誰かを好きになる感覚が遠くなった
司法書士として日々の業務に追われるうちに、ふと気づけば、誰かにときめく感覚が遠のいていました。昔はもう少し、誰かと話すだけでドキドキすることもあった気がします。でも今は、感情よりも手続き、心よりも締切。そんな生活が何年も続いています。特に40代に入ってからは、恋愛というテーマ自体が自分からどんどん遠ざかっているように感じるのです。まるで自分が恋をしない人間になってしまったかのような感覚さえあります。
書類と向き合う日々に心を持っていかれて
朝、事務所に行ってメールチェックをし、書類を整え、法務局に提出して戻ってきたら午後の相談対応。土日も案件処理に追われていると、気づけば1週間があっという間に過ぎています。そんな中で「恋愛」とか「誰かを好きになる」なんて、もはや夢物語のように思えてしまうんです。日々のタスクをこなすことで精一杯。感情にスペースを与える余裕すらないまま、時間だけが過ぎていく。そうして、恋愛に心を向ける感覚はどこかへ消えていきました。
好きってなんだっけと思いながらハンコを押す
依頼人と話していても、「この人素敵だな」なんて感じる余裕はまったくありません。むしろ、どんな申請書が必要か、必要書類は揃っているかという実務ばかりが頭に浮かびます。昔は少しでも目が合うと照れていたようなタイプだったのに、今は笑顔の返し方すら忘れてしまったようです。書類に印鑑を押しながら、ふと「好きってどうやって始まるんだったかな」と思うことがあります。ハンコを押す音が、そんな自分の虚しさに響くこともあるのです。
恋愛より先に締切がくる毎日
司法書士という仕事は、どうしても「日付」に追われることが多い職業です。登記申請のタイミング、相続の期限、裁判所提出書類の期日など、とにかくカレンダーとのにらめっこ。そんな日々の中で、恋愛という不確かで予測不能な感情を受け入れる余白はどんどん削られていきました。恋をしている暇があれば、少しでも早く案件を片付けたい。そう思っているうちに、恋愛はどこか遠くの国の話になってしまいました。
感情を置き去りにしたまま年だけ重ねた
年を取るというのは、単に体力が落ちるだけでなく、感情の起伏すらも鈍くなることなんだと最近よく思います。若い頃に比べて、喜怒哀楽が小さくまとまってきてしまっている。失敗しても、成功しても、心が大きく動かない。そんな中で、恋愛のような劇的な感情の動きを思い出すのが難しくなってきました。何より、自分の気持ちにすら鈍感になってきているのかもしれません。感情を置き去りにしてきたツケが、今の自分を形づくっている気がします。
出会いがないと言いながら誰にも会わない生活
よく「出会いがない」とぼやく人がいますが、私の場合、それ以前に「誰にも会っていない」んです。家と事務所と法務局を往復するだけの生活では、そもそも新しい人間関係が生まれる余地がありません。事務員とは最低限の業務連絡、依頼人とは法律的なやり取りのみ。そんな日々の中で、恋愛なんて自然発生するはずもなく、ただただ時間が過ぎていくだけです。
事務所と法務局とコンビニの往復
私の一日は、事務所で始まり、法務局に行き、コンビニで弁当を買って終わります。これに誰かと食事をする時間が加わることはほとんどありません。どこかで「誰かと一緒に食事をしても落ち着かない」という感覚が自分の中に染みついてしまったんでしょう。外で人と会うこと自体が億劫になっていて、出会いを遠ざけているのは自分自身なのかもしれません。そうやって、また一人の夜が増えていきます。
画面越しの連絡では誰ともつながらない
一応、LINEやメールは使っています。でも、連絡を取るのはほとんどが依頼人や業者の方ばかり。画面越しのやり取りに慣れすぎて、人と直接話すことの重みを忘れてしまいそうです。たまに誰かと会っても、どこかよそよそしくなってしまって会話が続かない。気の利いたことも言えず、ただニコニコしてその場をやり過ごすだけ。「自分を出す」という行為が、今やとても怖く感じてしまうのです。
誰かと話すことすら億劫になる自分
ある日、昔の友人から飲み会の誘いがありました。でも、仕事を理由に断ってしまった。正直に言えば、行くのが面倒だったんです。たわいもない話をするエネルギーすら湧いてこない。それって人として、けっこう危ない兆候だと思うんですよね。孤独を受け入れすぎて、誰かと過ごすことが煩わしくなってしまう。このままじゃダメだと思っても、気力が湧かないまま夜だけが過ぎていきます。
孤独が日常になっていることの怖さ
気がつけば、孤独であることに違和感を抱かなくなっていました。むしろ一人でいるほうが楽、とさえ思う瞬間もある。でも、それは本当に“楽”なんでしょうか。自分を守るために築いた壁の中で、知らぬ間に心が萎縮しているだけかもしれません。孤独が常態化すると、自分の存在価値まで薄れていくような気がしてきます。このまま誰にも必要とされずに老いていくのか、そんな不安がふと胸をよぎる夜もあります。