この業界まだまだアナログです

この業界まだまだアナログです

この業界まだまだアナログです

司法書士業界に足を踏み入れて20年近くになりますが、いまだに「この業界、時が止まっているのでは」と思う瞬間が何度もあります。紙の書類、電話連絡、FAX…デジタル化が声高に叫ばれて久しいのに、我々の日常はどこか懐かしさすら感じるアナログの世界。便利そうなツールを見つけても「でも慣れてるから…」で結局手を出さない。そんな自分も変わらずアナログ人間。時代の波に取り残されつつある感覚を、そっと吐き出してみようと思います。

デジタル化は誰かがやるものと思っていた

なんとなく「誰かがやってくれるだろう」と思っていたんですよ。電子申請の流れも、最初の頃は「都会の大手だけの話」と他人事で見ていた。実際にウチみたいな小さな事務所では、システム導入するにもお金も時間も足りない。気づけば「慣れてるし、別に不便じゃない」と、自分で自分に言い訳をしていた。だけどあるとき、若い依頼者から「PDFで送ってください」って言われて言葉に詰まった。あ、これはまずいなって。

タイムカードも手書きのまま

事務員さんの出勤管理も、いまだに紙のタイムカードです。出勤・退勤の時間を書くだけの簡単なもの。でも、記入漏れがあったり、読み取りづらかったり、月末の集計でこっちが悩むこともしばしば。以前「スマホで打刻できるアプリありますよ」と教えてもらったけど、「設定が面倒くさそう」と見送ってしまった。導入すれば楽になるのはわかってる。でもやらない。ここがもう“アナログ沼”の深みですね。

業務フローは頭の中と紙ファイル

業務の進捗は頭の中と机上の紙の山で管理しています。「あの書類は今どこ?」と聞かれると、「あー、あのファイルの3枚目くらい」と感覚で答える感じ。整理が得意な人なら紙でもいけるんでしょうけど、自分は苦手。事務員さんが休みのときなんて、探し物ばかりで午前中が潰れます。Googleカレンダーすら使ってないのに、よくここまで業務が回っているな…と我ながら思います。

新しいものに構える心理的ハードル

一番の問題はこれかもしれません。「新しいものは怖い」。いや、本当はそこまで難しくないのかもしれない。でも、設定画面を開くだけで疲れるんです。「アカウントを作って…」とか、「メール認証をして…」の時点で、もう頭の中が「明日にしよう」になる。野球部の時のように根性で乗り越えるべきなんだろうけど、なぜかパソコンの前では気力が続かない。苦手意識は厄介ですね。

いまだにFAXが現役で活躍している

もう令和なのに、いまだにFAXがフル稼働。信じられないかもしれませんが、本当に「明日の登記資料FAXでお願いします」なんてやりとりが日常です。スキャンしてPDFを送れば一発なのに、相手がFAXを指定してくることも多い。そうなると、こちらもFAXで返すしかない。結果、壊れかけのFAX複合機がいまだに大事な相棒です。

電話とFAXが連携プレー

ときどきこんなことがあります。「今FAX送りました。確認お願いします」って電話が鳴る。いや、だったらメールで一通送ってくれた方が早いんじゃ?と思うんだけど、相手も「うちはFAXしかないので」と譲らない。結局、電話で確認して、FAX見て、返答もまた電話。もはや“儀式”ですよ。これを効率的にしようという空気が業界全体にないのも問題かもしれません。

PDFじゃダメと言われる虚無感

「PDF送りますね」と言ったら、「うちは開けないから紙で送って」と言われたことがあります。送ってみたら「文字が小さくて読めない」とクレーム。だったら最初から郵送しておけばよかった…。こういうことが続くと、「PDFって本当に便利なのか?」と疑いたくなってきます。自分のせいじゃないけど、何だか責められてる気がするあの感覚、わかる方いませんか。

紙文化の根は意外に深い

結局、根っこの文化が「紙ありき」なんです。手書きで、印鑑押して、郵送して…という流れに安心感を持っている人が多い。電子署名もあるのに、「やっぱり印鑑がないと不安」と言われる。たしかに、紙だと「やった感」はあります。でも、その感覚に縛られて効率が落ちてるのも事実。どこかで断ち切らないと、未来は来ない気がします。

それでも一歩踏み出した話

そんな私でも、少しだけですがデジタルに手を出してみました。最初に取り組んだのはExcelで作る簡単な進捗管理表。ネットで調べてテンプレートをダウンロードして、ちょっとだけ自分でカスタマイズしてみました。すると、紙のメモ探しに使っていた時間がなくなって、事務員さんとの共有もスムーズに。小さな一歩かもしれませんが、自分にとっては大きな進歩です。

小さなExcelテンプレート導入から

最初は本当に怖かったんです。「壊したらどうしよう」「消えたらどうしよう」って。でも思い切って使ってみたら、案外何とかなる。完璧を求めず、「最低限わかればいい」というスタンスが気持ちを楽にしました。Excelのセルを色分けして、日付を入れるだけでも、視覚的に楽。なぜもっと早くやらなかったんだろうと、少し後悔しています。

業務がちょっと楽になっただけで涙が出た

この歳になると、新しいことを覚えるのは本当に大変。でも、ほんの少し業務が効率化されただけで、「なんだ、こんなに変わるのか」と感動してしまいました。事務員さんからも「これいいですね」と言われて、ちょっと誇らしい気分に。そういう些細な変化が、日々のモチベーションに繋がるんだなと実感しました。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。