はじまりは一通のLINE通知だった
既読するだけで重たいあの言葉
月曜の午後、登記簿のコピーをスキャナーにかけながら、ポケットの中のスマホが震えた。「母」。その二文字だけで、どこか背筋が凍るのは毎度のことだ。
ただの挨拶かと思いきやの「結婚どうするの」
「元気にしてる?そろそろ結婚は?」
絵文字付きで送られてきたメッセージは、サザエさんの波平が怒鳴るような勢いで僕の胸を突いた。
母のスタンプが妙にリアルで怖い
「花嫁姿のうさぎ」のスタンプ。なぜかこちらを見つめて微笑んでいる。思わずスマホを裏返した。
親の気持ちとこちらの事情はいつもすれ違う
「あなたのためを思って」が一番つらい
親が心配してるのはわかる。だけど「心配」って名の鉄球をぶんぶん振り回されてる感じなんだ。
言われなくてもこっちは考えてる
僕だって考えてないわけじゃない。ただ、答えが「ない」のと「出せない」のは違うんだ。
事務所でつぶやいたらサトウさんが放った一言
「じゃあ親にこう言えばいいんじゃないですか」
「うちは婚姻届より登記申請のほうが忙しいんでって送れば?」
と、淡々と言い放つ事務員のサトウさん。相変わらず切れ味がいい。
その切り返しがなぜか胸に刺さる
いや、間違ってない。でもそれを母に言ったら、スタンプが5連続くらい返ってくるに違いない。
結婚していないことがそんなに問題なのか
誰の人生かを改めて問う
結婚は人生の通過点、なんて言うけど、それなら僕は今どこを走ってるんだろう。グラウンド整備中ってところか。
やれやれ これもまた独身司法書士の宿命か
元野球部でも打てない球がある
球速190キロのストレート、それが「結婚まだ?」だ。バットを構える暇もない。
ホームランは出ないけど自分なりに走っている
塁に出ることすらない日々だけど、黙々とバントで前に進めばいい。いや、進んでるのかこれ。
それでも明日はやってくる
また通知が光る前に少しだけ自分を休ませよう
夜の事務所、蛍光灯の下でふと考える。
「この世に登記のない結婚があればいいのに」
そんな妄想をしながら、コーヒーに口をつけた。
スマホがまた震えた。母からだ。
通知にはこうあった。
「近所の○○くん、子ども生まれたって」
やれやれ、、、またホームベースが遠のいた気がした。