法務局混雑の謎を追え

法務局混雑の謎を追え

法務局混雑の謎を追え

法務局の朝は唐突に始まる

朝8時45分。まだ開庁前だというのに、法務局の前にはすでに人だかりができている。並んでいるのは年配のご夫婦、不動産業者らしき若者、そして…見覚えのある司法書士仲間たち。こんなに混む理由があるのか?いや、あるんだろうけど、それにしても多すぎる。

整理券に並ぶ人々

入口の自動ドアが開くと同時に、まるでサザエさん一家がデパートのバーゲンに突撃するかのように、列がなだれ込んだ。もちろん私は出遅れた。元野球部だったとはいえ、俊敏な動きはもう10年前に置いてきた。結局、私は“午後組”の整理券を手にすることになった。

申請者なのか傍観者なのか

ちらほら見かけるのは、何も持たずに突っ立っている人々。手続きする気があるのか、それともただの付き添いか。いや、あれはもしかして…「午前のキャンセル待ち狙い」だ。静かな戦いが、無言のうちに始まっていた。

一歩遅れたら午後組確定

「あと5分早く来てれば…」と、何人もが呟いていた。ここにはタイムマシンもなければ、ドラえもんもいない。司法書士の朝は、ギリギリを攻めると必ず負ける世界なのだ。

見えない敵は“登記相談”

順番が進まない最大の原因。それは相談ブースである。5分で終わるかと思いきや、30分、1時間と粘る相談者が存在する。まるで探偵漫画に出てくる「時間稼ぎの犯人」だ。

相談か申請か分からぬ列

窓口に座ったおじいさんが「息子の登記をしたいんだけど…」と話し始めるや否や、後ろの列の司法書士たちの目が鋭くなる。これは長くなる。みんなの頭の中に「×」マークが浮かんでいた。

司法書士の職印が泣いている

私は職印を握りしめながら呟いた。「こっちは登記済証も印鑑証明も揃ってるんだよ…」それでも窓口は、相談者を優先する。不条理だ。まるでコナンくんがいない探偵団のように、誰も真実に辿り着けない。

記入ミスで2度出直す依頼人

やっと順番が来た…と思ったら、隣の窓口で書類を突き返された人がこっちに来た。「先生、ここって住民票いらないんでしたっけ?」…いるに決まってるだろうが!!

サトウさんの推理が冴える

事務所に戻ると、サトウさんが腕を組んで考え込んでいた。「このところの混雑、ちょっとおかしいです」私は思わず笑ってしまった。「なに、まさか怪盗キッドでも登記しに来てるってか?」

「この混み方には理由がある」

サトウさんは無視して言葉を続けた。「ネット申請の不備が増えて、逆に窓口に人が流れてきてるんです。加えて今月は相続登記義務化の初月。そりゃあ混みますよ」なるほど、ホームズばりの推理だ。

書類の山から見えた一つの真実

机の上の登記関連書類の山を見ながら、私は気づく。そういえば、どの依頼人も「他の司法書士さんに断られた」と言っていた。このタイミングで“断る人”が増えたのかもしれない。

システムエラーか人為ミスか

電子申請のバグなのか、あるいは人員不足か…原因は複数ある。だがそのすべてが“現場”に負担としてのしかかっている。そして現場とは、つまり私だ。

法務局の裏側に潜む存在

常に早く並んでいる謎の人物がいる。私たちの間では「イチローさん」と呼ばれている。開庁前に必ず1番を取る彼は、全登記業務を一人でこなしているという噂だ。まさに怪盗紳士。

時間指定を無視する“常連”たち

「整理券?あぁ、いらないいらない」と言って窓口に突撃する強者もいる。法務局には法律だけでなく“地元ルール”が存在している。初見では到底太刀打ちできない。

先回りしていた謎の司法書士

ふと見ると、申請済証の控えが机にあった。「あれ?この登記…うちじゃない」誰かが私の依頼人に先に手を付けた?依頼人に確認すると「先週、別の先生にも頼んだ」と白状。やれやれ、、、二股登記か。

書類に残された奇妙な文字列

書類の隅に、手書きで「シンシアオフィス」と書かれていた。聞いたことがない事務所名。新手か、それとも個人事務所の偽名か。事件の香りが、ほんのりと漂ってきた。

やれやれ俺の仕事はここからだ

午後3時半、ようやく登記が完了した。肩の荷は降りたが、次の書類がすでに机に乗っている。「先生、次の相続の件です。5人相続人がいます」サトウさんがにこやかに言う。私は黙ってうなずいた。

登記の闇と今日の弁当の中身

ようやく一息ついて弁当を開ける。朝作ったタマゴサンドが、ぐちゃぐちゃになっていた。「…これが今日の俺の報酬か」誰に言うでもなく、私は空を見上げた。

サトウさんと見つけた答え

「混んでるのは、みんな一生懸命ってことですよ」サトウさんのその言葉に、私は少し救われた気がした。法務局が混んでいるのは、誰かの人生が動いている証でもある。

それでもまた明日も混んでいる

翌朝8時半。私は法務局の前に立っていた。昨日より少し早く。けれど、すでにイチローさんの姿があった。彼が静かに言う。「おはようございます。今日も激戦ですね」やれやれ、、、

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓