何も期待しないのがラク

何も期待しないのがラク

期待しないことで救われた日常

期待しないという生き方を選んだのは、何か大きな悟りがあったからではありません。ただ、もう疲れ果ててしまったんです。毎日一人で事務所を切り盛りしながら、事務員さんにも気を遣い、依頼者には丁寧に対応し、誰かがわかってくれると信じていた頃の自分が、いまは少し滑稽に思えるほどです。誰にも期待しなければ、裏切られても落ち込まずに済む。その分、少しだけ自分を守れる気がしています。

「きっと良くなる」はもう信じないことにした

司法書士として開業した当初は、明るい未来を描いていました。「誠実に仕事をすれば、きっと良い依頼が舞い込んでくるはずだ」なんて。でも実際は、そんな都合のいい話ばかりじゃありませんでした。書類を丁寧に作成しても、感謝されるどころか、あら探しのような指摘をされることも。うまくいかないのは自分の努力が足りないせいだと、どこかで信じていた自分に、もう少し優しくしてやればよかったと思います。

仕事に希望を持った瞬間、裏切られる確率は高い

「今度の案件はうまくいくかも」そう思った瞬間に限って、予期せぬトラブルが起きるのが常です。登記完了後に「思っていたのと違う」と言われたり、急に依頼者から連絡が取れなくなったり。こちらとしては精一杯やっているのに、どこか虚しくなる瞬間があります。希望を持たないことで、少なくともその落差で傷つくことは減りました。

依頼人の感謝は一瞬、クレームは永遠

たまに「ありがとう」と言ってもらえることはあります。でも、その一言はすぐに流れていきます。一方で、ちょっとした誤解や認識のズレから生まれるクレームは、数年経っても記憶に残るほど深く刺さります。プロとしての責任はあります。でも、それにしても割に合わないなと思う日も、正直あります。

事務員さんにも、過剰な期待は禁物

一人雇っている事務員さん。とても頑張ってくれてはいるけれど、こちらが勝手に期待しすぎるとしんどくなります。「これくらいやってくれて当然だろう」という気持ちが出てきたら要注意。自分の器が試される瞬間でもあります。

やってくれると思ったこちらが悪い?

何度も指示したことを忘れられたとき、つい「またか…」とため息が漏れます。でも、そこで怒るのは筋違いだと自分に言い聞かせます。結局、「完璧にやってくれる」という前提で動いていたこちらが悪いんだなと。期待しないようにすれば、イライラも少しは減ります。

「聞いてませんでした」で全部リセットされる恐怖

本当に言ったかどうかなんて、証明しようもありません。「聞いてませんでした」と言われた瞬間、それまでの準備も段取りも水の泡です。そのときの脱力感といったら…。でも、そういうもんだと割り切るようにしたら、少しだけラクになりました。

人間関係の期待はコストが高すぎる

同業者との付き合い、地元の付き合い、近所づきあい。期待しすぎると、見返りがなかったときのダメージが大きい。昔はもっと人とのつながりを大事にしていましたが、今は一定の距離を保つことのほうが心の安定には大事だと感じています。

昔は仲間がいた。でも今は独りがラク

開業当初は、同業の先輩たちとよく飲みに行ったりしていました。「この仕事、面白いよな」なんて語り合う夜もありました。でもいつのまにか、そういう関係も自然とフェードアウト。いまは、一人で過ごす夜のほうが気楽です。誰にも期待せず、誰からも期待されない状態が、意外と心地よかったりします。

期待しなければ、裏切られてもノーダメージ

「この人はきっとわかってくれる」と思って関係を築こうとしても、ある日突然背を向けられることがあります。そんな経験を何度もしてきて、ようやく学んだこと。それは、人に期待しないということ。それが、自分を守る最善策だということでした。

人に期待しないと、意外と優しくなれる皮肉

不思議なもので、期待しないと腹も立ちにくくなります。「まあ、そんなもんか」と思えるだけで、気持ちに余裕が出てくるんですね。逆に、ちょっとしたことでも「おお、ありがとう」と思えるようになる。期待しないって、相手の行動に素直に感謝できる余白をつくってくれるのかもしれません。

それでも仕事は回るし、今日は今日で終わる

期待をやめても、毎日は過ぎていきます。書類は山積みだし、予定は詰まってるし、胃は痛いし。でも、不思議とやれてしまう。人に期待しない分、自分のペースで淡々と進められるという利点もあります。今日をなんとか終えられれば、それでいい。そう思えた日は、少しだけ生きやすい気がします。

ルーティンに命を救われている気がする

朝起きて、コーヒーを淹れて、事務所に出て、決まったルーティンをこなす。そんな何でもない日常が、思った以上に自分を支えてくれていることに気づきます。誰かに期待せず、ただ目の前のタスクをこなす。その単調さに、救われている部分があるのかもしれません。

何も期待しないと、今に集中できる

未来のことを考えすぎると、不安ばかりが増してきます。でも、何も期待しないと、「今やるべきこと」にだけ集中できるようになります。将来への不安を捨てたわけじゃありません。ただ、「今この瞬間を処理する」ことでしか前には進めないと悟っただけです。

未来が見えないなら、足元だけ見ればいい

「このままでいいのか」と自問する夜もあります。でも、未来が見えないなら、今の足元を見て一歩ずつ進むしかない。無理に期待して迷うより、今日のタスクを静かに片付ける。それができたら、十分じゃないかと思うんです。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。