朝の始まりからもう押しつぶされそう
朝、目覚まし時計に叩き起こされる瞬間からすでに心が重い。開業して20年、毎日似たような繰り返しの中で、やらなければならないことが少しずつ蓄積していく。事務所に入ると、机の上には前日手をつけられなかった書類が山積み。片付けても片付けても増えていく案件に、「今日こそ終わらせるぞ」と意気込んでも、電話一本で予定は崩れる。たまに「これ、俺しかやる人いないのか?」なんて独り言が出る。朝一番でため息が出るような仕事、これをあと何十年続けるのかと考えると、正直うんざりする。
机に積まれた書類の山が一日の景色
午前9時、パソコンを立ち上げ、登記簿を開く頃にはすでに3件の電話を終えている。依頼人は急ぎの案件だと言い、法務局からは補正の電話が入り、事務員さんは別件対応で席を外している。そんなとき、目の前にある書類の山がまるで「お前の責任だぞ」と言ってくるような気さえする。積んだのは自分なんだけど、それでも、書類の束が人格を持って攻めてくる感覚に陥る。「一件ずつ丁寧にやればいい」って、そりゃ理屈ではそうだ。でも現実には、同時並行で進めないと回らない。それが今の司法書士の仕事の現実だ。
一件ごとの重みがズシリとくる
どの書類も、それぞれ一人の人生が関わっている。登記変更、相続登記、抵当権の抹消…。内容はバラバラだけど、間違えば責任が重い。それを一つひとつ、目を皿にしてチェックする。元野球部だったころは「数をこなせば慣れる」と思ってた。でもこの仕事、慣れたころが一番怖い。ミスは慣れた頃にやってくる。だからこそ、一件ずつ慎重にやる。でも慎重にやると、どんどん時間がなくなる。ジレンマの連続だ。
たかが登記されど登記のプレッシャー
たまに周囲から「登記って紙に書くだけでしょ?簡単そう」と言われる。確かに、そう見えるかもしれない。でも、その裏には期限や信頼や責任が全部のしかかっている。法務局に補正食らって夜中まで悩んだ日もあったし、依頼人に怒鳴られたこともある。人間関係、期限、完了後のプレッシャー…。たかが登記、されど登記。もう何度も心の中でそうつぶやいている。
誰にも頼れない現実と独り言の多さ
独立した時は「自由だ」と思った。でも現実は、責任を全部一人で背負うということだった。電話応対、登記、面談、相談…。事務員さんがいてくれて本当にありがたいけれど、さすがに全部任せるわけにもいかない。気づいたら、「うーん」とか「マジかよ…」とか、独り言ばかり増えている。事務所にカメラがあったら、きっと変な人に見えると思う。
事務員さんがいてくれるだけで救いだけど
今の事務員さんは真面目でよく動いてくれる。彼女が来てから、事務所の空気が少し柔らかくなったのは間違いない。でも、当然ながら全てを理解してくれるわけではないし、そもそも僕が何を悩んでるかを話す余裕もない日が多い。「今日の件どうでした?」と声をかけられても、頭が疲れすぎていて返事すら億劫になる。頼れる存在がいるのに、頼る体力も残っていないというのが、いちばん情けない。
休まれると一気に崩れる作業バランス
一度、事務員さんがインフルエンザで一週間休んだことがあった。たった一週間、されど一週間。コピー、電話応対、郵送、ファイル管理…日常のルーチンが一気に回らなくなった。お客様には「対応が遅い」と怒られるし、自分は寝る間も惜しんで業務を回す始末。人が一人いなくなるだけでこんなにも崩れるのかと、恐ろしくなった。事務所というのは、人間一人の支えがいかに大きいかを痛感させられる場所でもある。
昼休みも結局は仕事の延長線上
昼になったからといって、業務が終わるわけでも頭が切り替わるわけでもない。むしろ、お客様の電話が昼休みに集中したり、郵便物の確認をしたりして、休めた気がしない。うどん一杯を食べる時間すら、スマホを片手に取引先に返信している。昼休みがあることになっているだけで、実質的には仕事の延長線上にいる。誰にも文句は言われないけど、誰にも守ってもらえない、そんな時間。
そばをすする横でお客様からの電話
ある日、コンビニで買ったざるそばを事務所で食べていたら、鳴る電話。仕方なく口にそばを入れたまま対応する。相手は急ぎの依頼人で、こちらがそばをすする音にイラついたのか、ちょっと不機嫌な対応になった。悪いのはこちらだが、「昼くらいは…」という気持ちが募る。電話を切ってから、ぬるくなったそばを見て、なんだか情けなくなった。「俺、何してんだろう」って、心から思った瞬間だった。
つかの間の一人時間すら落ち着かない
最近では、昼に誰とも会話せず一人で外に出ることが癒しの時間になっている。でも、外に出てもつい事務所のことが気になって、スマホを何度も見てしまう。「何かトラブル起きてないかな」「メール返さなきゃ」と、完全には心が休まらない。頭の中には常にToDoリストが浮かんでいて、結局その場でも仕事のことを考えてしまう。たった30分でも、心の底から「休んだ」と言える昼休みが欲しい。
孤独な夜に自分だけ取り残された気持ち
仕事が終わって帰る頃には、外はもう真っ暗。コンビニ弁当を片手に自宅に戻ると、誰もいない静けさが待っている。テレビもつけず、ただ座ってボーッとする時間が続く。「俺、これでいいのかな」と思いながら、スマホで野球の結果を眺める。元野球部のくせに、今じゃ体もなまりっぱなし。結婚?誰とも出会わないし、出会ったところで何を話せばいいのかもわからない。そんな夜を、何年も過ごしている。
仕事はしてるのに評価されてる気がしない
日中はあれだけ動いて、細かい確認もして、トラブルも対応してる。それなのに、「ありがとう」と言ってもらえることは少ない。ミスしたときだけ怒られる。目立たず、でも責任は重い。司法書士の仕事は、まさに縁の下の力持ち。それでも心のどこかで「誰かにちゃんと見ててほしい」と思ってしまう。自分の努力を認めてもらいたい、でもそれは甘えなのか、と考え出すと、眠れなくなる夜もある。
結婚どころか誰かと食事もご無沙汰
「一人で生きる覚悟はあるか?」と自問したことがある。でも、答えは出なかった。誰かと食事をすることすら、もう何カ月もない。忙しいことを言い訳にしているけど、本当は誰かと向き合う勇気がないのかもしれない。仕事ばかりしてきたせいで、他人との距離感がわからなくなっている気がする。気づけば、会話の相手がクライアントか役所の人ばかりだ。
それでも明日はやってくる
どれだけ疲れていても、朝はやってくる。目覚ましが鳴り、また同じ一日が始まる。それでも、不思議と体は動く。誰かのためになる仕事だからこそ、続けているのかもしれない。理想とは違っても、今の自分ができることを、今日もやるしかない。やってもやっても終わらない日々の中で、少しだけ立ち止まり、また歩き出す。それが今の僕の、生き方なんだと思う。