今日も法務局に行けなかった話 〜“そのうち”が積もる日々〜

今日も法務局に行けなかった話 〜“そのうち”が積もる日々〜

ああ、またタイミングを逃した。

「今日は行こう」と朝の時点では決意していたんです。なのに、ふと気がつくと時計の針はもう午後3時過ぎ。法務局は4時まで。まだ書類がカバンにすら入っていない。言い訳を探すまでもなく、ただ自分に呆れてしまう。独立して何年経っても、こういう日がたまに、いや、結構な頻度であるのが現実です。「なんで今日も行けなかったんだろう」そんな自問を繰り返しながら、机に向かって書類を眺めていると、焦りよりも自己嫌悪が先にくる。きっと、司法書士あるあるなんじゃないかと思いたい。

行こうと思ってたんですよ、本当に。

朝、コーヒーを飲みながら「今日は法務局に行こう」と手帳に書いたんです。カレンダーにも赤丸までつけた。それくらい気合を入れていたのに、現実は違いました。午前中、急ぎの電話対応に追われ、終わった頃には来客が。「今から出ても、間に合うには間に合うけど…」と頭で計算したあと、ため息ひとつで結局そのまま。目の前のことを処理しているうちに、重要だけど緊急じゃないタスクは後回しにされていく。よくある話です。

午前中に済ませるはずが、電話一本で狂う予定

まるで綿密に計算されたように、出かける直前に電話が鳴るんですよね。それも一件じゃ済まない。登記の相談、債務整理の問い合わせ、時には「知り合いが相続で困ってるんですけど」みたいな雑談混じりの長電話。自分で選んだ仕事だから仕方ないと思いながらも、「今じゃなくても…」という感情はこっそり沸いてくる。それを押し殺して応対しているうちに、出発予定時間をあっさり過ぎてしまうのが日常です。

「今日中にやればいいか」が積もる不安

「今日中に出せばいい」「まだ間に合う」。そうやって自分をなだめて、先延ばしを正当化してしまう癖があります。でも積もるんです。1日、2日…それが1週間になると、依頼者の顔が浮かんできてしまう。あの人、急いでるって言ってたなとか、「早めに出しておきたいんです」と言われてたなとか。書類を手に持つたびに、罪悪感と責任感がどっと押し寄せてきて、胃のあたりが重たくなる。司法書士って、ほんと逃げ場がない。

期限があるくせに、気軽に後回しにできてしまう現実

税務や裁判所の手続きと違って、登記って意外と「罰則がない」ケースもあるんです。だからこそ、つい後回しにできてしまう。でもその“余裕”が落とし穴。自分の中で「まだいいか」の基準がどんどん緩くなって、結果的に首を絞めてる。依頼者には関係ない話です。期日を守るのが当たり前。それを知っていても、身体と心がついてこない日もある。そんな日は、ただの自分への敗北感で終わる。

申請書はできてる。でも封筒に入れていない

紙の申請書はもう印刷済み、押印ももらった。でもなぜか封筒に入れて、切手を貼るという最終工程ができない。あと数分で済む作業が、なぜかできないまま机の上に放置されてしまう。そのまま次の日になり、次の週になる。自分がズボラなのか、疲れているのか、よくわからないけど「なぜ今日やらなかった?」という後悔だけははっきり残る。こういう小さな遅れが信用に直結するからこそ、なおさら苦しい。

法務局って、定時で閉まるんですよ(当然)

午後4時って、一般的には早い閉庁時間です。でも、それが当たり前。文句を言う先もないし、ギリギリで駆け込むのも迷惑。だから「早めに出なきゃ」と思うんだけど、日中の案件に追われるとつい優先度が下がる。気がつけば、今日は月曜、明日は火曜、あっという間に週末。こうして「結局、まだ出せてない書類」が心の中で膨らんでいく。登記を終わらせるはずが、自分の精神を圧迫してる。

誰のための登記か、自分のためか。

仕事って誰のためにやってるんだろう。依頼者のため、事務所のため、社会のため。そう答えるのが正しいのかもしれない。でも、疲れてくると、そんなきれいごとも霞んでくる。特に登記は「ただの手続き」と思われがちだから、やりがいを感じにくい。誰かの役に立ってる実感が持てないと、やる気が削がれてしまう瞬間もある。そんなとき、自分が何のために動いているのか見失いそうになる。

依頼者のために急がないといけないのはわかってる

相手は不動産を売ったり買ったり、相続したりするタイミングで動いている。こちらの都合で登記が遅れれば、税金が余分にかかったり、引渡しが遅れたり、損害が出ることもある。それはよくわかっている。だからこそ「今日中に行こう」と思う。でも現実は、書類が揃っていなかったり、本人確認書類が届いていなかったりと、いろんな要素で予定が狂う。全部こちらの責任に見えるのも辛いところ。

でも、日々の雑務と“緊急”の板挟み

「急ぎじゃないけど重要」な登記と、「今日中に返事しないとまずい」電話や書類対応。どちらを取るかといえば、やはり目の前の緊急案件に手をつけてしまう。でもそれが終わった頃には、心も体も疲れ切っていて、登記の準備まで気力が持たない。積み上がるToDoリストに押しつぶされそうになりながら、「今日はもう無理」と諦めてしまう自分がいる。そんな日が続くと、なんだかもう情けなくなる。

正直、自分の登記じゃないから…という本音

これが自分の登記だったら、真っ先に終わらせてると思うんです。でも他人のこととなると、どうしても「そこまで急がなくても」という気持ちが出てくる。もちろんプロとしては失格かもしれない。でも、感情を完全に無視して動けるほど、人間はロボットじゃない。そうやって少しずつ気持ちに隙ができて、先延ばしになり、結果として大きな遅れになってしまう。自分にがっかりしながら、それでもまた明日へ持ち越す。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。