閉ざされた簿冊と消えた男 閉ざされた簿冊と消えた男 冒頭の雨と一本の電話 旧い家屋の登記簿と沈黙 雨音が事務所の窓を叩く午後、一本の電話が沈黙を破った。 受話器越しの声は震えており、「祖父の土地のことで……」とだけ告げて切れた。 なんとも歯切れの悪い依頼だが、こうい... 2025.08.04
印紙が語った嘘の値段 印紙が語った嘘の値段 朝の来客と印紙の違和感 朝9時ちょうどに、事務所のドアが重々しく開いた。ひとりの中年男性が、やや神妙な面持ちで立っていた。手には黄色く日に焼けた封筒を持っていた。 「あの、亡くなった兄の遺産について相談がありまして……... 2025.08.04
登記簿にだけ現れる名前 登記簿にだけ現れる名前 依頼人はやってこなかった 昼過ぎから降り出した雨が、事務所のガラス窓をしつこく叩いている。 僕はポットから入れたばかりのぬるくなったコーヒーを啜りながら、薄暗い外をぼんやり眺めていた。 本来ならこの時間、予約をしてい... 2025.08.04
彼女が隠した最後の一人 彼女が隠した最後の一人 花束と涙の受付嬢 昼前、事務所に一輪の真紅の薔薇が届いた。差出人の名はなく、受け取ったのは近くの不動産屋で受付をしている若い女性だった。彼女はなぜか目を潤ませながら「ありがとうございます」とだけ呟いた。 その場に居合... 2025.08.04
抹茶の香りと焼きもちの謎 抹茶の香りと焼きもちの謎 朝の訪問者と抹茶の香り その朝、事務所にはかすかに抹茶の香りが漂っていた。来客の約束などなかったはずだが、扉の前には見慣れぬ紳士が立っていた。スーツはよれ気味で、手には古びた封筒。 「すみません、急ぎで相談したいこ... 2025.08.04
登記の裏側に潜む影 登記の裏側に潜む影 登記の裏側に潜む影 法務局から戻ってきた僕のデスクには、分厚い書類の束と、仏頂面のサトウさんが待ち構えていた。今日は一日中、登記済証の確認作業に追われるはずだったのだが、予定はいつも崩れる。それが司法書士という職業の定め... 2025.08.04
印鑑の下の殺意 印鑑の下の殺意 依頼人は午前九時にやってきた 封筒に入った合意書 蝉の声が喧しい夏の朝、事務所のドアがぎぃと音を立てて開いた。そこに立っていたのは、中年の女性。スーツの袖口からのぞく手首には、重たそうな数珠が巻かれていた。彼女は封筒を差し出... 2025.08.04
亡霊は地番に宿る 亡霊は地番に宿る 朝の事務所に舞い込んだ古びた登記簿 それは、くしゃくしゃに折れた茶封筒に入って届いた。差出人は不明。ただ、中には一冊の閉鎖登記簿の写しが入っていた。宛先はうちの事務所、司法書士シンドウ宛。 表紙には昭和39年と書かれ、見る... 2025.08.04
封印された名と司法書士の影 封印された名と司法書士の影 序章 戸籍の闇に浮かぶ泡 「なんだか変な相談が来てますよ」と、塩対応のサトウさんが書類を机に置いた。開いた戸籍謄本の端に、鉛筆で薄く書かれた跡があった。見慣れたはずの欄に、どこか違和感がある。 申請者の名は確かに... 2025.08.04
失踪依頼人と未完の委任状 失踪依頼人と未完の委任状 登場人物紹介 シンドウ:うっかりだが頼れる司法書士 地方都市で司法書士事務所を営む45歳。独身。元高校球児で肩だけはまだ壊れていないが、恋愛方面は壊滅状態。愚痴とネガティブ思考が口癖で、なぜか女性にモテない。だが仕... 2025.08.04
見えざる地番の影 見えざる地番の影 はじまりは一本の電話 朝のコーヒーに口をつけた瞬間、無機質な呼び出し音が事務所に響いた。受話器を取ると、聞き慣れない中年男性の声が響く。「先生、地図にない土地のことで相談したいんです」──いつもなら「法務局にどうぞ」と答え... 2025.08.04
連名の彼は知らない 連名の彼は知らない 朝の電話と見知らぬ依頼人 土曜の朝、事務所の電話が鳴った。出ると、名乗らぬ男の声がかすれている。「ちょっとだけでいいんです。契約書を見てほしい」。その言い方がどうにも妙だった。素性も話さず、内容もぼやけている。だが、こう... 2025.08.04
婚姻届の破片 婚姻届の破片 事件の始まり 破られた婚姻届 ある日のこと、シンドウの事務所に一人の男性が訪れた。彼は手に婚姻届を持っており、それが明らかに破れていた。『これをどうにかしてほしい』と頼まれたが、シンドウはその破れた部分がただの事故ではないこと... 2025.08.04
猫の口に入った真実 猫の口に入った真実 朝の来訪者と毛玉混じりの依頼 朝の9時。まだ珈琲も飲みきらないうちに、事務所のドアがバタンと開いた。 入ってきたのは、40代後半とおぼしき男性。片手にはキャリーケース、もう片手には明らかに場違いな猫用トイレ袋を提げていた... 2025.08.04
家族信託と嘘の契約 家族信託と嘘の契約 家族信託と嘘の契約 忙しい朝と一通の電話 朝のコーヒーに口をつける間もなく、事務所の電話が鳴った。昨日は深夜まで申請書のチェックで、まだ脳が働いていない。 受話器の向こうからは上品そうな老女の声がした。「家族信託の契約を... 2025.08.04