朝の電話一本でその日の気分が決まる
朝一番にかかってくる電話。それだけで一日のテンションが決まってしまうことがあります。「おはようございます、○○司法書士事務所です」と名乗った直後、依頼人の機嫌が悪そうだと、もうその時点で「今日はダメな日かもな」と覚悟してしまうのです。こちらは丁寧に対応しているつもりでも、相手の声色や言葉尻で心がざわつく。たった数秒のやり取りで、僕の心の温度は急降下。もっと図太くなれれば楽なのに、と何度も思いました。
依頼人の第一声に敏感になる朝
たとえば「ちょっと聞きたいんだけどさ、昨日の件どうなってる?」と、いきなり詰められるような調子で言われると、それだけで一気に緊張が走ります。「ちょっと」って便利な言葉ですよね。怒ってもいないし、急いでもないし、でも責められてる気がする。そんなとき、自分の呼吸が浅くなるのがわかるんです。元野球部だったころは、サインミスしたってここまで緊張しなかったのに。人の感情って、ボールよりよっぽど難しい。
優しさか攻撃かを即座に見抜こうとしてしまう癖
こちらが過剰に気を回しているだけかもしれない。でも、依頼人がちょっと声を荒げただけで「怒ってる?不満がある?」と勝手に分析モードに入ってしまう自分がいます。なぜなら、ひとつの機嫌がその後の対応を左右するからです。仕事として割り切れればいい。でも現実は、対人感情の積み重ね。丁寧にやったはずの書類も「わかりにくい」と言われれば自信を失う。気持ちが沈むと、それが仕事にも影響してしまうんです。
プライベートな余裕のなさが判断を狂わせる
きっと、心に余裕があればもう少し流せるのかもしれません。でも正直、独身で、誰にも甘えられない生活だと、日々のささいな出来事が重くのしかかります。朝コンビニで買ったコーヒーがぬるかっただけでイラっとする。そんな状態で受ける電話だからこそ、敏感に反応してしまうのかもしれません。誰かに「大丈夫だよ」って言われるだけで、変われる気もするんですけどね。そんな相手がいないのが、またつらいところです。
書類チェックの手が止まる理由
ひとりで事務所をやっていると、誰にも見られていないぶん自分のペースでできる反面、精神的なブレーキがかかる瞬間がよくあります。特に、依頼人からの不満を受けたあとは要注意。たとえそれが小さな言葉でも、ぐるぐると頭の中で繰り返されてしまう。集中できず、書類のチェックにも手が止まる。自分でも「こんなことで?」と思うんですが、メンタルって思ったよりももろい。士業って孤独な仕事です。
指摘の言葉が頭を支配してくる
以前、「この書類、もうちょっとわかりやすくならないんですか?」と言われたことがありました。書式も様式も法律上の要件もきちんと満たしていたのに、そう言われてしまうと「自分の説明が悪いのか」と不安になる。わかりやすさって、何を基準にすればいいんでしょうかね。気づいたらその言葉が何度も頭の中でリピートされて、他の仕事に手がつかなくなっていました。そんなときは、自分が何をしているのかすらわからなくなります。
「それくらい聞かないでくださいよ」と言われた件
とある依頼人に、登記申請の前提条件について念のため確認をしたときのこと。「それくらい、常識でわかるでしょ」と冷たく言われました。正直、その瞬間、胸がズキンとしました。こちらとしては慎重に進めたくて聞いただけなのに、その対応はないだろうと。もちろん顔では笑って対応しましたけど、その後しばらく、他の案件にも集中できませんでした。感情を抑えて働くことの難しさを痛感した出来事です。
気にしないと決めても気になる
「気にしないようにしよう」と何度自分に言い聞かせても、やっぱり気にしてしまう。プロなんだから、感情をコントロールすべきだとわかってはいる。でも、言われた一言がどうしても引っかかってしまうんです。自分の価値を否定されたような気がして。もっと強くならなきゃとは思うけど、そんなに器用にはできていません。人に優しくあるためには、まず自分に優しくしないといけない。そんな当たり前のことに気づくのに、何年もかかりました。
午後一の来所対応がもたらす緊張感
昼食後、ほっと一息ついてからの来所対応。これは精神的にきついときがあります。食後の眠気と、これからの業務のスケジューリングの最中に、ふいにインターホンが鳴る。そのときの相手の態度ひとつで、午後の調子が決まってしまう。笑顔で入ってくれる人なら救われる。でも、無言で座ってじっと書類だけを見るような方だと、こちらの心がすぐに閉じてしまうのです。気にしないようにしようと思っても、難しいものです。