今日もダメだったと思いながら眠る夜に

今日もダメだったと思いながら眠る夜に

今日もダメだったと思いながら眠る夜に

帰宅しても気持ちは仕事のまま

夜の9時を過ぎてようやく事務所の電気を消し、車に乗り込む。エンジンの音だけが耳に残る帰り道。自宅に着いても、さっきの登記の書類の確認ミスが頭をよぎる。仕事が終わったはずなのに、脳みそだけはまだ残業している。司法書士という肩書きは、オンとオフの境界をどこまでも曖昧にしてしまうらしい。

パソコンを閉じても頭の中は閉じない

「もう今日はここまでにしよう」とPCを閉じた瞬間、頭の中でタスク一覧が再生される。「あの案件、納期いつだっけ?」「あの人から返事来てたっけ?」結局スマホでメールを再確認し、タスクリストをメモ帳に書き出す。これじゃあ、全然“閉じて”ない。ただ自分に「終わったことにしているだけ」だ。

「あと一件だけ処理しておけば」その後悔の連鎖

よくあるのが、「今日は早く寝よう」と決めた日に限って「あと一件だけ処理しておけば…」という後悔がのしかかること。処理しなかった書類が、急に不安の種になる。あれを今日やっていれば、明日少し楽だったのに。そんな後悔を抱えたまま布団に入ると、眠りは浅く、夢の中でも仕事をしている気分になる。

遅い夕飯、冷めたお茶、そして誰もいない部屋

帰宅すると炊飯器の保温はカピカピ、ご飯も冷たい。お茶を淹れても温かさを感じる前に孤独の冷気が勝る。話し相手がいない食卓は、ただの作業場。テレビの音をBGM代わりにしても、虚しさが隠せない。こんな時間が続くと、仕事の大変さよりも「日常の空白」がこたえるようになる。

なんとなく今日も自分を責めてしまう

特別なミスをしたわけじゃない。でも「今日はうまくやれた」と思えないまま一日が終わると、自分を責めるクセが出てくる。司法書士として、完璧であろうとする気持ちが強すぎて、ちょっとした抜けが“許せない”。これが地味にきつい。自分の中の理想と現実が、毎晩のようにぶつかっている。

依頼者の表情を勝手に悪く受け取る悪癖

たとえば今日の相談者。帰り際の一言がどこか素っ気なく聞こえた。それだけで「不満があったのかもしれない」と不安になる。実際はただ急いでいただけかもしれないのに、自分の対応に問題があったんじゃないかと自己否定が始まる。毎晩、誰にも答えの出せない反省会をひとりで開いている。

完璧主義と怠け癖の板挟みで自己嫌悪

一方で「もっとできたのに」「今日は怠けた」と感じる瞬間もある。朝の1時間をもっと集中できたら、もう少し残業減ったかも…なんて考え出すときりがない。完璧主義と怠け癖。この二つの自分が、夜になると必ず口論を始める。最終的に負けるのはいつも、“今の自分”だ。

「これでよかったのか」が毎晩押し寄せる

司法書士の仕事は正解があいまいなことも多い。登記手続き一つとっても、判断や助言が求められる場面では、「これでよかったのか」と悩む。夜になればなるほど、その不安は大きくなり、何度も頭の中でやり直す。でも過去は変えられない。変えられないとわかっていても、気になってしまう。

周りと比べてしまう夜のSNSチェック

寝る前、なんとなく開いたSNS。同期の司法書士が「今月も順調!」と書いているのを見てしまう。「自分はどうだろう」と比べて、勝手に落ち込む。現実の自分と、切り取られた他人の一部を比較しても仕方ないのに、夜は思考が弱くなる。心の隙間にスッと入り込んでくるのは、いつも「自己否定」だ。

司法書士の看板に押し潰される瞬間

「先生」と呼ばれるたびに、ちょっと気が引ける。そんな立派なもんじゃないよと思いつつ、期待に応えなきゃいけないプレッシャーも感じてしまう。司法書士という肩書きが、自分にとって誇りである反面、鎧のように重くなる夜がある。「看板」が自分の存在以上の意味を持ってしまう。

専門職だからって全知全能ではいられない

依頼者からの質問に即答できなかったとき、「先生でもわからないんですね」と冗談交じりに言われると内心焦る。こっちは人間だし、万能じゃない。でも「司法書士だからできて当然」という周囲の期待が、たまに重荷になる。答えを持っていない自分が許せないのは、自分自身かもしれない。

でもミスは絶対に許されない空気感

日常の業務でも、ひとつのミスが大きな損害につながる。だからこそ慎重にやっているつもりでも、「間違えたら終わり」という意識が常にある。事務所に一人しか事務員がいないという状況では、最終チェックもすべて自分。疲れていても見落としは許されない。毎日が綱渡りだ。

独立したのに自由がないという矛盾

独立すれば自由だと思っていた。でも実際は違った。責任もプレッシャーも、自分ひとりで全部抱えることになる。「もう疲れたな」と思っても休むわけにはいかない。クライアントは待ってくれないし、代わりもいない。「自由」を得たはずなのに、「逃げられない日々」に縛られている気がする。

たった一人の事務員にすら気を遣う日々

人を雇うというのは、それだけで責任が生まれる。事務員は良くやってくれているが、体調が悪そうな日には「無理させてるんじゃないか」と不安になる。自分のことで手一杯なのに、気遣いがまた心を削る。でも、そういう優しさが自分の良さでもある…と思い込まないと、やっていられない夜もある。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。