せっかくのオフに限って通知が鳴る
数ヶ月ぶりのオフ。意を決して誘ったデートの最中だった。場所は地元でも少し洒落たレストラン。少し緊張しながらも、相手の笑顔にほぐれてきたところだった。ところがその時、ポケットの中でスマホが震えた。嫌な予感。画面をのぞくと、「補正通知」の文字が目に飛び込んできた。瞬間、頭が仕事モードに引き戻された。これだから、休日でも完全には心が休まらない。司法書士という仕事は、まるで自分の生活すべてに忍び込んでくる。
スマホの震えが心をざわつかせる
スマホを見てしまった時点で、もう心はデートに集中できなくなっていた。相手の話す言葉が頭に入ってこない。笑顔で相槌は打つけれど、心は補正対象の書類に飛んでいた。何がまずかったのか、送った書類を頭の中で思い出し、手元にない資料を確認しようとしてもできるはずもなく、ただ焦りだけが募る。「ああ、今じゃなくても…」と思っても、通知が来た以上は無視できないのが性。仕事とプライベートの線引きが曖昧な職業のつらさが、ここにある。
補正通知の文字が頭から離れない
補正通知というのは、まるで「お前、ちゃんとやってないぞ」と突きつけられる赤点のようなものだ。司法書士にとっては日常茶飯事とはいえ、やはり心にはくる。しかもその通知が、普段ならもっと冷静に処理できるのに、こともあろうにデートの最中に届く。もはや罰ゲームかと思った。書類のどの部分に問題があったのか、字句の選定だったか、添付資料の不足か……頭の中は確認作業でいっぱいだった。相手の笑顔すら、ぼやけて見えてしまう。
楽しい時間と現実のせめぎあい
「ごめん、ちょっとだけ…」とスマホに目をやる。もうその時点で空気は変わってしまっていた。自分でもわかる。相手も少し黙る。申し訳ない気持ちと、仕事への義務感のせめぎあいで、胸の中がぐちゃぐちゃだった。結局、その後は話も弾まず、なんとなく解散。帰り道、自分の人間性に落ち込んだ。どうしてうまく切り替えられないのか。仕事に誇りを持っているはずなのに、なぜか情けない。そんな夜は、何よりもしんどい。
予定の調整すら気が重い
この日だけは、と心に決めていたはずだった。書類も前日に出し終えて、準備万端のはずだった。でも、それでも来るのが補正通知。司法書士という職業に「完璧なタイミング」など存在しないのかもしれない。どれだけ前もってスケジュールを調整しても、突発的な事態は必ず起きる。補正一通に対しても、関係先に再度説明をしなければならない。しかも迅速に。デートの予定も、遊びの計画も、気軽には組めない理由がここにある。
補正で戻った書類の山に怯える
補正通知が来ると、そこから一気に芋づる式に修正作業が始まる。「この件だけで済めばいいけど…」と思いつつ、他の書類の不備にも気づいてしまった時の絶望感ときたらない。実際、一度補正が入ると、他の関連案件まで不安になって見直す羽目になる。机の上には、再確認すべきファイルがどんどん積み上がっていく。それを見るたび、「何やってんだろな、俺」と心の中でつぶやく。疲れていてもやらなきゃならない、それが現実。
その場で確認するか悩む心理戦
デート中だったあの日、スマホに届いた補正通知を即座に開くか、あとで見るか、心の中で何度も葛藤した。見れば気になるし、見なければ気になって仕方がない。結果、見てしまい、後悔する。相手との時間を台無しにしたこと、自分を律しきれなかったこと、どれも情けなかった。でも、それが今の自分の性分。「気にしないふり」ができるほど、器用ではない。むしろ、不器用なまま仕事と向き合うしかないんだと、その時思った。
プライベートと仕事が地続きな日常
司法書士の仕事は、区切りがつきにくい。定時もなければ、突発も多い。相談はいつ来るか分からないし、補正や訂正もこちらの都合ではない。その結果、プライベートと仕事の境目が曖昧になっていく。気がつけば、「趣味って何だっけ」と考えている自分がいる。人生、仕事だけじゃつまらないとわかっていても、結局は仕事のことで頭がいっぱいになる。これが、今のリアルだ。