切り替え下手な毎日に気づいた瞬間
ふとした瞬間に「あれ、今仕事のこと考えてるな」と思うことがある。夕飯を食べていても、テレビを見ていても、どこか心が事務所に置き去りになっている感じがする。司法書士という仕事は、気を抜くと大事なミスに繋がる。だからこそ常に気を張っていたい気持ちもあるが、それが心の余白を奪っていることに気づいたのは、ある意味ショックだった。
夕飯の味がしない夜
仕事帰りにスーパーで買った総菜を温めて、一人で食べる夜。箸は動いているのに、味がしない。そんな経験、何度もある。頭の中では、明日の登記の段取り、依頼者の言い回しの意味、不動産業者とのやりとりがグルグルしている。食事はただの作業になり、栄養を摂っている感覚もない。せっかくの「プライベートな時間」が、仕事に侵食されている。
スマホの通知が脳に残る
LINEやメールで業者や依頼者からのメッセージが届くと、つい反応してしまう。返信しないと落ち着かないし、未読のまま寝ることもできない。結果、ベッドに入っても通知の内容が頭に残って眠れなくなる。翌朝の起床時間を気にして目覚ましを2つセットしながら、「もう何やってんだろうな」とため息をつく。
気づけば業務のことを考えていた
休日に近くの温泉に行っても、露天風呂に浸かりながら「あの書類、提出期限大丈夫かな?」と考えてしまう。せっかくのオフが台無しだ。自分の頭の中に“オフ”という概念がないのかと疑いたくなるほど。どこにいても、仕事が頭の片隅に居座っている。気を抜くと、勝手に頭が業務モードになる。これはもう職業病かもしれない。
切り替えがうまい人への嫉妬
周囲には、仕事とプライベートをきっちり分けられている人がいる。そういう人を見ると、正直羨ましい。いや、嫉妬に近い感情だ。なぜ自分はこうもうまく切り替えられないのか、考えても答えは出ない。きっと性格の問題なんだろうと、納得したふりをして毎日をやり過ごしている。
家族持ちの同業者がまぶしい
ある研修会で同業の先生が「土日は娘と釣りですよ」と笑っていた。仕事の話が一切出ないのも印象的だった。家庭があると、意識がそっちに向くんだろうか。独身の自分にはその感覚がわからない。きっと家族がいれば、強制的に“オフ”が訪れるのだろう。ひとり身だと、誰にも止められないぶん、ずっと“オン”でい続けてしまう。
子どもの話にちゃんと笑えてる人
近所の司法書士仲間が「この前、息子が…」と話してくれる時のあの笑顔。全然違う。どこか柔らかくて、安心している雰囲気がある。自分は笑顔を見せていても、どこか顔が引きつっている気がする。子どもの話題なんてもちろんないし、何より日常に“笑える余白”がない。それを痛感するたびに、自分の硬さに情けなくなる。
なぜ自分は切り替えられないのか
自分は性格的に真面目すぎるのかもしれない。いや、ただ不器用なだけか。完璧を目指してしまうくせに、気持ちの切り替えは下手。やるべきことを忘れるのが怖いから、いつまでも引きずってしまう。そうして疲弊して、結局何も楽しめていない。真面目が裏目に出るとは、まさにこのことだ。
無理に頑張らない切り替え方の模索
あるとき、「切り替え上手になるにはどうしたらいいか」と考えてみた。でも、すぐには答えなんて出なかった。ただ、少しずつ「無理に切り替えようとしない」ことから始めるのがいい気がしている。完璧をやめる、小さなことから変える。それが自分に合っている気がした。
まず机の上をリセットしてみる
退勤時に机の上を片づけて、パソコンの電源を落とす。それだけで、気持ちが区切られるような気がした。最初は意識してやっていたが、だんだんと習慣になってきた。机の上が散らかっていると、頭の中までざわざわしてくる。逆に整理されていれば、翌朝の気持ちも違う。小さなことだけど、心の切り替えスイッチになる。
コーヒー一杯の時間を区切りにする
退勤後に事務所近くの喫茶店でコーヒーを飲むようになった。スマホを見ない時間を意識して作る。最初は落ち着かなかったが、今ではその時間が一番リラックスしているかもしれない。「仕事が終わった」という実感を持てるだけで、家に帰ってからの気持ちの切り替えが少しだけ楽になる。
事務所の明かりを早めに落とす勇気
昔は夜遅くまで明かりをつけていた。「頑張ってる感」が欲しかったのかもしれない。でも今は、意識して18時には消すようにしている。たとえ作業が残っていても、明かりを消すと「今日は終わりだ」と思える。周囲の目より、自分の切り替えを優先する。そんな勇気も必要だと思うようになった。