登記のことなら任せてほしいでも恋はずっと初心者

登記のことなら任せてほしいでも恋はずっと初心者

登記なら即答できるのに恋の返事はいつも後回し

司法書士としてのキャリアは20年。登記の相談を受ければ、答えに詰まることはまずありません。「それなら乙区に記載されてますよ」「ここは共有名義なので注意してください」と、事務的に的確に返せる自信があります。でも、いざ恋の話になると、もう全然ダメです。例えばLINEの返事ひとつにしても、考えすぎて1時間以上経ってしまう。しかも、結局送るのをやめる。そんなことがしょっちゅうです。仕事ではスピードが命だけど、恋愛では一歩も進めない。まるで別の人間のようです。

書類は整うが心の整理はうまくいかない

不動産登記では、「必要書類を整え、期日を守り、正確に処理する」ことが鉄則です。僕の得意分野でもあります。だけど、自分の感情となると話は別。過去に好きになった女性がいたのですが、相手が何気なく口にした言葉が気になってしまって、その後まったく会話ができなくなったことがありました。感情のフォルダがごちゃごちゃになっていて、どこにファイリングすればいいのかわからない。仕事では几帳面な性格が仇になって、恋愛では空回りしてしまうのかもしれません。

登記事項証明書に恋愛履歴が載ってたら楽なのに

「誰といつ出会って、何がきっかけで仲良くなったのか」「今どの程度の関係性なのか」「どんな感情があるのか」——そんなことが全部、登記事項証明書のように書面で明示されていたら、どれだけ楽かと思います。もし恋愛に「現在の登記状況」という項目があったら、自分の気持ちを見失わずに済むかもしれないし、相手の思いも誤解しないで済むのに。恋愛だけは、書類で明文化できないから難しい。相手の心を読み解く作業は、どんな登記業務よりも遥かに難解です。

自分の気持ちすら認証できないもどかしさ

僕たち司法書士は、登記申請書に添付された書類を確認し、その意思表示が真正かどうかを「認証」します。でも、自分の気持ちについては、何を持って真正と判断すればいいのか、まるでわかりません。好きだと思っていたけど、それは本当に恋だったのか、寂しさを埋めたいだけだったのか。いつも自問自答してしまいます。だから、一歩踏み出す勇気も持てない。自分の気持ちを認証できない人間が、他人の意思を確認しているって、皮肉な話ですよね。

毎日事務所には女性が来るけどそれは仕事の話だけ

不動産取引や相続登記の依頼で、事務所には毎日さまざまな相談者が訪れます。その中には女性もいます。でも、それはあくまで「お客様」。当然ながら恋愛に発展することなんてありません。逆に、プロとして距離を保たなければいけない。だからこそ、ますます「出会い」がないというジレンマ。事務員の女性とも雑談はするけれど、そこには明確な線引きがあります。僕にとって、恋愛は常に「業務外」です。

相続や売買の話ばかりで心が干からびていく

日々の業務は、相続登記、売買契約、公正証書作成など、お金や不動産にまつわる重たい話が中心です。人の死や争いにもよく触れるので、知らず知らずのうちに感情を抑える癖がついてしまっています。気づけば、喜怒哀楽のうち「喜び」や「ときめき」だけが抜け落ちていた気がします。事務所で黙々と書類を作成し、法務局に提出して帰宅するだけの毎日。心が干からびていく感覚に襲われる夜もあります。

「優しそう」と言われるけどその先には進めない

たまに言われるんです。「優しそうですね」って。でも、それって褒め言葉なんでしょうか。たいていは、その一言で会話が終わってしまう。優しい=恋愛対象外、みたいな雰囲気を感じることも多いです。昔、合コンに誘われて参加したことがありますが、「登記ってなに?」「地味そうだね」と言われて終了。せめて税理士なら良かったのか?などと、つまらないことで悩んだりもしました。

相手の本音は推定できない不動産と違って

不動産の所有関係や権利関係は、登記事項証明書を見ればある程度わかります。でも人の気持ちは、そんなに簡単に可視化できません。笑ってくれていても本心は別かもしれないし、優しくしてくれてもそれは社交辞令かもしれない。相手の真意を推定するなんて、怖くてできない。だからいつも距離を置いてしまう。結局、臆病なんです。

それでも今日も登記は終わらせなきゃいけない

恋愛はうまくいかなくても、登記は待ってくれません。クライアントのため、社会のため、そして何より自分の生活のために、毎日申請書と向き合っています。恋のチャンスを逃した日も、提出期限だけは守る。それが僕の矜持です。報われない気持ちはあっても、誰かの役に立てることで、少しは救われている気もします。

恋愛に関しては素人でも仕事ではプロでいたい

「恋愛に関してはずっと初心者だな」と感じることは多々あります。でも、それを理由に自分を否定するのはやめようとも思っています。得意なことで勝負する、それで誰かに必要とされるなら、それでいい。そう思うようになりました。誰もが恋愛上手である必要はないし、向き不向きがあるのは当然です。

どこかの誰かの役に立てるならそれでいいのかもしれない

恋愛では報われなくても、仕事で「ありがとう」と言われる瞬間があります。亡くなった家族の相続が無事に済んで、涙ながらにお礼を言ってくださる依頼者。そういう時、「この仕事をやっていてよかった」と心から思います。誰かの役に立てる喜びは、きっと恋愛にも似た幸福感をくれるのかもしれません。

いややっぱり誰かに「おかえり」と言われたい

それでも、やっぱりどこかで思ってしまうんです。仕事帰りに「おかえり」って言ってくれる人がいたらな、と。書類の山を片づけた帰り道、コンビニで一人ご飯を買うたびに、ふとそんな想像をしてしまいます。仕事が充実していても、心の空白は埋まらない。だから今日も、どこかで誰かと話せるチャンスを探しているのかもしれません。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓