家族のような存在が欲しいと思った日

家族のような存在が欲しいと思った日

事務所に戻るたびに感じる「空っぽ」な空間

夕方、仕事を終えて事務所の戸を閉める。その瞬間の静けさがたまらなく寂しい。依頼者とのやり取り、法務局との書類確認、郵便物の処理…ひとつひとつはそれなりに意味のある仕事なのに、それが終わった途端、ふっと「俺、今なにしてるんだろうな」と空を見上げたくなる。仕事があるだけありがたいとは分かっていても、それだけじゃ埋まらない穴みたいなものが心にぽっかり空いているのを感じる。

帰って話す相手がいない夜の食卓

コンビニ弁当のフタを開けながらテレビをつける。BGM代わりのニュース番組が一日をなぞっていくけれど、誰かと「今日さ、こんな依頼があってさ」なんて会話をすることはない。電話もLINEも、仕事関係がほとんど。週に一度だけ事務員さんと交わす雑談が、いま一番心が緩む瞬間かもしれない。そんな状況に慣れてしまっている自分が少し怖くなる。

事務員さんとの関係に救われることもある

事務員さんは週3で来てくれている。書類の整理や電話対応、ちょっとした雑談。それだけなのに、彼女がいる日といない日では空気がまるで違う。人の気配があるだけでこんなに落ち着くのかと、改めて思い知る。彼女に「先生、最近疲れてます?」なんて言われると、妙にうれしくて少し元気が出る自分がいる。

仕事の愚痴も受け止めてくれる存在

書類の不備で法務局から戻された日、「またかよ」と思わず声が漏れた。そんなとき、事務員さんが「こういうの、ほんと理不尽ですよね」と相槌を打ってくれるだけで、救われた気がした。誰かに聞いてもらえるって、それだけで心が軽くなるもんなんだなと思った。

人とのつながりに飢えていたのかもしれない

「忙しいから恋愛なんて無理ですよ」と言い続けてきた。でも、それってただの言い訳だったんじゃないかと、最近思うようになった。誰かと一緒に時間を過ごしたい、ただ話をしたい、そんな思いがふと湧いてくる。こんな感情、自分には無縁だと思ってた。でも、現実は意外と正直だった。

同窓会で感じた「取り残された感」

数ヶ月前、地元の中学の同窓会に顔を出した。最初は気乗りしなかったけど、誘われて断れなかった。久しぶりに再会した同級生たちは、みんな家族の話ばかり。「うちの子がさ」「嫁さんがね」といった話題が飛び交い、なんだか別の世界の人たちみたいだった。自分だけ時が止まっているような、そんな気がしてならなかった。

元野球部仲間との温度差

当時の野球部仲間とも話した。昔は毎日一緒に汗を流していたけれど、今はお互い立場も家庭も違う。「たっちゃん、まだ独りか?」なんて軽く言われた一言に、内心グサッときた。「うるせぇ」と笑って返したけど、その夜はなんとなく寝つけなかった。

羨ましさと諦めの間で揺れる心

「あいつは勝ち組だな」なんて思いながらも、じゃあ自分がそうなりたいのかと聞かれると、素直にうなずけない。自由で気楽な生活を捨ててまで家族を持ちたいか、と言われれば答えに詰まる。でも心のどこかで「誰かにそばにいてほしい」と思ってしまう自分がいる。

「家族が欲しい」という気持ちの正体

それはきっと、誰かに自分の存在を認めてほしいという願望なんだと思う。「お疲れ様」と言ってくれる人、「ご飯できたよ」と声をかけてくれる人。そんな当たり前のようなことが、自分にはない。だからこそ、その当たり前に強く憧れる。司法書士としての誇りがあっても、人間としての寂しさは簡単には消えない。

仕事では得られない癒やし

依頼を無事に終えると、感謝の言葉をもらえる。でも、それはあくまで「仕事としての感謝」。自分自身を見てくれているわけじゃない。だから、仕事でどれだけ成功しても、心の奥の虚しさは埋まらない。癒やしは、誰かとの何気ない会話の中にしか存在しないのかもしれない。

孤独とうまく付き合っていくために

孤独を否定するのではなく、どう向き合うかを考える時期にきたのかもしれない。自分にとって必要な関係性とは何か。無理に結婚しようとするのではなく、小さくても誰かとつながる手段を探していく。それが、これからの人生を少しだけ明るくする方法なのかもしれない。

「ひとり」でいるけど「独り」ではないと思いたい

完全に独りぼっちだと思っていた。でも、事務員さんの存在、昔の友人、時々やりとりする依頼者、全部が自分を形作っている。ひとりで生きてるように見えても、実は誰かに支えられている。そのことに気づくだけで、ちょっとだけ心が温かくなる。そんな日も、悪くない。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓