「褒められたい」と感じる瞬間
司法書士として地方で独立し、地味で地道な仕事をこなしていると、ふとした瞬間に「誰かに褒められたいな」と思うことがあります。依頼人のために動くのが仕事ですし、プロとして報酬をもらっている以上、見返りを求めすぎるのは違うとは思っています。ただ、それでも「頑張ってますね」とか「助かりました」の一言が、どれだけ気持ちを軽くしてくれるか。忙しさに追われる中で、人に認められたい気持ちは、単なる甘えではなく、働く人間としての自然な感情なのだと、しみじみ感じます。
登記完了の報告をしても「ありがとう」だけ
長い時間かけて準備して、法務局とも何度もやり取りして、ようやく登記が完了しても、報告の電話で返ってくるのは「ありがとうございます」の一言だけ。いや、それが当然の反応だとわかっています。わざわざ拍手喝采してくれなんて思ってない。でも、こちらとしては結構ギリギリの調整をして期限に間に合わせた案件だったりするわけで…。それでも淡々と「終わったのですね」と言われると、心のどこかで、「もう少し、こう…なんかない?」と思ってしまうんですよ。
地味な仕事だからこそ評価されにくい
司法書士の仕事って、外から見える派手さがまるでありません。書類を黙々と作り、確認し、登記申請をして、ひたすら不備が出ないように気を配る。お客様から見えるのは、「依頼したらいつの間にか終わっていた」という結果だけ。過程を見せるわけでもなく、ましてや「この一文を書くためにどれだけ調べたか」なんて説明しません。だからこそ、評価されにくいし、自己満足だけでは持たないときがあるんです。
「当然」で片付けられる悲しさ
以前、相続登記でかなり複雑な案件を処理したとき、何も問題なく終わったことに安心していたら、依頼人から「間に合って当然でしょ」と言われたことがあります。「当然」か…。たしかにそれがこの仕事の宿命かもしれない。でも、自分の中ではかなり神経をすり減らしていたし、夜中に法務局の担当とメールを何度もやりとりした。そんな過程を知る人はいませんし、知ってほしいとも思ってない。ただ、「当然」と一蹴されると、正直、やるせなさが残ります。
事務員さんの一言に救われた日
そんな日々の中でも、救われることはあります。あるとき、事務員さんがぼそっと「先生って、意外と繊細ですよね」と言ったんです。なんでもないような一言ですが、それが「見てくれてるんだな」と感じられて、思わず泣きそうになったことがあります。普段は事務的な会話が多く、感情を交わすことなんて少ないのですが、たった一言で心がふっと軽くなる。誰かに存在を認めてもらうことの力強さを実感しました。
「先生すごいですね」の破壊力
別の日には、難しい登記を処理した後に、「先生、これ普通の人じゃできませんよ。すごいですね」と言われたこともあります。別にお世辞でも構いません。こういう一言が、どれだけ救いになるか。誰にも気づかれなくていい、目立たなくていい。でも、誰かがちゃんと見てくれていて、努力を認めてくれていると感じられたら、また明日もやっていこうと思えるんです。これがなければ、多分もう何度か辞めたいと思ってたと思います。
誰かが見てくれているという希望
たまには「頑張ってますね」と声をかけてもらうだけで、踏ん張れる。そんなことを感じるたびに、「やっぱり人との関わりって大事だな」と思います。孤独な仕事に思われがちな司法書士でも、少なからず人と人とのつながりに支えられているのだと気づきます。たとえ少数でも、自分のことをちゃんと見てくれる存在がいるなら、まだやれる。そんな希望が、地味な日常を少しだけ彩ってくれるのです。
評価されない仕事と司法書士の現実
この仕事は、結果がすべてといっても過言ではありません。どんなに丁寧に対応しても、問題が起きれば「失敗」とされる一方で、問題なく終われば「当然」と見なされる。そんな二極化した評価の中で、自分の価値を見失いそうになることもあります。だからこそ、誰かのひと言が本当にありがたいのです。見返りが欲しいわけではない。でも、せめて「ありがとう」と言われたら、「やっててよかった」と思える。それが本音です。
相談は無料、登記は義務のように思われる
最近では、登記や相続の相談が「無料で当然」だと思われる風潮さえあります。地域密着型の司法書士事務所としては、親切な対応は心がけています。でも、「それぐらい教えてくれて当然」といった態度で来られると、心がすり減っていくんですよね。「じゃあ、こっちは何で生活していくの?」とすら思います。仕事とはいえ、やはり人と人。お互いの立場を思いやる心が、もう少し世の中にあってほしいと切に願います。
価格競争に巻き込まれる日々
大手のオンライン登記サービスなどが増えてきて、価格だけで比較されることが増えました。「そちらより3万円安かったんですが?」と言われても、サービス内容や手厚さが違うんだよ…と説明しても、伝わらないこともあります。価格でしか判断されないというのは、専門職としての誇りを試されている気分になります。こちらが提供しているのは「安さ」ではなく「安心」なんだけど、それを伝える難しさを日々感じています。
「感謝」よりも「早くして」の圧
依頼を受けた翌日に「まだ終わりませんか?」と電話が来ることもあります。中には「こちらも急いでるんで」とプレッシャーをかけてくる方も。もちろん急ぎたい気持ちはわかりますが、それでも手続きには時間がかかる。法務局の処理スピードも関係してくるし、こちらも手を抜けない。けれど「ありがとう」よりも「早く」の声が多いと、だんだん気持ちが冷めていくこともあるんです。せめて、少しでも思いやりが感じられたら…と思わずにいられません。