夢見る暇もなく登記を考えてる日が続いてる

夢見る暇もなく登記を考えてる日が続いてる

夢見る暇もなく登記を考えてる日が続いてる

人生設計って何だったっけと我に返る夜

昔は「50歳までには家を建てて、犬でも飼って」とか、ぼんやりとでも将来のイメージを描いていた気がします。ところが今は、毎日の登記スケジュールに追われて、自分の人生設計なんて話はどこかへ行ってしまいました。机の上にあるのは家計簿じゃなくて登記識別情報通知。夢とか理想とか、語っている時間があったら不動産番号の確認をしろって話です。夜中ふとパソコンの明かりだけが灯る事務所で我に返ると、「こんなはずじゃなかった」と口にしている自分がいます。

住宅ローンの相談を受けながら自分の住まいは賃貸

お客様から「このローンでこの物件、登記的に問題ないですかね?」と相談されるたびに、心の中で「僕は家すら持ってないんですよ」とつぶやいています。彼らは夫婦で来所し、新居の図面を見ながらワクワクしています。一方こちらは、築40年の木造アパートで、天井の染みと仲良く暮らしています。プロとして冷静に応じますが、ふとした瞬間に湧き上がるのは、羨ましさと、自分が歩んできた道への疑問です。

事務所はあるのに帰る家は狭いアパート

一丁前に事務所を構えてはいるものの、帰る場所はたった6畳。仕事用のプリンターよりも、自分の部屋の冷蔵庫の方が古いんじゃないかと思うほど。登記に関する知識はそこそこあるのに、自分の生活には全然活かせてない。事務所で過ごす時間の方が長くなりすぎて、家が仮眠所のように感じる今日この頃です。お客さんの「おかげで夢が叶いました」という言葉が、逆に胸に刺さるんです。

登記簿を読みながら自分の未来が読めなくなる

登記事項証明書を見るのは日常ですが、自分の将来の設計図なんてもう何年も見ていません。地目も構造も明確な書類ばかり扱っているのに、自分の生活は曖昧なまま。まるで人生の登記簿があったら「用途未定」とでも書かれていそうです。ふとした瞬間、登記に没頭しながらも「俺の未来って、どこへ向かってるんだろう」とぼんやり思う夜があるんです。

登記計画を優先して気づけば誕生日も過ぎていた

今年の誕生日、完全に忘れていました。というか、気づいたときには3日も過ぎていたんです。「あれ?今年いくつになったんだっけ?」とスマホのカレンダーで確認する始末。それくらい、毎日の登記案件に追われて余裕がない。今月中に完了させる案件のスケジュールばかり考えていて、自分の人生のマイルストーンはとうに置き去りです。

仕事の〆切は守れても自分の節目は忘れがち

登記申請の期限、郵送のタイミング、補正のリスク管理――そういったことには異常なまでに神経を使っているのに、自分の人生のイベントは放置状態です。世間の人がバースデーケーキを食べている頃、自分はFAXの前で「間に合った…」とホッとしている。節目が記念日じゃなくて「登記完了日」になっている感覚。これが日常になってしまっているのが悲しいような、麻痺しているような。

誰かに祝われる予定もなく

昔は誰かが「おめでとう」と言ってくれたこともあったんですけどね。今はLINEも鳴らないし、SNSすら開かない日もある。誰かに誕生日を覚えてもらえるほどの存在じゃなくなったというか、自分からも話題にしなくなったというか。事務員さんが「そういえば誕生日でしたよね」と言ってくれる年もあるけど、気を使わせてしまって申し訳ない気持ちの方が勝ってしまいます。

LINEの通知はクライアントばかり

通知音が鳴っても、それはだいたいクライアントか取引先からのメッセージ。最近では「先生、お疲れ様です!」とLINEで来る依頼も増えたけれど、嬉しいというよりは、仕事が増えたなと感じるだけ。プライベートの通知はほとんどなく、たまに来るのは迷惑広告や何かの自動送信。そんな状態が続くと、自分って仕事以外に存在意義あるんだろうかって、ちょっと考え込んでしまいます。

事務員一人の重みを噛みしめる毎日

事務員さんがいるだけでも本当にありがたい。でも、その一人が休んだ日は地獄です。電話応対、郵送、顧客対応、補正確認……すべて自分で回す日々は、まるで一人野球のよう。キャッチャーもピッチャーも自分。時には観客(クライアント)もいる。うまく回せる日はいいけれど、どこか一つでもズレると全てが崩れます。人の存在の大きさを、毎回実感しています。

不在時の恐怖と何かあったらどうしよう

事務員さんが病欠の朝なんて、胃がキリキリするんです。急ぎの書類の発送、来客の対応、電話のラッシュ――全部が自分にのしかかってくる。しかも、何か忘れてたらどうしようっていう不安が常に付きまといます。「自分だけでも何とかなる」と思って独立したけれど、現実はそんなに甘くない。誰か一人いないだけで、こんなにもしんどいなんて思ってもいませんでした。

信頼しているけど結局自分で確認してしまう

事務員さんは本当に信頼できる人です。それでも、どうしても最後の確認は自分でやってしまう。性格もあるんでしょうけど、責任がある以上、気を抜けない。だからつい、「もう一回チェックしよう」とか「明日電話してダブルチェックしてもらおう」とか。自分で自分を追い込んでる気もしますが、これが司法書士という職業の業なのかもしれません。

バックオフィスの空白を埋める自分のつぶやき

ふと気づくと、事務所で一人ごとが増えてるんです。「あれ、これは昨日出したか?」とか、「ああまたこっちの法務局だけ形式違うのか…」とか。無意識に声に出して確認してる。それだけ誰とも話さない時間が長いということなのかもしれません。たまに来客中に独り言が出そうになって、あわてて飲み込むこともあります。なんだか、じわじわと自分の孤独がにじみ出てきてる感じがします。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。