登記簿が暴いた消された相続

登記簿が暴いた消された相続

奇妙な登記簿の記載

古い家屋に残された不自然な所有者名

港町の外れに建つ一軒家。瓦は崩れ、壁にはヒビが走っている。依頼人が持参した登記簿には、既に三十年前に亡くなったはずの人物の名が記載されていた。

遺産相続登記のはずが浮かび上がる矛盾

「ただの相続登記だと思ったんですが……」依頼人の声はかすれていた。申請書と一緒に提出された書類は不完全で、日付の整合性すら取れていなかった。

依頼人は無口な老人

過去の記憶を頼りに来所した男性

杖を突いた老人は、昔ここに住んでいたと語った。彼は亡き兄の名義を今さらながら変更したいという。しかし、その兄が死亡したとされる時期と登記の時期がどうにも一致しない。

曖昧な説明と不自然な資料

「この戸籍…どこで手に入れたんですか?」サトウさんが眉をひそめる。印影も書式も不自然で、まるで深夜アニメに出てくる偽造書類のようだった。

サトウさんの冷静な指摘

見落としがちな登記簿の「行間」

「この時点で売買が成立していたら、お兄さんの署名が必要です。でもその時点で…」サトウさんの指が示すのは死亡日だった。書類の時系列が明らかに破綻している。

塩対応の奥に潜む推理の糸口

「つまり、誰かがこの不動産を無理やり移そうとしたってわけですね」ぼそっと呟くと、サトウさんは「だから最初に言ったじゃないですか」と無表情で答えた。

古い地図が語るもう一つの真実

地番と地図のずれ

法務局で閲覧した旧土地台帳には、地番の記載ミスと思われるものがあった。そのズレが、今の登記簿の混乱の原因となっていた。

土地家屋調査士への問い合わせ

電話の向こうの調査士は、「ああ、その場所なら火事があったよ。十数年前だったかな」と答えた。つまり、火事の後に何かが変わったのだ。

隣地の所有者が語った不気味な噂

夜中に現れる黒い影

「夜になると誰かが中に入ってくのを見たんだよ。黒い影で…まるで泥棒か幽霊かってな」近所の老女は震えながら語った。

過去の火事と失踪事件の関連

火事のあった夜、ある人物が忽然と姿を消した。その人物こそ、本来の相続人であり、登記に名を連ねるはずだった。

亡霊のような登記名義人

既に死亡しているはずの人物の署名

登記簿に残された署名と印影は、死亡後に押されたものだった。筆跡鑑定の結果、明らかに本人ではない別人のものと判明した。

筆跡と印影に潜む違和感

サトウさんは、筆跡にある特徴的な癖を見抜いていた。「この“永”の字、書き慣れてない人が無理に真似してますね」

謄本に記された奇妙な日付

相続登記の直前に行われた売買

「相続前に不動産が動いてるって…これ、完全にアウトですね」僕が指差したのは、数日違いの登記日付だった。

日付をまたいだ謎の移転登記

申請日と受理日が別で、しかも移転先の名義人はすぐに転売していた。マネーロンダリングのような臭いがした。

一枚の古い戸籍が真相を暴く

隠されたもう一人の相続人

戸籍を丁寧にたどると、旧姓のまま記載された女性が現れた。戸籍の附票を追っていくと、その女性は現在東京に在住していた。

改名と養子縁組のからくり

養子縁組と改名で戸籍の追跡を困難にし、登記上の存在を抹消しようとした形跡があった。「まるで怪盗キッドだな…」と思わず口にした。

シンドウの突撃訪問

登記申請代理人との対決

代理人の司法書士は、曖昧な言い訳を繰り返すばかりだった。こっちは証拠を揃えている。追い詰められた彼は、ついに「それは依頼人に言われて…」と白状した。

やれやれ、、、また変な案件だ

「だから依頼内容が簡単すぎるときほど注意しろって、いつも言ってるでしょ」サトウさんの小言に、思わず頭をかいた。

法務局で明かされた決定的証拠

偽造申請書と実印の真贋

実印は過去に失くしたとされるものだった。申請書の一部が手書きで、しかも違うボールペンを使っている。偽造の痕跡は明白だった。

元野球部の勘が当たった瞬間

「この違和感、キャッチャーのサインみたいにズレてるんだよな」昔取った杵柄が、まさかこんな形で役立つとは思わなかった。

サトウさんの静かな勝利宣言

「だから言ったでしょ」と冷たく一言

事件が無事に解決したことを報告した後、サトウさんは一言だけ冷たく告げた。「最初からおかしいって言ってたじゃないですか」

笑わない助手が見せた小さなガッツポーズ

その瞬間、ほんの一瞬だけサトウさんが口の端を上げた。たぶんあれは…勝利のガッツポーズだったのだろう。

解決後の静けさとコーヒーの香り

登記簿から消えた亡霊

訂正登記が完了し、正当な相続人の名が記された登記簿が手元に届いた。あの家を取り巻いていた不気味な影は、ようやく過去のものとなった。

シンドウの独り言と静かな午後

「やれやれ、、、」椅子に深く座りながらコーヒーを一口。いつもの静かな午後が、また戻ってきた気がした。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓