完璧主義が苦しみを生む
司法書士の仕事って、世間から見たら「ミスなんて絶対に許されない仕事」と思われてるんですよね。まあ、実際そういう側面もあるんですけど。でもだからって、「ミスを一切起こすな」って考えすぎると、本当に自分の首を絞めるだけです。僕も若い頃はそう思ってて、ちょっとした書類の誤字でも汗が止まらなくなって、夜中に何度も目が覚めたりしてました。でも人間って、そもそも間違える生き物です。ミスをゼロにするって目標は、結局「幻想」なんですよね。
司法書士の「ミス＝終わり」思考
司法書士の現場では、「一つの間違いで全部ダメになる」という空気があります。これは、ミスが命取りになる場面が確かにあるからこそ。でも、それが行きすぎると、普通の業務でも異常に緊張してしまって、かえってパフォーマンスが下がるんですよ。たとえば登記申請書の記載をミスって補正が入ると、「ああ、やってしまった…」と自己嫌悪に陥る。でも正直、ベテランでも補正くらい普通にあります。なのに、若手の頃の自分はそれを「終わった」とまで思っていたんです。
失敗を極度に恐れていた新人時代
僕が新人だった頃、初めて担当した相続登記で、被相続人の住所に旧字体を使い忘れて補正通知が来たことがありました。今なら「まあ仕方ないな」で済ませられるんですが、その時は頭が真っ白になって、半日くらい仕事が手につかなかった。お客さんに連絡する手も震えてたし、正直その日は家に帰って泣きましたよ。そんなことで？って思われるかもしれないけど、それくらい「ミス＝終わり」って思い込んでたんです。
訂正印ひとつで頭が真っ白になる
ある日、委任状に訂正印を押し忘れて、法務局からの電話一本でパニックになったこともありました。たかが訂正印。でも、その時の僕には「致命的な過失」に感じられた。電話を切ったあと、しばらく呆然として座ったまま動けなかったんですよ。今では「それぐらいあるあるだよ」と思えるけど、当時は本気で「司法書士やめたほうがいいのかもしれない」とすら思ってました。
「一発で終わらせなきゃ」の呪縛
新人時代からしばらくの間、「一発で完璧に終わらせなければプロじゃない」と信じて疑わなかったんです。でも現場ってそんなに単純じゃない。いろんな書類が絡み合って、相手方の動きも読めない。それなのに「完璧にやらなきゃ」と思ってると、毎日が地雷原を歩くみたいになります。で、結局ミスをしてしまう。皮肉なもんです。
実務は想定外だらけ
理想と現実は違うってのは、司法書士の仕事にも当てはまります。事前にどれだけ準備しても、現場に出れば想定外の連続。僕らが扱うのは人間と書類、そして時には感情です。マニュアル通りにいかないのが当たり前なのに、「完璧にこなすべき」と思い込むと、どこかで歪みが出るんです。
完璧に準備してもズレる現場
以前、完璧に準備したつもりの相続登記で、当日になって依頼人の兄弟が「やっぱり押印したくない」と言い出したことがありました。そこから現場で調整して、別の方法で進めるように変えましたが、あの時の疲労感はすごかった。「ミスじゃないけど、予定通りにいかない」ことに、異様に消耗する。これが現実です。
お客様の言っていることが違う問題
電話では「戸籍は全部そろってる」と言っていたのに、持ってきたのは抄本だけ。こういうこと、普通にあります。これを「お客様のミス」とするのか、「自分の確認不足」とするのか。僕は後者にしてしまうタイプで、あとから自己嫌悪になります。でも、全部自分のせいにしてたら潰れます。ミスってのは、誰か一人の責任じゃないことも多いんですよ。
書類が揃ってるはずが足りない現実
ある時、法定相続情報一覧図を作成する際、必要な戸籍が一通だけ足りなかったことがありました。チェックリストも作ってあったし、依頼人にも確認してたのに、なぜか抜けていた。結果、申請は延期、時間も再確認も倍に。こういうのって、完全に防ぎきるのは難しい。だから「想定外を受け入れる力」もプロには必要なんだと思います。
事務員さんのフォローに救われる
うちの事務員さんは本当にありがたい存在です。僕が見落としていたミスに気づいてくれたり、電話対応で空気を和ませてくれたり、精神的にも助けられてます。一人で完璧を目指すのって限界がありますよ。信頼できる人と一緒に仕事ができるからこそ、ミスもリカバリーできるし、笑って乗り越えられるようになるんです。
二人三脚でこそ成り立つ仕事
「俺が全部やるから」と意気込んでいた時期もありましたが、それはただの自己満足でした。仕事ってのはチーム戦です。とくにうちみたいな小さな事務所では、一人ひとりの役割が重要で、お互いを信頼しないと回らない。事務員さんがいなかったら、僕はとっくに潰れてたと思います。
事務員の「気づき」が命綱
「先生、これちょっと違うような気がします」と言われて、ギリギリで申請ミスを回避できたことが何度もあります。自分一人じゃ見落としてたところに、事務員さんの視点が入ることで救われる。これって本当にありがたい。だからこそ、ミスがあっても「どうすれば防げたか」を一緒に考える姿勢が大事なんです。
冷静な確認がミスを救ってくれる
僕が焦ってるときでも、事務員さんは冷静に「一応これもチェックしましょう」と言ってくれます。そのおかげで、重大なミスを未然に防げたこともありました。完璧を目指すんじゃなくて、冷静に確認し合う。そういう関係性があるだけで、ミスに対する恐怖はずいぶん軽くなります。
「ミスゼロ」への執着は心を壊す
かつての僕は「絶対にミスしない人間」になりたかった。でもそれって、心の健康を犠牲にしてまで達成するべきことじゃなかった。むしろ、ミスをしても壊れない心、立ち直れる柔軟さのほうがずっと大切だったんだと今は思います。
ミスを恐れて縮こまる思考回路
ミスが怖くて、一歩踏み出せなくなることってありませんか？僕はそれで、相談者への提案も守りに入りすぎて、結局「何も言わない司法書士」になってた時期があります。でもそれって、お客様にとっては不親切なんですよね。怖くても、間違っても、誠実にやり直せばいい。それができれば十分なんです。
防衛的になると視野が狭くなる
ミスを恐れてばかりいると、だんだんチャレンジできなくなって、判断も鈍っていきます。確認ばかりで仕事が進まない。完璧にこだわるあまり、大切な本質を見落としていたこともありました。ミスを恐れすぎると、かえってミスを招く。これ、本当に皮肉ですよね。
反省はするけど、自分を責めすぎない
ミスはミスとしてちゃんと反省します。でもそれと「自分はダメだ」と責めるのは別。どこで間違えたかを冷静に分析して、次に活かす。それができれば、もう十分じゃないでしょうか。僕はもう、自分を責めるのはやめることにしました。
「なぜ起きたか」を考えるだけでいい
大事なのは「誰が悪いか」じゃなくて「どうすれば次は防げるか」。そう思えるようになってから、気持ちもずいぶん楽になりました。自分のためにも、そして事務所のためにも、ミスは「改善の材料」なんです。
自責より仕組み改善を優先
ある時、同じようなミスを2回やってしまって、さすがに落ち込んだんですが、事務員さんと相談してチェックリストを改良したら、それ以降はピタッとなくなった。自分を責めるより、仕組みを変えるほうが圧倒的に建設的。ようやくそれに気づきました。
完璧主義より、丁寧なやり直しが大事
ミスのない仕事は幻想。でも、ミスをしたあとにどう向き合うかは現実です。結局のところ、何度でも丁寧にやり直せることこそ、プロとして大事なんじゃないかと思っています。だから今日も、地味に地味に、確認しながらやっていきます。
ミスに気づけることがプロの証
怖いのは、ミスそのものより、ミスに気づかないこと。自分で「おかしいな」と感じられる感覚を持っていること、それに気づいたら素直に修正できること、それがプロだと思うんです。完璧じゃなくていい。でも、気づく目は持ちたい。
間違えたって、やり直せばいい
司法書士って、やり直しがきかない場面もあるけれど、大半はやり直しができる仕事です。訂正、補正、再申請——それで救えるなら、何度でもやればいい。プライドより、誠実さのほうがよっぽど価値があります。だからこそ、僕はこれからも「ミスしてもやり直せる人間」でありたいと思っています。
