婚活アプリを開いて閉じるだけの夜が続く
誰かとつながりたくてアプリを開く夜
夜の事務所は静かで、時計の針の音すら耳につく。残業を終えて、家に帰って、ふとスマホを手に取る。婚活アプリのアイコンがそこにある。タップして、ログインする。けれど、画面の向こうにいる誰かとどう向き合えばいいか、いまだにわからない。求めているはずなのに、なぜか心が動かないまま、そっと閉じてしまう夜が続いている。
アカウントはあるでも心がついてこない
もう何年も前に登録したアカウント。写真もそこそこ真面目に選んだし、プロフィールも誠実に書いたつもりだ。けれど、いざ誰かのプロフィールを見てみても、「いいね」する気力すら湧かない日がある。何のために開いたんだろうと自分に問うて、ため息をひとつ吐いて、アプリを閉じる。別に嫌なことがあったわけじゃない。ただ、心がついてこない。そういう日が続いている。
スワイプはするけどマッチは望まない
指は動く。スワイプするのは簡単だ。けれど、それが「出会い」のきっかけになるとは思えない。マッチしても、メッセージのやりとりを想像すると、疲れてしまうのだ。仕事では人と話すことに慣れているのに、なぜかプライベートとなると、言葉が出てこない。自分の中の壁が、思った以上に高くそびえていることに気づく。
自分の何を出せばいいか分からない
司法書士という職業をやっていると、相手からは堅い印象を持たれる。実際そうだし、嘘は書きたくない。でも、自分という人間をどう表現すればいいのか。「誠実です」「真面目です」そんな言葉では何も伝わらない気がする。結局、自分をどこまでさらけ出せばいいのか分からなくて、何も書けないままアプリを閉じてしまう。
プロフィール文でつまずく自己紹介の壁
仕事では「わかりやすく伝える」ことが求められる。けれど、自分自身のこととなると、とたんに言葉が出てこない。プロフィール文は、短いながらも自分を凝縮して伝えるスペース。でもそこには、「いい人に見せなきゃ」という意識がつきまとう。それが、逆に本音を隠す結果になってしまう。
肩書きが重たいと感じる司法書士のジレンマ
「司法書士です」と書くと、相手の反応が変わる。安定してそう、しっかりしてそう、真面目すぎるかも。そんな先入観を与えてしまうのが、少し怖い。でも、それを隠したくはない。自分の仕事には誇りもあるし、好きでもある。ただ、肩書きがひとり歩きしてしまうことが、婚活の場ではとても重たく感じる。
正直に書いたら引かれそう嘘を書いたら虚しさが残る
「趣味は野球観戦です」「休日は事務所で事務処理をしています」そんな正直すぎることを書くと、なんだか浮いてしまいそうだ。でも、カフェ巡りや旅行が趣味だなんて嘘は書けない。背伸びをすればするほど、自分が何者か分からなくなっていく。結果、何も書けなくなって、プロフィールはずっと中途半端なままだ。
開いて閉じてを繰り返す自分に嫌気がさす
毎回同じことをしている自分が、正直情けないと思う。でも、やめられない。誰かと出会いたい気持ちはあるのに、その一歩が踏み出せない。アプリを開いて、「あ、この人いいかも」と思っても、すぐに「でも無理か」と思って閉じてしまう。そのループに、心のどこかがすり減っていくのを感じる。
誰とも話していないのに疲れる夜
ただ画面を見ているだけ。誰とも会話していないのに、なぜかどっと疲れている。自己紹介文を読んで、写真を見て、自分と比べて、勝手に落ち込む。そんな時間が積み重なると、知らぬ間に心が沈んでしまう。夜は静かで、自分の感情がよく響く。だからこそ、疲れるのかもしれない。
事務所では話せるのにアプリでは無口になる
仕事中は、相談者とスムーズに話せる。どんな書類が必要で、どう手続きを進めるか、淡々と説明できる。でも、婚活アプリでは全く逆だ。どこからどう話せばいいのか、どんな言葉を選べばいいのか、迷ってしまう。人と話すのは得意なはずなのに、なぜここまで無口になるのか自分でもわからない。
なぜ自分は誰かを求めているのか
「誰かと一緒にいたい」という気持ちは、きっと多くの人が持っている。自分もそうだ。けれど、それが「寂しいから」なのか、「愛されたいから」なのか、うまく言葉にできない。ただ、日々の暮らしの中でふと空白を感じる瞬間がある。それを埋めたいと思う自分が、確かにここにいる。
寂しさよりも確認したいことがある
もしかしたら、誰かと出会いたいというより、「自分も誰かに必要とされる存在なのか」を確認したいのかもしれない。仕事では頼られることが多い。でも、それは職務上のこと。一個人として、誰かに必要とされることがあるのか。そんな小さな自信を、婚活アプリに求めてしまっている自分がいる。
元野球部としての孤独な戦い方
高校時代、野球部だった自分は、仲間と汗を流して毎日を過ごしていた。あの頃は孤独なんてなかった。でも今は、戦う相手も、応援してくれる人もいない中で、一人で勝手に戦っている気分になる。誰かと励まし合うこともない。恋愛というフィールドでは、バッターボックスに立つことすらできず、ベンチで終わる日が続いている。
事務所でひとり残業しながら考えたこと
書類の山とパソコンの画面に囲まれながら、ふと「この生活、ずっと続けていいのか」と思うことがある。仕事はやりがいがある。でも、それだけで本当にいいのかと自問自答する夜がある。そんな時、婚活アプリを開いてしまうのだ。何かを変えたくて。でも、変えられないまままた今日も終わってしまう。
誰かがいれば楽になるのかという問い
正直なところ、誰かと暮らすことができれば、気持ちも少しは楽になる気がする。帰ってきた時に「おかえり」と言ってくれる存在。そんな些細なことが、明日の自分を支える力になるのかもしれない。でも、それを手に入れるには、自分も変わらないといけない。そのハードルの高さに、いつも立ち尽くしてしまう。
女性に好かれない自分を受け入れるまで
モテないことを言い訳にしてきた。でも、どこかで「自分のせいじゃない」と思いたかったのかもしれない。服装も髪型も、努力すれば少しはマシになる。でも、根本的な自信のなさがにじみ出てしまう。婚活アプリでその現実を突きつけられるたびに、また心の扉を閉ざしてしまう。
努力ではどうにもならない壁がある
「努力すれば報われる」そう教えられて育った。野球も、勉強も、仕事もそうだった。でも、恋愛だけは違う気がする。どれだけ頑張っても、報われないことがある。相性、タイミング、運、見た目。自分ではどうにもならない壁が立ちはだかる。その前で、ただ立ち尽くすしかない時もある。
でも少しは変われた気がする今
それでも、自分なりに変わってきたと思う部分もある。服に気を使うようになったし、人の話をきちんと聞くようにもなった。何より、自分の弱さを認められるようになったことが大きいかもしれない。婚活アプリを開いて閉じるだけの夜も、いつかその先に進む準備期間なのかもしれない。
マッチングしないからこそ見えてくるもの
思うようにマッチしない。誰ともつながらない。でも、だからこそ、自分が何を望んでいるのか、何が苦手なのか、じっくり向き合う時間になった。苦しいけれど、悪いことばかりじゃない。誰かとつながる前に、自分と向き合う必要があったのかもしれない。
期待しないことの大切さと難しさ
婚活に限らず、人生は期待と現実のギャップに疲れることが多い。だから、期待しすぎないことが大切だと頭ではわかっている。でも、心がそれを許さない。つい期待して、勝手に落ち込んでしまう。期待せず、諦めず、淡々と向き合う。それが今の自分のテーマかもしれない。
それでもまた開いてしまう婚活アプリ
何度やめようと思ったか分からない。それでもまた、アプリを開いてしまう。誰かを探しているのか、自分を探しているのか、それすら曖昧なまま。でも、いつかはそっと閉じるだけじゃない夜が来ると、どこかで信じている。信じたいと思っている。
誰かに会いたいより誰かと分かち合いたい
結局のところ、誰かと分かち合いたいのだと思う。嬉しかったことも、しんどかったことも、「今日こんなことがあったよ」と言える相手がほしい。それだけで、世界は少し優しく見える気がする。まだ見ぬ誰かと、そんな日常を築けたらと願って、今日もまた、アプリを開いてしまう。