紙に埋もれて、今日も机が見えない
朝、事務所に来てまず目に飛び込んでくるのは、片づけることを諦めた紙の山。毎日「今日は少し片付けよう」と思うものの、気がつけば新しい依頼の書類が机の上に追加され、整理が追いつかない。昔はもう少し余裕があったような気がするけれど、気のせいだろうか。紙という物理的な重みに、精神的な重みまで乗っかってくるような感覚。なんでこんなにも書類って散らかるんだろう、と愚痴のひとつも言いたくなる。
「どこに置いたっけ」が口癖になった日常
何度も同じことを探している自分に気づいたとき、ちょっと情けなくなる。「さっきの登記識別情報、どこにやった？」と自分に問いながら、机をかき分ける姿はもはやギャグだ。しかも、探している最中に別の依頼の資料が目に入って、「あ、これもやらなきゃ」と脱線。結果的に、最初に何を探していたかも忘れてしまう始末。記憶もスペースも限界だ。
探す時間とイライラは比例する
何かを探している時間って、本当に無駄。でもその無駄が積み重なると、心の余裕すら奪われていく。昔、先輩司法書士が「紙を制する者が仕事を制する」って言ってたけど、正直その言葉、嫌いだった。できることならデジタルに移行したい。でも、依頼者は紙が安心なんだと言う。その言葉のたびに、また紙の山が増えていく気がして、正直うんざりする。
紙に書いたメモが紙の山に埋もれるという皮肉
ふとした思いつきをメモした紙を、いざ見返そうとしたときに見つからない。よく考えたら、それも紙だ。その紙を、また別の紙の下に置いてしまった。メモを忘れないために書いたのに、メモ自体を失くすという矛盾。紙に支配されている感覚になる。そして今日もまた、同じことをもう一度書いている。どこかで「あれ、これ昨日も書かなかったっけ？」と疑問を抱きながら。
missing value。それはファイルのどこかに
データを管理していると、たったひとつの空欄が致命的になることがある。Excelのシートを確認していて、「あれ、この住所欄空白だな…」と気づいたときの、あの嫌な汗。missing valueという言葉を見かけるたびに、背中がざわつくようになった。もしかしたら、重要な提出書類の中にも空欄があるのではないか…。そんな不安が、夜遅くまで頭から離れない。
空欄ひとつで止まる手続きの流れ
司法書士の仕事は、とにかく細かい。空欄一つで、法務局から補正の連絡が来る。依頼者には「大丈夫です」と言ってはみたものの、内心は焦りまくっている。書類提出後に「あ、あそこ埋め忘れたかも」と気づいたときのゾッとする感覚。家に帰ってからも、その空欄が夢に出てくるくらいだ。何でもない一行が、全部の流れを止める引き金になるのだ。
「ここに何を入れればいいですか？」と聞かれる虚しさ
事務員さんに「ここ、空白なんですけど…」と聞かれて、「ああ、そこは…」と答えながら、自分が把握できていなかったことに気づくときの情けなさ。確認すればわかる。でも、その確認に割く時間とエネルギーが、今の自分にはちょっと重い。自分で選んだ仕事とはいえ、こんなにも細かい確認作業に追われていると、ふと「俺、なんでこれやってるんだっけ」と頭がぼんやりする。
補正通知のたびに胃がキリキリする
補正通知が来るたびに、胃に鉛でも詰められたような重さが走る。慣れてるはずなのに、あの「訂正してください」の一文を見ると、どうしても自分が責められているような気になる。司法書士って、地味な仕事だけど、責任だけは派手にのしかかってくる。誰も見ていないようで、法務局だけはしっかり見ている。そこがまたツラい。
事務員さんが休む日の絶望感
うちの事務所には、事務員さんが一人いる。ありがたい存在だ。ただ、その事務員さんが体調不良や家庭の事情で休んだ日は、絶望的に忙しくなる。自分ひとりで電話を取り、来客対応をし、登記書類を整える。さらに補正の対応まで重なった日には、もう何から手をつけていいのか分からなくなる。誰にも頼れないこの環境、まるで終わりの見えないマラソンのようだ。
一人二役どころか三役くらいになる
司法書士、事務員、そして雑用係。全部自分でこなさなければならない日もある。時間に追われて、昼食すらまともに取れず、気づけば夕方。メールの返信を忘れていたことに気づいても、「まあ、明日でいいか」と自分を誤魔化す日が増えた。そんなとき、「あの件どうなりました？」と依頼者から電話が来る。胃が、またひとつ小さくなった気がする。
お客さんの前では平静を装ってるけど
どれだけ内心がパニックでも、依頼者の前では平然としていなければならない。それがプロとしての仕事だとは思うけれど、内心は「今、マジで余裕ないんです」と叫びたい。笑顔で対応しながら、頭の中では次の予定やタスクが渦巻いている。たまに噛み合わない返答をしてしまって、自分でも「何言ってんだ俺」と心の中でツッコむ日も多い。
昼休みはファミチキをかじりながら自問自答
忙しい日は外に出る時間すらなくて、コンビニのファミチキがランチの定番になる。狭い事務所の奥で一人、ファミチキをかじりながら「俺、このままでいいのかな」とつぶやく。別に贅沢がしたいわけじゃない。でも、もう少し穏やかな日々があってもいいんじゃないかと、自分に問い続ける。回答は、いつもファミチキのスパイスにかき消される。
「司法書士ってモテるでしょ？」って誰が言った
時々、まるで都市伝説みたいに言われる。「司法書士って、安定してるしモテそうですね」。でも現実は、そんなに甘くない。名刺を出すたびに、相手の顔が「ふーん…」ってなるのが分かる。地味で、堅くて、ちょっと近寄りがたい職業だと思われているのかもしれない。婚活イベントでも、一度も「すてきですね」って言われたことはない。
女性に説明するたびに微妙な空気になる
「司法書士って何する仕事なんですか？」と聞かれたときの返答に、いつも困る。「不動産登記とか相続の手続きとか…」と答えても、相手の目はどこか遠くを見ている。そう、反応が薄いのだ。話を広げようとしても、「へぇ～」で終了。なんでだろうなぁ、と思いながら、自分の肩書きが相手にとって魅力的じゃないことを、毎回思い知らされる。
「地味ですね…」の破壊力
とどめはこの一言。「へぇ、地味ですね」。わざとじゃないのはわかってる。でも、傷つく。心にグサッとくる。もっと他に言いようがあるだろうって思うけど、ないんだろうな。司法書士って、やっぱり「わかりにくくて地味」という評価から抜け出せないんだろうなって諦めてる。好きでやってる仕事だけど、人に語るのは難しい。
名刺交換より心の交換がしたい（無理）
名刺を渡す場面で、ふと「この人ともっと深い話ができたらな」と思うことがある。でも、現実は名刺だけがすれ違って終わり。誰かと気持ちを共有することが、年々難しくなっている気がする。書類はたくさん書いてるけど、自分の気持ちは誰にも渡せてない。そんな孤独が、時折しんどくなる。
それでも紙と向き合う意味を探して
愚痴は多い。しんどいことも多い。でも、それでも続けているのは、誰かの安心のためにこの仕事が必要だと信じているから。たった一枚の書類が、その人の未来を支えることもある。紙の束に埋もれて見えなくなることもあるけれど、その中にちゃんと意味がある。だから、今日もまた、紙と格闘しながら机に向かう。
誰かの安心につながっていると信じて
「先生にお願いしてよかったです」――その一言だけで、救われる日がある。たとえその日が、ミスやトラブル続きだったとしても。誰かの不安を少しでも軽くできたなら、自分の仕事には価値があるのだと思える。大きな成果なんていらない。ただ、目の前の人に寄り添えたとき、自分がこの道を選んだ意味を少しだけ思い出せる。
孤独でも、手を抜かないのが自分のルール
誰も見ていないからこそ、ちゃんとやる。それが、自分の中で決めているルールだ。どれだけ忙しくても、どれだけ誰にも気づかれなくても。紙の一枚一枚に向き合うことで、相手に対する誠意を示しているつもりだ。そうでもしなければ、自分が何のために働いているのか、わからなくなるから。
