朝イチのデスクに広がる紙の海
出勤してまず目に飛び込んでくるのは、前日に「明日処理しよう」と積み残した書類たち。朝の光が差し込む中で、机の上には控えめな厚みの「書類の山」。自分で自分の首を絞めているのはわかっているのに、後回しにしてしまったツケが今日もやってくる。コーヒーを飲む間もなく、書類をめくる音だけが静かに響く。なぜ、こんなに紙が多いのだろうか。ふとため息が出て、また書類に目を戻す。そんな繰り返しが、最近の日常になってしまっている。
片付けても片付けても終わらない
「今日は絶対に全部終わらせるぞ」と意気込んで朝を迎えても、昼にはもう諦めの境地に至っていることが多い。片付けたと思ったら、別の棚から追加のファイルが出てきて、まるでいたちごっこ。時には「これはいつの書類だっけ?」と記憶の彼方を辿るような場面もある。整理しても整理しても、どこからともなく増えていく紙たち。燃えるごみの日が待ち遠しいけど、個人情報だらけで気軽に捨てられないのが司法書士の仕事の厄介なところだ。
分類のルールが自分でもわからなくなる
「この書類は相続関連だけど、こっちにも該当するな…」と迷った末に両方のフォルダにコピーして入れることもある。効率化しようとルールを作ってはみたものの、案件の種類があまりに多岐にわたっていて、分類がすぐに破綻する。しかも、後から見返したときに「あれ?このルール誰が決めたんだっけ?あ、自分か」となって、軽く自己嫌悪に陥る始末。完璧な整理など夢のまた夢で、結局は「勘と流れ」で対応している。
「今必要じゃないけど捨てられない書類」問題
一番困るのが、「今すぐ使わないけど、そのうち必要になるかも」という書類。これが増える原因の筆頭だ。過去の案件の控えや、念のためのコピーなどがどんどん溜まっていく。捨てればすっきりするのはわかっているけど、あとで「あれが必要だった!」となるのが怖くて手放せない。まるで押し入れの奥にしまった古い家電のように、何年も使わないのに「もしかしたら」に備えて場所だけ占領している。紙の呪縛は想像以上にしぶとい。
一人事務所ゆえの「全部自分でやる地獄」
小さな司法書士事務所では、分業という言葉はほとんど意味をなさない。事務員に手伝ってもらえる範囲には限りがあって、結局のところ自分でやるしかない仕事が山のようにある。登記申請のチェック、顧客対応、電話の応対、書類の作成、そしてその整理。自分しか責任を取れないから、誰にも頼れないという孤独感が心の奥底にじっと居座っている。事務所の壁に反響するのは、キーボードの音と、自分の小さな独り言ばかりだ。
誰かに頼む時間すら惜しい毎日
「これ、お願いしてもいいかな」と事務員に声をかける前に、自分でやってしまった方が早いかもしれないと思って手を動かしてしまう。それが習慣になると、仕事を抱え込む癖がつく。結果として、自分がどんどん疲弊していく悪循環だ。誰かに任せるには、まず説明しなければならない。でもその説明の時間すら今は惜しい。そんな毎日を過ごしていると、気づけば「人に頼る」という感覚すら忘れがちになってしまう。
事務員に頼めない業務の線引き
法的なチェックが絡むような業務は、やはり自分でやるしかない。事務員にお願いできるのは、書類の印刷や簡単な入力程度。ミスが許されない仕事だからこそ、誰かに任せる怖さが常につきまとう。事務員だって忙しいし、無理をさせてはいけないという気持ちもある。結局、自分の負担は減らない。外注を検討したこともあるけれど、やり取りの煩雑さと費用面で、二の足を踏んでしまう。
結局自分でやるしかないという結論
あれこれと試行錯誤した末、結論はいつも同じ。「誰もやってくれないから、自分でやるしかない」。割り切れば気が楽になるかと思ったけれど、実際はその割り切りがさらに心を重くする。業務の質を下げたくない、でも効率は落としたくない。そんな気持ちがせめぎ合って、夜遅くまで電気が消えない事務所に、自分一人が残る。今日もまた、書類の山とため息だけが静かに増えていく。