ふと気づく「対象外」のサイン
日々、仕事に追われる生活の中で、恋愛なんてもう縁がないと思っていた。でも、たまに誰かと話すと「ああ、俺って恋愛対象にはなってないな」と妙に確信を持ってしまう瞬間がある。それは、期待していなかっただけに、逆に胸に刺さるものだ。特に、こちらがちょっとだけ心を開いたときに、その温度差を痛感すると、自分の存在価値みたいなものまで疑い始めてしまう。そういう小さなサインの積み重ねが、恋愛というフィールドから自分を遠ざけているような気がしてならない。
会話の距離感に潜む違和感
雑談の中にふと感じる“壁”のようなもの。話している内容は穏やかなのに、どこか線を引かれている感覚がある。「ああ、この人にとって自分はただの知り合い、それも浅い関係なんだな」と実感する場面がよくある。こちらは少し心を開こうとしただけなのに、それに応じる反応はなく、むしろそっと扉を閉められるような印象を受ける。職業柄、信用されやすい一方で、“人としての魅力”とはまた別の話なのだと、痛感することも少なくない。
敬語の壁がそのまま心の距離
たとえば、何度か顔を合わせている女性がいても、ずっと丁寧な敬語のまま。しかも「いつもありがとうございます」と形式的な言葉が続くと、それ以上の関係になる可能性はゼロに近いと悟ってしまう。こちらからラフな言い方をしてみても、変わらず他人行儀なまま。もちろん失礼にならないように、礼儀を重んじるのは大切だけれど、その奥にある“打ち解ける気配”が感じられないと、やっぱり距離は詰まらない。単なる仕事相手としての枠に閉じ込められているような気分になる。
雑談がない関係性の寂しさ
ちょっとした雑談があるかないか、それだけで人との関係性は大きく変わる。雑談って、相手への関心や親しみの証でもある。けれど、自分にはそれがないことが多い。「最近どうですか?」の一言すらないと、必要なことだけ伝えるロボットのような存在になってしまったように思える。実際、仕事以外の話題が出た試しがない相手ばかりで、それが積み重なると、「やっぱり俺って人間としての魅力が薄いのかも」と自己否定に繋がっていく。
「〇〇さんは良い人だけど…」の破壊力
誰かの紹介話が持ち上がっても、「稲垣さんはいい人だけど、そういう対象じゃないよね」と笑いながら言われたときの虚しさ。言葉にしてくれるだけまだマシかもしれないが、“でも”の後に続く否定が、心にズシンと響く。いい人という言葉が、完全に恋愛対象から外れたことを示すラベルに聞こえてしまう。それが本心でないとわかっていても、一度貼られたラベルは簡単には剥がれない。それが積み重なると、自分から踏み出す勇気もどんどん萎んでいく。
誰かの恋バナの“安全な聞き役”という役割
女性の同僚や知人から恋愛相談をされることは意外と多い。頼りにされていると感じる一方で、ふと「俺は絶対にその対象にはならないってことなんだな」と気づいてしまう。この“安全圏の聞き役”というポジションは、親しみやすいけど、決して踏み込まれない場所。相手にとっては楽な存在だが、こちらにとっては少しばかり切ない立場だ。誰かの気持ちを支えるのも悪くないが、時には“支えられたい”と思ってしまうのも本音である。
期待されるのは「相談役」、ではなぜか
司法書士という職業柄、人の話を聞いて判断することには慣れている。だからか、自然と相談される側に回ってしまう。でも、それは単に“話を聞いてくれる都合の良い人”というだけかもしれない。こちらが思いを寄せても、「そういう人じゃない」と一線を引かれて終わる。結局、自分は“聞く側”としての機能でしかないと感じる瞬間が増えると、自分自身の存在が曖昧なものに思えてくる。
感情を抑える癖が逆効果になっていく
仕事上、感情をあまり表に出さない癖がついている。トラブル対応では冷静さが求められるから、それはある意味強みでもある。でも、その“冷静さ”がプライベートでも続くと、ただの無感情な人に見えてしまう。実際、ある人に「何考えてるのかわからない」と言われたことがある。感情を出さないことで、人との距離が縮まらなくなってしまっているのかもしれない。自分の中では大切な想いも、伝わらなければ存在しないのと同じだ。
司法書士という肩書の限界
「司法書士」という肩書は、社会的にはそれなりの信用がある。でも、それが恋愛に直結するかというと、まったく別の話だ。誠実で堅実な印象は与えられても、そこに“ときめき”や“親しみやすさ”があるかというと、正直疑問だ。むしろ“堅そう”“話しかけにくそう”といった印象を持たれてしまうことのほうが多い。だからこそ、肩書だけでは何も変えられないという現実が、余計に心を苦しめる。
誠実さが武器にならない現実
ずっと誠実に生きてきたつもりだ。それなりに責任感もあるし、約束は守る。それが恋愛の場面でアピールになると思っていたけれど、実際には“面白くない人”のレッテルが貼られて終わってしまう。真面目でいることが、自分を守る術でもある一方で、人との距離をつくる原因にもなっているのかもしれない。誠実さは武器になるどころか、時に“無個性”という印象になってしまう現実に、少し傷ついている。
信頼はされるが、ドキドキはされない
信頼と恋愛感情は別物だということを、痛感する出来事があった。ある女性から「稲垣さんにお願いすれば安心」と言われたことがあったが、その直後に彼女は別の男性と付き合い始めた。結局、信頼されることと“好かれること”には大きな溝がある。恋愛には、理屈じゃないときめきが必要で、自分はそこに届いていないのだ。真面目に、誠実に、だけではダメなんだと、心の奥でつぶやく自分がいる。