登記より恋愛の手続きが知りたい

登記より恋愛の手続きが知りたい

登記より恋愛の手続きが知りたい

登記の知識はあっても恋愛の手続きには不慣れです

司法書士という仕事柄、複雑な登記手続きをすらすらとこなすスキルは身につきました。所有権移転も、抵当権設定も、何なら信託の登記だってお任せあれ。けれども、一つだけ、今もまったく分からない「手続き」があります。それが恋愛です。

どう始めたらいいのか、どのタイミングで気持ちを伝えるのか、そもそもこの年齢になってから、誰に、何を、どんな顔で話しかけたらいいのか……さっぱりわからない。仕事なら六法片手に答えを探せるのに、恋の六法は見つからないままです。

登記簿の読み方は分かるけど女性の気持ちは読めません

登記簿謄本を開けば、物件の来歴がはっきりと見えてきます。所有者の変遷、抵当権の設定日、債権額、すべて明確。けれども、女性の表情というものは…あれはもうまったく違う生き物ですね。

「いいですね」と言われても、それが社交辞令なのか本音なのか、未だに判別できません。事務員のAさんが時折くれる差し入れのコーヒーにしても、「気遣い」なのか、「義理」なのか、「同情」なのか…。恋愛という分野は、情報開示が極端に少なく、しかも主観的すぎて困ります。

専門用語を並べても誰もときめかない

ある日、合コンのような席に無理やり参加したことがありました。自己紹介の時間、真面目に「司法書士をしています。不動産登記、商業登記、相続手続きなどを扱っています」と話したところ、見事にその場が凍りました。

相手の方が「え…登記って何ですか?」と聞いてきたので、「簡単に言えば、権利の公示です」と答えたら、さらに沈黙。こっちは全力で説明してるのに、恋の場では専門性よりもユーモアやノリの方が求められるようです。登記官的な言葉は、恋愛の場では完全に無力です。

あのとき告白の一つでも登記しておけば

大学時代、実は一度だけ本気で好きになった女性がいました。彼女が卒業する直前、食堂で話すチャンスがあったのに、何も言えずじまいでした。いっそあのとき、「この気持ち、登記しておいてください」と言っておけば、何か変わっていたのでしょうか。

たとえその登記が却下されたとしても、登記官のように明確な「不受理」の印を押してもらえたなら、あんなに引きずることもなかったかもしれません。恋愛には公的手続きがないからこそ、未練が長生きするのでしょう。

仕事に追われる日々が恋を遠ざける

毎日、朝から晩まで、ひたすら書類と向き合う生活。登記申請、期日管理、顧客対応。特に地方では人手不足もあり、どうしても一人あたりの負担が大きくなります。恋愛なんて後回しになるのも当然の流れなのです。

朝から晩まで書類とにらめっこ

朝イチで登記申請システムを立ち上げ、午後はお客様との打ち合わせ、夕方はFAXや電話対応に追われ、気づけば夜。事務員さんも帰って一人になり、無言でPCと向き合う時間が延々と続きます。

気がつけば、1日で口にした言葉の半分以上が「登記完了予定日」や「権利証はありますか?」ばかり。そりゃ恋愛の言葉なんて出てくるはずもありません。

LINEの通知が来るのは業者からばかり

スマホに届く通知の大半は、宅建業者さんか、銀行担当者からの業務連絡。「お世話になります。登記完了の報告です」なんて文面に、ふと切なくなることもあります。

LINEのトーク欄を遡っても、プライベートな会話は数ヶ月前の従兄弟からのスタンプのみ。恋愛どころか、日常会話のリハビリから始めないといけない状態です。

気づけば休日に話す相手は銀行の窓口だけ

日曜日、ようやく半日休みが取れて出かけた先が銀行。登記費用の振込や通帳記帳。窓口の女性が笑顔で対応してくれるのが、妙に心に染みます。でも、あれは当然「業務」です。わかっているけど、ほんの少しだけ期待してしまう自分が哀しい。

「今日はお休みなんですね」と言われて、「はい、久しぶりの…」と答えたものの、そこから話が広がることはなく、通帳だけが静かに戻ってきました。

恋愛相談を受けるより相談したい

時々、依頼者からプライベートな話をされることもあります。「実は彼女と別れまして…」なんて言われると、こちらは思わず「こちらこそ何年もいません」と心の中で返しています。

登記の質問は多いのに恋の悩みは聞いてもらえない

相談は山ほど来るのに、なぜかこちらからの相談は誰にもできない。登記の専門家という肩書が、逆に人としての弱音を吐きづらくしているのかもしれません。「先生、しっかりしてますね」と言われるたび、何かがこそばゆいです。

でも、恋愛の専門家って、どこにいるんでしょうね。占い師?結婚相談所?あるいは昔の友人?そもそも相談できるほどの進展がないので、悩みすら発生しない。悩める権利がほしい今日このごろです。

相続の話より婚活の話がしたい

仕事では「相続関係説明図」を毎日のように作っているのに、自分の血縁は広がらないばかり。そろそろ本気で婚活でもしないと、将来、誰にも相続されない自分の財産をどうするのか、真剣に考える時期です。

相続手続きのプロとして、きっちり遺言を書くつもりではありますが、できるなら、その前に誰かに「一緒に生きる」という契約登記でもしたいところです。

誰か恋の登記官になってくれませんか

この気持ちを公正証書にして、法務局で受付印を押してもらえたら楽なのに。恋の気持ちは可視化できず、効力発生時期も不明確、そして対抗要件もない。こんなに曖昧な世界に、司法書士としてどう立ち向かえばいいのでしょう。

登記簿のように、「いつ、誰と、どんな関係で、何を共有しているか」が記録されていたなら、恋愛ももう少し分かりやすかったのかもしれません。恋の登記官、心から求めています。

元野球部のノリも今では通用しない

学生時代、坊主頭でバットを振っていた日々。あの頃の直球勝負が、今では空回り。恋愛にも変化球や駆け引きが必要らしいですが、それが苦手だから野球部だったんです。

直球勝負が空振りになる年齢です

「好きです、付き合ってください」なんて言葉は、年齢を重ねるほど重くなるものです。若い頃なら勢いで言えたものが、今では責任とか将来とか、考えすぎて言葉が出てこない。

しかも、40代半ばという年齢は、相手にも警戒されやすい。慎重にいこうとすればするほど、余計な空気が漂ってしまいます。もう、打席に立つ勇気が必要なんです。

努力と根性だけでは恋は成就しない

高校時代は、練習と根性で何とかなると思っていました。でも恋愛は違います。努力しても結果が出ないし、根性だけでは相手の心は動かない。むしろ、空回りするだけです。

結局、人の心はコントロールできない。それが司法書士の業務と大きく違う点。恋愛における「確定日付」がほしい…。そう思いながら、今日もひとりで事務所の蛍光灯を消すのでした。

それでも人恋しい夜がある

一日の業務が終わり、事務員も帰宅し、静まり返った事務所。そこでふと湧いてくるのは、やっぱり人のぬくもりへの渇望です。どんなに忙しくても、どんなに疲れていても、人は誰かに話を聞いてほしいのです。

書類に囲まれて眠る独身男のつぶやき

机の横には未処理の登記申請書類、テーブルの上にはコンビニ弁当の空容器。そんな光景の中で、ふと「俺、何してんだろうな」とつぶやく夜があります。別に寂しいわけじゃない。でも、誰かに聞いてほしい。それだけです。

真夜中に検索するのは恋愛コラム

こっそりとスマホで「40代 恋愛 始め方」と検索したことがあります。仕事では検索しないような曖昧なワード。でも、それが今の本音なのです。

もう、かっこつけてる場合じゃない。登記のプロでも、恋愛ではただの初心者。明日もたぶん、何も起きないけど、それでもどこかで小さなきっかけを待っている自分がいる。それが、45歳独身司法書士の現実です。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。