開業10年独身10年それでもなんとかやってます

開業10年独身10年それでもなんとかやってます

開業10年と独身10年に共通するもの

気づけば10年。事務所を開いた年と、恋愛から遠ざかった年が重なるとは、そのときは思いもしなかった。がむしゃらに仕事を覚え、顧客を増やすことに必死だった日々。気づいたら、「誰かと出かける」という習慣すらなくなっていた。仕事も私生活も、ある意味で自分一人でなんとか回るようになってしまった。そして今、ふと立ち止まると「10年」という区切りの数字が、やけに重く響いてくる。

気づけば積み上がっていた10年

最初の3年は、ほんとうに必死だった。顧客ゼロ、知名度ゼロ、信頼も実績もゼロ。すべて自分で手探りで始め、どうにかして依頼をもらい、失敗せずにこなして…その繰り返し。気づけば365日働いているような感覚で、土日も関係なかった。そんな生活の中で、恋愛とか、誰かと食事をすること自体、頭から抜けていった。

仕事の10年はなんとか形になった

少しずつ紹介が増え、顧客が定着し、事務員も雇えるようになった。年数とともに「先生」と呼ばれる機会も増え、地域の中での立場もできてきた。だが、形だけは整ってきたけれど、いつもどこかで「このままでいいのか?」という思いが引っかかっていた。仕事の成果は目に見える。でも、心の満足感は数値化できない。

プライベートの10年は完全に空白

仕事をして、飯を食って、風呂入って寝る。それを10年繰り返してきた。たまに飲みに行く友人もいたけれど、皆家庭を持ち、誘いは減り、今や年賀状のやり取りくらいになった。土曜の夜に一人でコンビニ飯を食べていると、「この10年、何してきたんだろう」と思うことがある。仕事に逃げていたのかもしれない。

地方の司法書士という選択

都会の喧騒が苦手で、地元で開業することを選んだ。通勤もないし、地域の人とも顔なじみになりやすい。人間関係は濃いけれど、裏を返せば、それが閉鎖的でもある。新しい出会いなんて、日常にはまずない。自分で動かなきゃ始まらない…そんな当たり前のことに、気づいたときには歳を取っていた。

都会に出なかったことの良し悪し

地価が安く、固定費も抑えられたことは開業にはプラスだった。競合もそれほど多くなく、丁寧な仕事をすれば信頼は得られる。ただ、情報も人の流れも少ない。新しいことを始めようとしたとき、それを後押ししてくれる刺激が少ない。異性との出会いに関しても、それは顕著だった。選んだのは自分だが、代償もある。

人との距離は近いが出会いは遠い

田舎では人間関係が濃い。良くも悪くも顔が広がる。そのぶん、誰と誰が付き合っている、別れた、そんな話もすぐ広まる。恋愛において、それは時にストレスだった。誰かと会っても、「噂されたら面倒だ」と感じてしまい、自分から距離を置いてしまう。悪循環だとわかっていながら、踏み出せない。

地元だからできたこと地元だから苦しいこと

地域密着というスタイルで事務所は安定している。高齢者の相談も多く、ありがたみを感じる一方で、プライベートの変化は乏しい。何か新しい世界に触れる機会が少ないから、感情も動きにくくなっていく。便利さと人の流れがある都会に対して、羨ましさを感じることもあるが、今さら移る気力もない。

仕事は忙しいけれどそれが言い訳になる

「忙しいから無理です」と言えば、大抵のことは断れる。婚活も、旅行も、趣味の時間も。だがそれは、逃げ道として使っていた気がする。やってみて傷つくのが怖くて、「忙しいから」で誤魔化していた。自分の感情に正直になるって、思っているより難しい。

「時間がない」は本当かもしれないけれど

確かに平日は依頼に追われ、休日は登記の書類整理や顧客対応が入ることもある。けれど、時間は自分で作るものだ。SNSで婚活している士業仲間を見ると、「あ、俺もやればできるかもな」と思うが、その一歩が踏み出せない。時間のせいにするのは、正直もうやめた方がいいのかもしれない。

何もしてこなかった10年間の言い訳

忙しさにかまけて、婚活アプリも見ず、紹介も断り、イベントにも出なかった。気づけば「一人が楽」というセリフが癖になっていた。それ、本心じゃなかったんだと思う。ただ面倒だったり、失敗が怖かったり、プライドだったり。そんな理由で10年も無駄にしてきたことに、最近やっと気づいた。

出会いの場に行く勇気すらなかったあの頃

周囲が次々と結婚していく中、「俺は仕事に生きる」と強がっていた。でも本音では、結婚式に呼ばれるたびに胸がざわついていた。笑って「独身貴族ですよ」なんて言いながら、内心では「このまま一人だったらどうしよう」と焦っていた。なのに、行動には移せなかった。その積み重ねが、今の自分をつくった。

これからの10年を考えるとき

45歳。これからの10年をどう生きるか、まさに今が分岐点だと思っている。仕事はこのまま続ける。けれど、私生活も少しずつでも動かしていきたい。大きな変化は無理でも、小さな一歩なら踏み出せるかもしれない。誰かと話す時間、趣味を始める時間、そんなささやかなことから始めていけたらと思う。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓