見積もりだけで一日終わる日がある件について

見積もりだけで一日終わる日がある件について

それ見積もりだけで日が暮れる

朝の一杯のコーヒーを飲みながら、「今日はあれとこれを処理して…」と考えていたのに、気づけば日が暮れている。しかも処理できたのは“見積もり”一件だけ。そんな日が週に何回かある。依頼が多いことはありがたい。でも、書類作成に着手する前の「金額感のすり合わせ」でここまで時間を取られるのは、地味に精神を削られる。司法書士の報酬は自由設定の部分も多く、細かく考えるほど時間がかかる。いっそ「一律〇万円!」にしたい。でもそれができない現実がある。

午前中いっぱいかけて1件だけ

ある日、朝から見積もりを始めて、気づけば正午。時計を見て「嘘だろ」と思わず声が出た。書類を確認し、類似の案件を過去のデータから探して、それに近い数字を弾き出して…。一つ一つの作業は慎重に行わないといけないし、案外細かい。登記の種類が違えば手続きも違う。特に相続関係の案件は、関係者の数や戸籍の取得の手間も変わってくる。見積もりのつもりが、半分調査業務みたいになってるときがある。

請求項目の確認だけで30分

「この費用、請求してもいいのか…?」と悩む場面が多い。例えば郵送費や交通費、書類取得代行費用など、「細かすぎる」と言われることが怖くて、つい全部込みでざっくり出してしまいたくなる。でもそれじゃ利益にならないし、あとから請求するわけにもいかない。30分かけて「この費目は外すか入れるか」と格闘する自分に、「何やってんだ俺…」と心の中でツッコミを入れたくなる。

報酬額は結局いつも悩む

報酬額の設定ほど、自営業者にとって難しいものはない。高くしすぎても依頼がこない、安すぎると自分が苦しくなる。相場感を調べたり、同業者の話を聞いたりしても、「結局その人の考え方次第」となる。私は性格的に「相手の予算を気にしてしまう」タイプなので、つい安めに見積もってしまう。それで仕事が増えても、自分の時間と体力が削られるだけという悪循環に陥ることも少なくない。

お昼休憩はExcel片手にパンかじる

「ごはんをちゃんと食べる」ことが夢になる日もある。事務員さんが気を利かせて「先生、パンありますよ」と差し入れてくれたのが、唯一の救いだった。Excelで作った報酬表とにらめっこしながら、片手で食べるランチ。司法書士になったとき、こんな昼休みを想像していただろうか。いや、してない。もっとスマートに仕事してると思ってた。

過去案件の控えを探すだけで一苦労

「あのときどう見積もったっけ?」と過去の控えを探し始めると、そこからが長い。フォルダが多すぎるし、ネーミングも統一されてない。デジタル化はしてるつもりでも、管理はまだまだアナログな部分が多い。「これを探す時間、無駄だな」と思いながら、結局30分以上使ってしまう。この非効率を改善しようと毎年思うけど、時間がない。

「だいたいでいいんで」のプレッシャー

「ざっくりでいいんで」という依頼者の言葉ほど、実はざっくりできない呪いの言葉はない。ざっくり出して「話が違う」と言われたら信用を失う。かといって詳細に出すと時間がかかる。「責任を負わずに正確な情報だけほしい」という、依頼者の心理が透けて見える時、ちょっとだけやるせなくなる。きっと向こうも悪気があるわけじゃない。でもこっちは命削ってる感覚。

そもそも見積もりって無料でいいのか問題

何時間もかけて作る見積もり。それが「当然無料」と思われているのがしんどい。カウンセリングやコンサルの世界なら「初回〇分は〇円」とかあるのに、司法書士の見積もりは未だに「サービス」。案件になれば回収できる。でも、ならなかったときの虚無感…。せめて「見積もりをお願いできて助かりました」と言われるだけでも違うんだけど、現実はそう甘くない。

時間かけたのに他所に流れると凹む

見積もりに2時間かけて、相手から「他のところに頼みました」と連絡が来たときのあの虚しさは、なかなか言葉にできない。「この時間、何だったんだろうな」とボソッと独り言が出る。見積もりで比較されるのは当然のこと。でも、毎回同じような結末だと、だんだん「どうせまた断られるんでしょ」という気持ちになってしまう。いかんいかん、と思いつつ、元気は削がれる。

説明しても理解されない「見積もりの価値」

「なんでそんなにかかるんですか?」と聞かれるたび、「ここからここまで全部やってるからです」と説明する。でも、どうしても“紙一枚出すだけ”に見えてしまうのか、納得されないことも多い。「書類作成が本業じゃなくて、調整と確認の方が手間なんです」と説明しても伝わらない。「じゃあ、いいです」と言われて終わると、もう何も言えなくなる。

相見積もりって地味にメンタル削れる

「何社かに声かけてます」と言われると、つい気持ちが萎える。依頼者に選ぶ権利はあるし、こちらも堂々と出すべきだ。でも、価格だけで判断されたり、「A事務所はもっと安かった」と言われると、つい「じゃあそっちでどうぞ」と言いたくなる。口には出さないけど。実際、金額じゃない部分で勝負したいけど、それが見積もりには反映しにくい。だからこそ、精神的に疲れる。

ミスれないのに急がされる理不尽

依頼者にとっては「とりあえず金額だけ知りたい」程度でも、こっちにとっては見積もりは命がけ。特に登記費用が絡むと、登録免許税の計算もミスできない。ちょっとでも間違えれば赤字、もしくは信頼喪失。そういうプレッシャーの中で「今日中にお願いします」と言われると、胃がキュッとする。もっと早く依頼してくれれば…という思いがつのる。

ミスれば信用を失うし

一度見積もりでミスをしてしまったことがある。「先生、登録免許税の計算が違いますよ」と依頼者から指摘され、その場では謝って訂正したが、もうその依頼者からのリピートはなかった。どんなに丁寧に仕事をしていても、一つの見積もりのミスが致命傷になる。数字の世界は厳しい。だから慎重にならざるを得ない。でもその慎重さが、時間をさらに食う。

遅ければ催促されるし

とはいえ、遅いと文句を言われる。「まだ見積もり届いてませんけど」と電話が鳴ると、心臓がバクバクする。「今、まさにその見積もり作ってます」と言いたくても、すでに3件目に取り掛かっていたりする。すぐ対応できればどれだけ楽か。だけど、手を抜けば信用が飛ぶし、急げばまた間違えるかもしれない。どこにも逃げ道がない。

つまりどう転んでも疲れる

丁寧にやれば時間がかかる、急げば精度が落ちる、ミスれば信頼を失う。そう、どうやっても疲れるのが見積もり業務。何が正解か誰も教えてくれないし、答えもたぶんない。だからこそ、せめて「今日はよく頑張った」と自分を褒めたい。でも大抵は、「何も終わってない…」という絶望だけが残る。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。