一日一愚痴で乗り切る司法書士の日々

一日一愚痴で乗り切る司法書士の日々

一日一愚痴で乗り切る司法書士の日々

司法書士という仕事は、表から見れば「安定している」「先生と呼ばれる仕事」と思われがちですが、実際のところは地味で孤独な戦いの連続です。地方で一人事務所を構えて十数年。最近は「一日一愚痴」をこぼしながら、なんとかバランスを取って日々を回しています。笑ってごまかすこともあるけれど、心の中にはいくつもの小さなため息が積もっています。この記事では、そんな日常を少しでも共感や安心に変えてもらえたらと思い、日々の出来事を綴ります。

朝から気が重いそれでも事務所は開けなきゃならない

朝起きた瞬間から、すでに「今日もしんどそうだな」と思う日があります。天気が悪いわけでもなく、体調が悪いわけでもない。ただただ、やらなければいけないことが多すぎるのです。開業してからというもの、寝ても覚めても仕事のことが頭から離れません。しかも田舎では司法書士の数が限られているため、相談の範囲も広く、登記だけでなく相続や裁判所関係の業務まで一人で抱えることになります。出勤前に鏡を見ながら、軽くため息をつくのが日課になっています。

事務員さんの「おはよう」で救われる日

そんな中でも、たった一人の事務員さんの存在は救いです。「おはようございます」と言われただけで、心がふっと軽くなる朝もあります。彼女はあまり余計なことを言わないタイプですが、それが逆にありがたい。こちらが忙しそうにしていれば黙って書類をさばき、困っていればさっと気づいて声をかけてくれます。感謝を伝えたいけれど、あまり口にすると気恥ずかしいのもあって、つい無言のままコーヒーを渡したりしてしまいます。

でも本音を言えば休みたい朝がほとんど

本音を言えば、週に一度くらいは「今日は休みます」と言いたいです。でもそうもいかないのがこの仕事。予約も入っていれば、登記の期限もある。やりがいもあるけれど、精神的な消耗も大きい。そんな中で、誰にも迷惑をかけずに愚痴をこぼす場所があればいいのにと思うことが増えました。SNSに書くわけにもいかないし、同業者に言えば「それくらい当然」と返ってくるのがオチ。だからこそ、ひとり朝のコーヒーに向かって「ふぅ、やれやれ」とつぶやいています。

電話のベルにびくびくする毎日

事務所に鳴り響く電話のベルの音。正直なところ、いまだに少しびくっとします。特に何件も抱えているときに限って、急ぎの案件や、想定外の相談が飛び込んできます。着信を見るたびに、心の中では「お願いだから今じゃないでくれ」と祈っているのが実情です。とはいえ、それも仕事の一部。逃げられない現実です。

クレームかと思ったらただの確認でホッとする

電話の内容が、こちらのミスやクレームではなく、「ちょっと確認したいんですが」といった程度だと、それだけでホッとします。人間って単純なもので、怒られてないだけで救われた気になる。逆に、何でもないやり取りの中に「先生、いつもありがとうございます」と一言でも添えられていたら、その日一日がなんとか回る気がします。

時々あるありがとうの一言にやたらと弱い自分

クライアントからの「ありがとう」の一言って、本当に大きいんです。それだけで、「やってて良かった」と心から思えます。毎日が感謝されるわけじゃないけれど、月に数回でも「本当に助かりました」と言われれば、それだけで数日分の愚痴が帳消しになるから不思議です。愚痴りながらも、この一言をもらえるから続けられているのかもしれません。

予定通りにいかないそれが仕事

一日の予定を立てても、その通りに進んだ試しがありません。午前中に処理しようと思っていた書類が、結局夕方まで手を付けられなかったり、午後の面談が前倒しで急に来たり。誰も悪くないのは分かっているんですが、予定が崩れるとやっぱりしんどい。段取り命の司法書士としては、精神的にきます。

依頼人の都合と登記の締切に挟まれる地獄

「来週でいいですよ」と言われた案件に限って、法務局のシステムが一時停止していたり、登記の添付書類が足りなかったりでギリギリになる。依頼人には事情を説明しても、「え、間に合わないんですか?」と怪訝な顔をされる。いや、こっちも頑張ってますってば…と言いたくなるのをぐっとこらえる日々です。

ご飯を食べる時間も削ってるのに誰も気づかない

昼ごはんもろくに食べられない日、ざらにあります。コンビニおにぎりをかじりながら、登記原因証明情報を見直すような毎日。それでも「司法書士さんって暇そうですね」と言われたりすると、さすがにちょっと堪えます。忙しさって、外からじゃなかなか伝わらないものなんだと、つくづく感じます。

それでもこの仕事を辞めない理由

毎日毎日しんどい。でも、やっぱり辞めようとは思わないんです。しんどい中にも、一瞬の報われる瞬間がある。誰かの役に立てたという実感。顔も知らない依頼人が、書類を受け取って「本当に助かりました」と言ってくれる。その時だけは、「この仕事を選んでよかったな」と思えるから不思議です。

困ってる人にありがとうと言われる重み

中には本当にどうしようもなく困って、誰にも相談できずに来られる方もいます。そんな方に寄り添って、少しでも状況が良くなれば、という気持ちで動くと、自然とこちらも真剣になる。そこから感謝の言葉をもらえると、やはり重みが違います。愚痴をこぼしながらでも、続ける価値があると再確認します。

一人でやってるからこそ味わえる達成感

最後に残るのは、「自分一人でやりきった」という感覚です。もちろんチームで支え合う仕事も素晴らしい。でも、孤独な分だけ、乗り越えた時の満足感もひとしお。自分で事務所を回して、自分の責任で仕事を完結させる。これは、大変だけど、やっぱりやりがいのある生き方です。

一日一愚痴でも続けられるならそれでいい

今の私は、完璧な働き方をしているわけでも、理想の人生を送っているわけでもありません。だけど、「今日もなんとかやった」と思える日が、週に4日くらいあれば十分だと思ってます。一日一愚痴。それでも前に進めているなら、それでいいじゃないか。そんな気持ちで、明日もまた机に向かおうと思っています。

愚痴は弱さじゃなくて心の防波堤

「愚痴ばかり言ってちゃだめだよ」と言われたことがあります。でも、愚痴を我慢して爆発するよりも、少しずつ吐き出してバランスを取る方が、よほど健康的だと思います。弱音を吐けるのは、頑張っている証拠。司法書士に限らず、どんな仕事でも同じじゃないでしょうか。

司法書士も人間です誰かに聞いてほしいだけ

ただ、誰かに聞いてもらえるだけで、救われることがあります。別にアドバイスが欲しいわけでもない。ただ、「ああ、それ分かる」と言ってもらえたら、それで少し楽になります。このコラムが、そんな共感のきっかけになれば幸いです。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。