戸籍が語る再婚と遺産の謎

戸籍が語る再婚と遺産の謎

司法書士に持ち込まれた一通の謄本

依頼人は涙を浮かべた後妻だった

「あの…この謄本、やっぱり変ですよね?」
目の前に座る女性が差し出した戸籍謄本には、見慣れたはずの形式とはどこか違う不穏な空気が漂っていた。
彼女は被相続人の再婚相手であり、相続の手続きのために訪れたという。

前妻の名前が消えていない理由

除籍されていない謎の戸籍

本来であれば、離婚した前配偶者の名前には「除籍済」の記載がされるはずだ。
しかし目の前の謄本には、前妻の名前が堂々と載ったまま。しかも離婚の記載がない。
戸籍の不整合は、時に事件の匂いを運んでくる。

遺産分割協議で見えた不自然な同意

実印の押された日付が意味するもの

遺産分割協議書には、全員の実印と印鑑証明書が添付されていた。
だがその中のひとつ、いかにも古びた印影の日付が気になった。
それは被相続人が亡くなるより前の日付だったのだ。

相続人の一人が語らない過去

家族関係説明図にない人物

「うちは父と母と、兄で三人兄弟です」
そう語った長男の言葉に、どこか躊躇が見えた。
不思議に思い調査を進めると、戸籍の途中に見慣れぬ名があった。

再婚と相続が重なったタイミング

亡き被相続人の戸籍に潜む空白期間

婚姻解消と再婚、それに死亡届。三つの出来事が数か月の間に凝縮されていた。
戸籍の編成日と婚姻日が妙に近い。
そこには、意図的なタイミングの操作を感じずにはいられなかった。

調査に同行したサトウさんの推理

「戸籍の未記載は、時に最大の証拠になる」

「戸籍にない、というのは書かれていないから無罪、ではないんです」
サトウさんは、相変わらずの塩対応でそう言った。
だがその言葉には、経験と直感に裏打ちされた鋭さがあった。

本籍地の役所で発覚した訂正の痕跡

訂正印が押された一枚の証明書

地元の役所に足を運んで、古い紙の謄本を確認した。
そこには訂正印と赤字で訂正された再婚日の修正が記載されていた。
誰かが、あとから事実を塗り替えた形跡だった。

再婚の裏に隠された偽装工作

誰が得をするかを考える

財産の大半は、後妻が相続する形になっていた。
それを知った瞬間、私はまるで某怪盗アニメの探偵役のように目を細めた。
「やれやれ、、、また現実がフィクションを追い越す時代か」

相続放棄届に潜んだ違和感

放棄届が出されたのは本当に本人か

相続放棄をしたとされる前妻の名前が、妙に雑な筆跡で書かれていた。
しかも印鑑証明が添付されていない。家庭裁判所から取り寄せた原本には、不自然な訂正箇所があった。
もしや、これは偽造された届出ではないか。

過去に交わされた遺言書の影

二通目の遺言はなぜ無効になったのか

公正証書遺言のはずが、無効とされた理由は本人確認の不備だった。
だが、それを証明できる証人の一人が、奇しくも再婚相手の親戚だった。
繋がる点と点が、やがて大きな線となって浮かび上がる。

謄本に残された筆跡が決め手に

司法書士の見抜いた真実

謄本の記載ミスは、単なる事務処理の誤りではなかった。
遺産を得るために過去を都合よく編集した者がいた。
私はすべてを整理して依頼人に伝えた。「あなたは騙されていました」と。

やれやれの一言で幕を閉じる結末

後妻が語ったたった一つの後悔

「でも、私、本当に愛してたんです…」
そう言って涙を流した彼女の頬には、後悔と愛情が混ざっていた。
私は黙って書類を閉じ、静かに言った。「やれやれ、、、この仕事、やっぱり性に合ってないかもしれません」

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓