笑う印紙と封じられた真実
午後四時の来訪者
時計の針が午後四時を指したとき、事務所の扉がノックされた。ドアを開けると、初老の男性が封筒を胸に抱えて立っていた。微妙に汗ばんだ額が、何かしらの緊張を物語っているようだった。
机に残された封筒
「この書類の登記をお願いしたいんですが…」 差し出された封筒は茶色で、封はされていなかった。開けて中を確認すると、登記済証と印紙が貼られた申請書が一式入っていた。ただ、その印紙が、なぜかにやけて見えた。
サトウさんの冷たい推理
「この印紙、変ですね。割り印のインクが妙に新しいです」 サトウさんがすぐさま指摘した。印紙は確かに貼られているが、割り印の線が不自然に途切れている。こういうときの彼女は、まるでルパンを追う銭形警部のように鋭い。
登記済証と笑う印紙
登記済証そのものに問題はなかったが、なぜか印紙だけが異様に目立っていた。まるで「私はニセモノですよ」と主張するように、光の角度でうっすらと笑っているようにも見えた。やれやれ、、、どうせまた厄介なことになる。
嘘をついた依頼人
「この書類は、父の遺言に基づいて作成しました」 依頼人はそう言ったが、提出された書類の日付は父親の死亡日よりも後だった。サトウさんが冷たく告げた。「これ、日付を偽ってますね」
行き過ぎた相続放棄
詳しく話を聞いてみると、相続人の一人が放棄しているはずの不動産を勝手に売却しようとしていたようだ。それを隠すために、依頼人は印紙を剥がして貼り直したのだった。印紙税の節約どころか、完全な偽造だ。
司法書士シンドウのうっかり
「これ、普通に受け取ってたら危なかったですね」 サトウさんの冷たい一言に、俺は反射的にうなだれた。うっかり確認せずに提出していたら、法務局から注意どころか処分もあり得た。まったく、俺のミスを先回りして拾う彼女の能力には頭が下がる。
消えた収入印紙の謎
「ちなみに、前回提出したって言ってた印紙付きの書類は?」 サトウさんが尋ねると、依頼人はしばらく黙ったままだった。どうやら前の印紙を剥がして使い回していたらしい。そんなことをするのは、サザエさんのノリスケくらいなものだと思っていたが、現実はもっとタチが悪い。
元野球部の直感が騒ぐ
「これ、まだ何か隠してるな」 野球部時代、相手のバントの構えを見た瞬間に盗塁を予測したような感覚が蘇った。俺の第六感が告げていた。この依頼人、書類だけじゃなく、事実そのものを作り替えようとしている。
すり替えられた書類の真相
調べてみると、依頼人が持ち込んだ登記済証は、別の事件で使用された実物をコピーして加工したものだった。つまり、事件の裏には、同業者をも騙そうとする計画的な詐欺が潜んでいたのだ。
サザエさんのような偶然
その後、偶然にも別件の相談で来た依頼人が、同じ印紙番号の写しを持っていたことで、事件は一気に動いた。まるでタラちゃんが偶然見たサブちゃんの手帳から事件が解決するような展開だった。
やれやれの先にある逆転
「全部バレましたよ。印紙も、日付も、登記済証も」 サトウさんが淡々と伝えた。依頼人は観念したように深くため息をついた。俺もやれやれ、、、と呟きながら、法務局への報告書を作成し始めた。
封筒の中にあったもの
最後にもう一度、最初に持ち込まれた封筒を確認すると、中には小さなメモが挟まれていた。「バレたら全部あなたのせいにします」と、筆跡の異なる文字で書かれていた。やれやれ、、、今度は俺が被害者かよ。