今日は書類の山と格闘した日

今日は書類の山と格闘した日

朝から机が見えない日

朝、事務所のドアを開けた瞬間、すでにうんざりする。書類が積み重なった自分の机。山と化した紙の束に、どこにパソコンのキーボードがあるのかもわからない。昨日の夕方、疲れ果てて机の上を片付けずに帰ったツケが、朝一番で襲いかかってくる。司法書士という仕事柄、書類との付き合いは避けられないけれど、今日はその量が尋常じゃなかった。

出社した瞬間に心が折れる

誰もいない静かな朝の事務所。なのに、自分の心の中では「帰りたい」の声がこだましていた。机の上には登記関係、相続関係、成年後見、さらには契約書の下書きと、カテゴリ別の書類が混在して積まれている。どこから手をつければいいのか、それすら判断できない。頭の中はすでにオーバーヒートしていた。

書類の山に埋もれたデスク

一枚一枚は軽いはずの紙が、こうして積もるとプレッシャーの塊になる。机の上の紙の山は、まるで「今日一日じゃ終わらないだろう」と嘲笑っているかのようだ。背もたれに寄りかかる暇もなく、気づけば姿勢は前傾、目は細まり、肩がピクピクと痙攣している。人間って、こんなにすぐ疲れる生き物だったっけ。

昨日の自分を恨みたくなる瞬間

昨日の自分が、「明日やればいいや」と思って積み上げた結果が、今朝の自分を苦しめている。こういう日は毎回「ちゃんと片付けてから帰ろう」と心に誓うのに、翌日にはまた裏切る。その繰り返しに嫌気がさしながらも、もう一人の自分が「で、今日もどうせ同じこと繰り返すんだろ?」と笑っている。

「どこから手をつければいいのか問題」

優先順位をつける余裕もないほど、全ての案件が「今すぐ対応」になっている。急ぎの案件ほど目に入らない場所に置いてあって、焦れば焦るほど効率が落ちる。机の上のカオスを目の前にして、何度も深呼吸しては、なぜこの職業を選んだのか自問自答する時間が増えていく。

優先順位が全部「最優先」

顧客にとっては、自分の案件が一番大事。それは分かっている。でも、こちらとしては「5件同時に火を吹いてるんですが…」という状態。それでも誰にも弱音を吐けず、ひたすら目の前の紙と向き合うしかない。どの書類から手を出しても、他の書類が睨んでくるような気がしてくる。

電話のベルが容赦なく邪魔してくる

ようやく集中できたと思った瞬間に、鳴り響く電話。しかも「ちょっと聞きたいことがあって…」という相談が多い。気軽な質問の裏には、案外大きな手続きが隠れていて、また書類が増える。電話を切ったあとに残るのは、手を止められた焦りと、書類の山がさらに育った現実だ。

事務員さんのひと言に救われる

そんな殺伐とした空気の中、唯一の救いがあるとすれば、それは事務員さんの一言。ふと声をかけられた瞬間、張り詰めていた神経が少しだけ緩む。小さな言葉が、戦場のような事務所に一瞬の平和をもたらす。

「先生、これは明日でもいいですよ」

たったその一言が、どれだけ心を軽くするか。仕事量は減っていないのに、誰かが「今日じゃなくてもいい」と言ってくれるだけで、プレッシャーの質が変わる。人に頼るのが下手な性格だからこそ、こういう声がどれほど有難いかが身にしみる。

そのひと言がどれほど救いになるか

まるで、「あなた一人で抱え込まなくていいですよ」と言われているようで、思わず涙が出そうになる。実際、抱え込んでいるのは自分の勝手で、もっと人に頼ればいいのに、どこかで「司法書士はこうあるべき」と思い込んでいた。誰かの優しさで、その思い込みも少しずつ溶けていく。

結局は全部今日中にやる羽目になるんだけど

でも結局、気になって手を出してしまうのが自分の性分。明日に回すと言われた書類も、気づけば片付けていた。損な性格だと思うけれど、誰かに喜んでもらえるなら、それも悪くない…と、自己肯定をなんとか捻り出して自分を保っている。

ふと我に返ると外は真っ暗

時計を見れば、すでに19時を回っている。もう夕方どころか、すっかり夜だ。書類との格闘はまだ終わっていないけれど、ひとまず山の形が少し平らになってきた。ふと窓の外を見ると、街灯がぽつんと光っていて、「今日も頑張ったな」と誰かが言ってくれているような気がした。

今日もまた終電にはならないけど

終電ギリギリまで働くことも、かつては多かった。でも最近は、そこまで頑張る体力も気力も減ってきた。それが悪いことなのか、良いことなのかはわからないけれど、無理せずにやっていくのもまた一つのやり方なのかもしれないと思えるようになった。

終電じゃないことが救いに思えてくる感覚

「今日はまだ終電前に帰れるな」と思えるようになった時、自分も少し変わったのかもしれない。昔なら「まだやれる」と意地を張っていたけれど、今は「ちゃんと寝よう」と思える。睡眠の大切さを、40代にしてようやく実感している。

事務所に響くキーボードの音だけ

事務員さんが帰った後の静かな事務所。カタカタと響くキーボードの音だけが、空間を支配している。書類の山と格闘した一日を振り返りながら、少しだけ達成感を噛みしめる。そしてまた明日も、同じような一日が待っているのだろうけど、今日の自分に「よくやった」と心の中でつぶやいた。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。