やる気だけが空回りしていく日

やる気だけが空回りしていく日

朝一番のやる気が逆に空回ることもある

目覚ましが鳴る前に目が覚めた朝は、だいたいやる気が漲っている。コーヒーを淹れ、机に向かい、今日はあれとこれとそれを終わらせようとスケジュールを立てる。ところが、こういう日ほど妙にうまくいかない。電話が多い、メールが多い、予定外の来客がある、そういった“割り込み仕事”に追われて気づけば午前が終わっている。頑張ろうという気持ちが強いほど、それが思い通りにならない現実にぶつかると、落差がきつくなる。

「今日こそはやる」と決めた日の方がうまくいかない不思議

「今日は絶対に○○まで終わらせよう」と意気込んだ日に限って、プリンターが紙詰まりを起こしたり、登記情報提供サービスがメンテナンス中だったりする。まるで“やる気”というものを察知して、外の世界がわざと邪魔してくるような気がしてならない。以前、「朝6時から出勤して、誰よりも早く片付けよう」と試みたことがあるが、その日に限って役所のシステム障害が発生し、結局午後まで待たされる始末だった。

気合いを入れると電話が鳴りっぱなしになる法則

不思議なことに、集中しようと思ったタイミングで電話が鳴る確率が異常に高く感じる。タイミングの問題というより、こちらの「集中スイッチ」が入った瞬間に限って誰かがそのスイッチを切りに来る感覚だ。例えば、登記完了証をまとめて印刷している時に限って「相続の相談なんですが…」という長電話がかかってきたりする。まるで見ているかのように、絶妙なタイミングでかかってくるその電話に、やる気はじわじわと削がれていく。

完璧主義が生む作業の停滞とモヤモヤ

自分でも厄介だと思うのが、「今日は完璧にこなそう」と思うほど、作業スピードが遅くなること。細かい誤字脱字、ファイル名の揃え方、押印の位置…気にし出すと止まらない。結果的に、1時間で終わるはずの書類作成が3時間かかる。終わった時には達成感よりも疲労感が残り、「これで良かったのか?」と自問するばかり。完璧を目指すあまり進まない、という矛盾に、自分で自分を縛っているような感覚になる。

外からの評価が欲しいのに誰も見ていない虚しさ

やる気が空回りしているとき、心のどこかで「誰か見てくれないかな」と思っている自分がいる。なのに、そういう日に限って誰も気づいてくれないし、ありがとうも言われない。それどころか、提出書類のミスを指摘されたりして、「あれ?頑張ったのってなんだったっけ」と一気に冷める。頑張りと報酬の非対称さに、何度も空を見上げては「今日はツイてないな」とつぶやいてしまう。

張り切った分だけダメージがくる午後の沈黙

午前中に空回ると、午後にはそのダメージがボディブローのように効いてくる。集中力が切れて、やる気の残骸だけがデスクに残っている。さっきまで積極的に動いていたのに、急に静かになって、自分の中で冷たい風が吹いているような感覚になる。午後のこの沈黙が、地味につらい。張り切ったぶん、疲れも大きく、それを誰とも共有できないのがまた孤独だ。

集中力の空振りが引き起こす自己嫌悪

「よし、ここから再スタート」と思っても、さっきの空回りが頭をよぎって手が止まる。1回リズムが崩れると、立て直すのが難しい。そんな自分にイライラし、さらに自己嫌悪に陥るという負のループ。気づけばネットニュースを開いて「司法書士 辞めたい」などと検索していたりする。そうして時間だけが過ぎていき、さらに落ち込む、まさに悪循環だ。

外出予定も雨で中止そんな日もある

唯一の気分転換だった外出予定が、雨でキャンセル。晴れていれば外でクライアントと話し、気持ちを切り替えられたかもしれないのに、部屋に閉じこもって事務所の空気と湿度だけが増していく。時計の針は進むのに、心はどんどん重くなる。やる気の火が、じとじととした湿気にかき消されていくような、そんな午後だった。

事務員には見抜かれているかもしれないやる気の空回り

一人だけの事務員が、淡々と仕事をこなしている姿が逆にプレッシャーになる。自分ばかり空回ってるように見えてしまって、「あ、この人冷静に僕のテンパりを見てるな」と思うと、ますます焦る。年齢も違う、価値観も違う相手に見透かされている感覚は、なかなかしんどい。

「やけに早い出勤ですね」と言われた朝の敗北感

いつもより1時間早く出勤して、机を整え、書類のチェックを始めた朝。気合いが入っていることを誰かに気づいてほしい気持ちもあった。でも出勤してきた事務員に「やけに早い出勤ですね」と言われた瞬間、すっと冷めた。こちらは“やる気の証”として早出してるのに、その空気感が伝わらなかったときの寂しさといったらない。

頑張ってるアピールが滑る瞬間

「今日は8件も電話対応したよ」「登記も3件終わらせた」なんて言ってみたものの、事務員の反応は「へえ、そうなんですね」の一言。やる気アピールが逆に虚しく響く瞬間だ。おそらく彼女は悪気がない。ただこちらが勝手に見返りを求めてしまっているだけ。それがわかっているからこそ、何も言えなくなる。

一人の事務員に見せる背中が重い

「俺がしっかりしなきゃ」と思ってはいるけれど、実際は頼りない背中しか見せられていない気がする。事務員が何も言わないからこそ、余計にいろいろ想像してしまう。もっとしっかりした所長になりたい、と思いながら空回って、気づけばまた「やる気だけが空回る日」になっている。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。