれて苦笑い
最近はお客様から「インスタとかやってますか？」と聞かれることが増えた。たぶん事務所の雰囲気を見たいんだと思う。でも、こちらは紙の書類と格闘してる毎日。インスタの映える投稿なんて1枚も撮れてない。「いえ、やってないんです」と答えるたびに、なんとなく時代に置いていかれてる気がして、心がざわつく。
同業の集まりが少し苦手な理由
月に一度ある支部の会合。参加はしているけれど、どこか居心地の悪さを感じている。みんな「順調ですよ」と笑顔だけど、本当のところはどうなんだろう。僕は「なんとかやってます」としか言えない。それでも、同じように悩んでる人がいると知れるだけで、少しだけ救われる。
「うまくいってますか？」にどう答えればいいのか
会合で交わす何気ない会話。「最近どうですか？」「うまくいってますか？」そんな質問に、いつも困ってしまう。うまくいってる…のか？自分ではよくわからない。仕事はあるけど、心はすり減ってる。そんなこと、軽く言える空気じゃない。でも、笑ってごまかすのも疲れてしまって、行きたくないなと思うこともある。
でも、悩んでるのは自分だけじゃないと知れる場所
ある日、懇親会の帰りにふと同業の方がこぼした一言。「最近、本当に疲れてるんだよね」。その瞬間、「あ、自分だけじゃないんだ」と思えた。会合では明るく振る舞ってる人も、裏では同じように悩みながら働いてる。それがわかっただけで、少しだけ心が軽くなった。つながりって、やっぱり大事だと思う。
