恋愛は不得意でも、スケジュール調整はプロ並みになった

恋愛は不得意でも、スケジュール調整はプロ並みになった

恋愛は不得意でも、スケジュール調整はプロ並みになった

恋愛の代わりに予定表が埋まっていく日々

この歳になると、週末の予定がデートではなく、登記や相談のアポイントで埋まっていく。若いころは「土日は彼女と過ごすもの」と思っていたけど、今はもうスーツのまま、法務局へ向かう時間が普通になった。気づけばカレンダーはびっしり、でも心はがらんどう。そういう矛盾と向き合うのが、司法書士としての日常だ。

「今週空いてる?」なんて、もう誰にも聞かれない

昔はLINEの通知が鳴るたびにドキッとした。誰かに誘われてるかもしれない、そんな期待があった。でも今は、通知の多くが依頼者からの補正連絡か、金融機関の進捗確認。誰かに「空いてる?」と聞かれることも、自分から聞くこともなくなった。「いつでも空いてるよ」と言いたい気持ちはある。でもそれを伝える相手がいない。

事務員と交わすのは業務連絡だけ

唯一会話を交わすのは事務員さん。でも話すのは「押印ありましたか?」「今日は何件あります?」という業務的なものばかり。彼女の優しい気遣いには救われるけど、それ以上の関係を望むわけでもなく、ただ毎日をこなしていくだけ。職場は静かで穏やか。でもたまに、その静けさが身に沁みる。

カレンダーが自分の恋人みたいになってきた

スケジュール帳を開けば、そこにはぎっしりと自分の行動が記されている。食事の時間、郵便の投函、銀行の立ち寄り。すべてが秒単位で組まれている。自分のことを一番よく知っているのは、このカレンダーかもしれないと思うようになった。誰かと過ごすより、自分の管理がうまくいっている方が安心できる。それって、寂しいことなのかもしれないけど。

誰かと過ごすより、予定を管理する安心感

恋愛は予測できない。でも予定管理は違う。予定通りに物事が進めば満足できるし、コントロールできる。感情の波に翻弄されるくらいなら、タスクが時間通りに完了する方が何倍もいい。そう思うようになったのは、失恋に慣れてしまったせいか、それとも年齢のせいか。ときどき、答えを探すのも面倒になる。

スケジュール通りに進むと「愛されてる」と思ってしまう

不思議なことに、予定通りに仕事が終わると、なぜか満たされた気持ちになる。うまく行かない恋愛に振り回されていた頃にはなかった安心感。通知が鳴り、次の仕事が表示される。それだけで「今日もちゃんと役割を果たせてる」と感じてしまう。人に求められることが減る中で、仕事にだけは必要とされているという実感が、かろうじて自分を支えている。

仕事優先、それは逃げ?それとも選択?

「今は仕事が忙しいから恋愛はちょっと…」そんなふうに答える自分に、正直うんざりしている。逃げているのか、本当にそう思っているのか、自分でも分からなくなることがある。恋をしない理由を「忙しさ」で隠している気がして、夜になると自己嫌悪に陥る。忙しさは、自分を守る言い訳にもなるのだ。

「忙しいから仕方ない」という自分への言い訳

依頼が重なれば「恋愛どころじゃない」と思える。けれど、ほんの少しの空白時間にスマホを見て誰からのメッセージもないことに、胸が締めつけられる。「仕方ないよな、仕事があるんだもん」と自分に言い聞かせるけど、それが本音じゃないことくらい、自分が一番よく分かってる。

恋をする余裕がないのか、ただ怖いだけか

過去の失敗が脳裏をよぎる。「またうまくいかなかったらどうしよう」と考えると、自然とブレーキを踏んでしまう。恋愛に踏み出す勇気より、仕事に逃げる方が楽だ。結果が出るし、誰かに評価されるし、お金にもなる。だけど、心はどうだろう。恋愛を怖がって避け続けてきた自分が、少し哀しくもある。

時間管理が上手になっても、心の空白は埋まらない

どんなにタスクをこなしても、どんなに予定がうまく回っても、心が満たされるわけじゃない。夜になると、音のない部屋に自分の呼吸音だけが響く。充実感とは、少し違う感覚。たしかに仕事は順調。だけど、それだけでいいのだろうかと自問する夜もある。

何もない土曜日が、実はいちばん苦手

平日は予定があるから寂しさを感じにくい。でも、何の予定もない土曜日の朝、カーテンを開けた瞬間に襲ってくる「ひとり」の実感が怖い。誰にも必要とされない日、誰からも連絡が来ない日。あまりに静かで、ついスマホを手に取ってしまう。でもそこにも通知はない。そんな土曜日を、何度も経験してきた。

スケジュールのスキマに心の余白を

予定を詰めることで、不安を消してきた。だけど最近、少しだけ余白を入れてみようと思うようになった。それは勇気がいることだった。なぜなら、その時間に何もしない自分を許す必要があるから。何者にもなれていない自分、誰にも求められていない自分と、静かに向き合う時間。それが、本当の意味での「成長」なのかもしれない。

「恋愛」ではなくても、誰かとの時間を入れてみる

恋愛が難しくても、誰かと食事に行ったり、ただ一緒に過ごしたりする時間は大事だと気づいた。相手が異性である必要もない。共感し合える誰か、話を聞いてくれる誰か。そういう存在を、自分から遠ざけてきた。だからこそ今、少しずつでも取り戻していきたい。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。