第一印象で決まるのは仕事だけじゃない
昔から「見た目が9割」と言われることには、正直うんざりしていた。人間の本質は中身だろう、と思っていたし、そう信じたい気持ちもあった。だけど、この仕事をやっていて痛感するのは、第一印象の大切さだ。司法書士の仕事は信用が命。なのに、私は「なんか暗い」「頼りなさそう」と思われることが多い。誤解だ、と思っても取り返すのに時間がかかる。最初のたった数秒の印象で、その後の信頼構築のハードルが格段に上がってしまう。損しているなと思いながらも、なかなか変われない自分もいる。
初対面の数秒で何が見抜かれているのか
ある日、相談に来た若いご夫婦が、私の顔を見て一瞬だけ顔を見合わせた。その時点で「あ、印象が微妙だったな」と直感した。言葉では丁寧に対応したつもりだったが、やはり後日キャンセルの連絡が入った。後から聞いた話では、「ちょっと頼りない感じがして…」とのこと。顔の筋肉の動き、声のトーン、姿勢、目線、そのすべてが無意識に評価されているのだと思う。印象は「見られている」というより「感じ取られている」ものなのかもしれない。
見た目か声か態度か結局全部か
第一印象の研究では、視覚が55%、聴覚が38%、言葉の内容が7%などとよく言われるが、実感として「全部」が影響しているとしか思えない。髪がボサボサで、声がこもっていて、覇気がない。それだけで「この人に任せて大丈夫かな?」と不安にさせてしまう。逆に、見た目がキリッとしていて、声がはっきりしていて、姿勢が良いだけで、安心感を与えられるのも事実。司法書士という職業であっても、外見や態度で得られる信頼感は無視できない。
じゃあ第一印象が悪い人はどうすればいいのか
結局のところ、「第一印象が悪くても中身で勝負するしかない」というのが自分の結論だ。ただ、勝負が始まる前に「印象」でスタート地点が後退しているのも否めない。だからこそ、少しでも「悪く見えない努力」は必要だと最近思っている。服装を整える、声を少し大きく出す、口角を上げる。それだけで随分と違う。変わるには時間がかかるし、面倒くさいけど、愚痴ばかり言っても印象は変わらないのだ。
司法書士に求められる「安心感」は見た目から始まる
「この人なら安心できる」と思ってもらうことが、司法書士のスタートライン。能力や経験よりも先に、まず人柄や雰囲気が見られる。たとえば、同じような登記の相談をしていても、「柔らかくて話しやすい感じの先生」にはすぐに依頼が決まる。反対に、私は「なんか怖そう」「なんか冴えない」と思われてしまうことがある。中身には自信がある。でも、それが伝わるまでの時間がもどかしい。
地味で暗いと思われたら終了
田舎町の小さな事務所で働いていると、派手さはむしろマイナスだと思っていた。でも、あまりに地味で暗いと、それはそれで「この人、本当にプロなの?」という不安につながる。特に相続や不動産登記など、大きなお金が動く相談の場合、信頼感が第一だ。だから、最近はネクタイの色を明るめにしたり、照明を少し暖色に変えたり、小さな工夫を始めている。変化は微々たるものだけど、第一印象を少しでもプラスにしたい。
実務能力より先に印象で負けてしまう現実
どれだけ細かい書類チェックができても、どれだけ法改正に対応していても、それは「後から」伝わる話だ。最初に「この人、大丈夫そう」と思ってもらえなければ、実力を見せるチャンスすらもらえない。たとえば、昔、他の司法書士がやった案件のミスをリカバーしたことがあった。でも、その依頼者も最初は私を信用していなかった。たまたま私が低姿勢だったから依頼してくれただけで、もう一歩印象が悪ければ流れていたはずだ。
元野球部の面影が通用しない年齢になった
若いころは、「元気」「さわやか」「スポーツマン」という肩書きが、多少の信用を補ってくれていた。でも45歳を超えると、そんな過去の肩書きはただの思い出でしかない。むしろ「なぜ今そんなに疲れた顔してるの?」という風にしか映らない。元野球部というだけでは信頼にはつながらないし、体型も崩れれば説得力もない。やはり現在の印象、今の雰囲気がすべてだと痛感する。
事務所に来るお客さんの反応で分かること
ドアを開けた瞬間の「あっ…」という空気。あれが怖い。たぶん無意識なんだろうけど、表情に出てしまうお客さんが多い。「あれ、思ってた感じと違うな」という雰囲気。それを取り返すのが本当に大変。口調を柔らかくして、質問には丁寧に答えて、それでも「最初の違和感」が邪魔をする。たった1秒の空気感が、30分の努力を上回ってしまう。理不尽だけど、これが現実だ。
「この人で大丈夫かな」と思わせたら負け
この仕事では、「任せても大丈夫そう」と思ってもらえるかどうかがすべてだ。お客さんは法律の専門知識がないからこそ、雰囲気で判断せざるを得ない。だから、そこで「この人ちょっと頼りなさそう」と感じさせてしまったら、もう挽回は難しい。事実、私も何度も取りこぼしてきた。後悔しても仕方がないけど、せめて次は同じ失敗をしないように、最近は表情筋トレーニングなんかも始めている。
一度ついた不信感はどんなに説明しても取れない
言葉でどれだけ説明しても、「もうそういう目で見られてる」と思うと、自分も自信をなくしてしまう。説明が必死になればなるほど、「この人焦ってる?」と思われてしまう。完全に悪循環だ。第一印象が悪いと、こちらも萎縮してしまって、さらに状況が悪くなる。もう本当にしんどい。でも、「だからこそ最初が大事なんだ」と、頭では分かっている。だから今日も、せめて姿勢だけは正して事務所に立つ。
それでも私は仕事で信頼されたい
愚痴ばかり言ってても仕方ない。印象で損してる自覚があるなら、できる範囲で工夫するしかない。見た目の清潔感、話し方の練習、事務所の雰囲気づくり。そんな小さなことの積み重ねでしか信頼は生まれないのかもしれない。完璧じゃなくていい。少しでも、「あ、この人でよかった」と思ってもらえる瞬間を増やしていきたい。
印象で損しても取り返せる方法を模索中
第一印象で損をしても、そこから信頼を得たときの嬉しさは格別だ。「最初は不安だったけど、やっぱり頼んでよかった」と言われたときの達成感は、他では味わえない。そんな瞬間があるから、この仕事を続けられているのかもしれない。だから今日もまた、鏡の前で自分の顔をチェックして、「少しでもマシな印象を」と願いながら出かけるのだ。
愚痴を言いながらでも前に進みたい気持ちはある
文句も多いし、ネガティブなことばかり考えがちだけど、前に進みたい気持ちは確かにある。年齢的にも、人生の折り返し地点。これからの印象は、自分の努力次第で変えていける。完璧にはなれない。でも、少しでも「ちゃんとした人」に見られるように。口ではぼやきながら、心のどこかで諦めきれない自分がいる。それが、まだこの仕事を続けている理由なのかもしれない。