仕事は好きなのに朝がしんどいと思ってしまう

仕事は好きなのに朝がしんどいと思ってしまう

仕事は嫌いじゃないのに気持ちが重い朝

毎朝目が覚めるたびに、「今日も仕事か……」と深いため息が出る。別にこの仕事が嫌いなわけじゃない。登記の内容を丁寧に確認して、依頼者の不安を取り除く――やりがいはあるし、誰かの役に立っている実感もある。ただ、なぜか朝がしんどい。体が重く、心が前に進まない。好きな仕事をしているのに、まるで嫌々通っているような気持ちになる。そんな自分に腹が立ち、そしてまた落ち込む。負のループだ。

目覚ましが鳴る前から目が覚める疲労感

40代も半ばにさしかかり、目覚ましが鳴るより早く目が覚めることが増えた。昔は二度寝三度寝の常習犯だったのに、今は夜中に目が覚めたり、朝方に目が覚めて「もう朝か……」と時計を見てため息をつく。これは肉体の老化なのか、精神の疲弊なのか。布団の中であと10分…と願う気持ちと、起きなきゃという義務感がぶつかる。そんな葛藤をしているうちに、事務所の開所時間が近づき、慌てて顔を洗う日々だ。

体は動くけど心がついてこない

体は動く。肩こりや腰痛を感じながらも、朝食をとり、スーツに着替えて事務所へ向かう。でも心がついてこない。気分がどんよりしている。前向きな気持ちが一切湧いてこない。これは燃え尽きなのか、ただの疲労なのか。気持ちの問題なのに、肉体にも表れてくるのがやっかいだ。車のエンジンはかけたけど、ブレーキが外れない――そんな感覚。事務所に着いて、デスクに向かっても、しばらく何も手がつかないこともある。

前の日のミスを引きずる日々

些細なミスが許されない仕事だ。だからこそ、前の日のケアレスミスが頭から離れない。補正通知が来るたびに胃が痛くなる。提出した書類のどこかに不備があったんじゃないか…という不安で、眠りが浅くなる。たとえば、一文字の誤記、捺印漏れ、印鑑証明の添付忘れ。それだけで信頼は簡単に揺らぐ。確認はしている。でも、完璧はない。それを知っているからこそ、どこまでも引きずってしまうのだ。

好きな仕事と気持ちのギャップ

昔から書類を整える作業が好きだった。高校時代の野球部でも、スコアブックをつけるのが得意だった。ルールに則って、正確に記録を残す。その感覚は、今の登記業務に通じるものがある。なのに、気持ちが晴れない。仕事の内容は好きでも、環境や自分のコンディション、日々の責任の重みが、楽しさを上回ってくる。好きだから頑張れているだけで、決して「楽しい」とは言えない――そんな複雑な感情に押し潰されそうになる。

登記の正確さにはやりがいを感じるけれど

登記という仕事の魅力は、その正確さと安定性にあると思っている。ミスが許されない世界に身を置くことで、自分の中の几帳面さが活かせる。ピタリと必要書類がそろい、受付完了の通知が届いた時の達成感は、他では味わえない。しかし、その達成感を味わうためには、長時間の確認作業と、細かいやりとりが不可欠だ。体力よりも精神力をすり減らすような仕事に、ふと「何のためにやってるんだろう」と思う瞬間がある。

人とのやりとりが心を削っていく

司法書士というと「書類仕事だけで人と関わらない」と思われがちだが、実際は違う。依頼者、金融機関、不動産会社、役所…いろんな人とのやりとりがある。特に言い方のきつい人や、無理な要求をしてくる相手とのやりとりは本当に消耗する。「こちらの事情も考えてくれ」と言いたくても、口に出せない。野球部の頃のように、グラウンドで汗を流して発散できるわけでもない。心にたまった澱が、毎日少しずつ濃くなる。

一人事務所の孤独と責任の重さ

地方で司法書士としてやっていくには、一人事務所が基本になる。私も例外ではない。事務員を一人雇ってはいるけれど、基本的な責任は全部自分持ち。決済日の調整も、ミスの対応も、クレーム処理も、全部自分。誰にも押し付けられないし、相談できる相手も少ない。そんな環境の中で、好きな仕事でも「しんどい」と感じる瞬間があるのは、当然のことかもしれない。

事務員がいても結局全部見なきゃいけない

ありがたいことに、うちの事務員はよくやってくれている。でも結局、最終的な確認は自分がやらなければならない。「あれ、これ添付資料足りてるか?」「この日付で間違いない?」と心配になって、また見直す。信頼しているつもりでも、ミスが許されないプレッシャーが強すぎて、最後は自分がすべて見直す習慣が染みついてしまった。だから、実質的には“常に一人で全部を背負っている”感覚が抜けない。

気を遣いすぎて逆に疲れる関係

事務員との関係も難しい。雇っている立場として、威圧的にはなりたくない。でも、優しくしすぎて言うべきことが言えなくなることもある。ちょっとした注意も「嫌われるかな」と思ってしまい、結果として自分だけが我慢している。お互い気を遣っているのが空気で伝わってきて、余計に疲れる。仕事は好きだけど、人との距離感に悩むと、「一人のほうが楽かも」と思ってしまうことさえある。

お昼休みも気が抜けない

本来、昼休みは心身をリセットする時間のはずだ。でも実際は、電話対応が続いたり、午後の予定の段取りで頭がいっぱいだったりで、気が休まることがない。事務員と一緒にいる手前、ダラダラするのも気が引ける。コンビニ弁当を急いで食べて、パソコンの前に戻る。「これって休憩って言えるのか?」とふと我に返る瞬間がある。好きな仕事に向き合いたいのに、こういう“間”でエネルギーが削がれていく。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。