毎日積み上がる判子待ち書類の現実
司法書士事務所を経営していると、判子を押す作業が日常の大半を占めるような日も珍しくない。僕の事務所は地方で細々と運営している小さなところだから、事務員も一人だけ。書類が積み上がり、デスクの上が富士山のようになっていることもよくある光景だ。判子を押すという一見シンプルな作業だが、実はとてつもなく責任を感じるものだ。間違えて押せばそれでアウト。僕自身、過去に一度印鑑の押し間違いをしたことがあり、手続きがやり直しになった経験がある。その時のことがトラウマになっているせいか、書類を見るたびに緊張感が走る。夜遅くまで仕事をしていると、判子の影がまるでモンスターのように僕を追い詰めてくる気がする。
判子ひとつが重く感じる瞬間
たった一つの判子なのに、なぜこんなにも重く感じるのだろうかと時々考える。以前、相続の手続きを担当したときのことだ。何度も何度も確認したはずなのに、押印直前に「本当にこれでいいのか?」という不安がこみ上げてきた。これを押すことで依頼人の人生が変わるかもしれない、と思うと手が震えてしまったことがある。僕のような地方の司法書士にとって、こうした緊張は日常茶飯事である。慣れればいいのに、逆に責任感が強くなってしまっている気がする。判子が紙面に触れる瞬間は、まるでホームランを打つ瞬間のようなプレッシャーだ。ただ、違うのはホームランのような爽快感はなく、ただひたすら肩に重みがのしかかるだけだ。
仕事は増えるが手は増えない
事務所の仕事量は年々増えているのに、対応できる人員は僕と事務員の二人だけ。この二人体制も正直限界に来ていると思う。新しく人を雇いたいと思うが、田舎なのでなかなか良い人材が集まらないのが現実だ。仕事を断る勇気もなく、受けた仕事は全力で対応する。その結果、睡眠時間が削られ、プライベートの時間もほぼない。家に帰っても、積み上がった書類のイメージが頭を離れない。少しでも余裕を持ちたいが、手が増えるどころか、ただひたすら疲労だけが増えていくような日々だ。
自分だけの責任がのしかかる不安
司法書士という仕事は、間違いやトラブルがあったとき、その責任がすべて自分に返ってくる。その事実が僕を孤独にさせる。先日も土地の登記手続きで書類の一部を誤って処理しそうになり、ヒヤッとしたことがあった。もし間違えていたら、クライアントからの信頼を失い、今まで築き上げてきた小さな事務所の信用も一瞬で崩れてしまっただろう。事務員が一人いるとはいえ、最終的に判子を押して判断するのは僕しかいない。これが僕の仕事の宿命なのだろうが、孤独感が日に日に増していくようだ。
プレッシャーで判子を押す手が震える時
人は緊張すると手が震えるというが、僕はまさにその典型的なタイプだ。特に重要な契約書や遺言状などに判子を押すとき、手の震えがどうしても止まらない。自分でも情けないと思うが、経験を積めば積むほど、このプレッシャーが増してしまっているのだ。以前、書類を持ち込んだ法務局の窓口で手が震えているのを見られ、「司法書士さん、大丈夫ですか?」と声をかけられた時には、本当に情けなくて顔から火が出る思いだった。司法書士という仕事は、孤独との闘いなのかもしれない。
人手不足の司法書士事務所のリアル
僕の事務所が抱える最も深刻な問題は人手不足だ。司法書士の資格を持つ人は地方に少なく、ましてや事務所の運営をサポートしてくれるスタッフとなると本当に希少だ。現在いる事務員は有能で頼りになるが、それでも手が足りないことが多い。特に業務が集中する月末などは、事務員も僕も疲労困憊だ。一人でも事務員が辞めてしまったら、即座に事務所の運営は困難になるだろう。仕事量が多くても、それに見合う人手が確保できない現実を、日々痛感している。
事務員一人ではカバーできない現実
現状、事務員が一人で担っている業務は驚くほど多岐にわたる。電話対応から書類作成の補助、法務局や役所への手続きの補助まで、何でもやってもらっている。正直、一人でこれだけこなしてもらっているのが申し訳なくなるほどだ。以前、事務員が風邪で休んだ日があり、その日は僕一人で事務所を回すことになった。電話は鳴り続け、来客は絶え間なく訪れ、その日だけで僕自身が倒れそうになった。事務員一人では限界があると痛感しながらも、人を増やす目処が立たないという現実に頭を抱えている。
優秀なスタッフが欲しいけど
優秀なスタッフが欲しいと常々思っているが、採用活動がうまくいった試しがない。求人を出しても応募者が少なく、地方という立地もありなかなか良い人が来てくれない。過去に面接を行ったとき、司法書士の仕事を説明すると応募者の顔色が変わり、その後辞退されたこともあった。正直、司法書士の業務は華やかさに欠けるし、プレッシャーや責任感も大きいから仕方ないと思うが、それでも仲間が欲しいと思わずにはいられない。
事務員の退職が怖すぎる
事務員が辞めることを想像するだけで怖くて仕方がない。彼女が退職すると事務所の運営は止まり、僕は全ての業務を一人でこなさなければならない。そんな日が来ないように日々気を遣いながらも、いつかその日が来るのではないかと恐れている。