机の上が見えなくなった朝
朝、事務所に着いて最初にするのは、机の上に積まれた書類の高さを眺めてため息をつくこと。昨日の夕方にはなんとか片付いたと思っていた書類が、朝にはさらに倍増しているような感覚すらある。印刷された契約書の束、登記申請に使う添付書類、補正待ちの書類……。45歳を過ぎた今でも、書類に囲まれる生活から抜け出せない現実に、なんとも言えない気持ちになる。机の木目なんて、最後に見たのはいつだったか。
始業前から重たかったあの書類の束
今日の書類の山の主役は、不動産の名義変更に関する案件だった。いくつもの相続人が関係していて、しかも関係図を作るにも戸籍が足りない。朝から法務局の補正指示も飛んでくる。事務員さんが出勤する前にやっておこうと目論んでいたが、30分で心が折れた。まるでバッティングセンターで160キロのボールを延々と打たされるような気分だ。
昨日やり残したことが朝イチでのしかかる
昨日、夕方に届いた追加書類。疲れていたのもあって「明日やろう」と放置した結果、それが今日の自分を苦しめる原因となった。朝イチの気力で一気に処理しようとしたけれど、予想以上に手間がかかる。添付書類に不備があって、また確認して電話して、修正して……。あの時ちょっと無理してでも手を付けておけば、という後悔が静かに心をむしばむ。
「あれ?これ今日中?」という電話にうんざり
そんな状況の中、依頼人からの一本の電話。「この間お願いした件、今日中に処理って話でしたっけ?」という何気ない確認に、こちらは一気に心拍数が上がる。いや、そんな話はしていない……はず。でも言われると「もしかして」と不安になる。結局、約束はしてなかったとわかっても、ひとつひとつの言葉に動揺してしまう。こうしてまた予定が狂い、山が高くなる。
一人事務所あるある 書類は誰も減らしてくれない
基本的に、私のような小さな事務所では、仕事のほとんどを自分でやらなければならない。書類がどんなに溜まっていても、「誰かがやってくれる」という甘えは通用しない。事務員さんは確かに助けになるが、最終判断や責任はすべて私にかかってくる。それが独立の代償だということは、わかっているけれど、現実はなかなか厳しい。
事務員さんに頼めるのは限界がある
もちろん事務員さんはよく頑張ってくれている。でも、専門的な判断が必要な書類や、登記の細かいチェックとなると、どうしても自分で見るしかない。たまに「先生、これどうしましょう?」と聞かれると、「それがわかったら苦労せんわ」と返したくなるのをこらえる。結局、今日もまた、頼れるのは自分だけということを突きつけられる。
外出と内勤のバランスが崩れると地獄
午前中に予定されていた役所訪問。30分で終わる予定が、待たされて1時間超。その間にも事務所のFAXは鳴りっぱなし。戻ったら、電話のメモが3件、メールは15件以上溜まっている。外出しても気は休まらず、戻ったら倍返し。どこにいても仕事に追われている感覚は、まるでランナーが水を飲む間もなく次のリレーに突っ込んでいくような、そんな疲労感がある。
終わりの見えない山に立ち向かう気力
一つ片付けたと思ったら、また一つ増える。終わりが見えないと、やる気を出すのも難しい。書類の山の前で「どうして俺はこんなに頑張ってるんだろう」と虚しくなる瞬間が、日に何度もある。でも、投げ出すわけにもいかない。少しでも進めるしかない。
コツコツ処理しても減らないという絶望
書類というのは、減っていく実感がなかなか持てないものだ。たとえ10件処理しても、気がつくと次の10件が来ている。終わりが見えないからこそ、モチベーションも維持しづらい。頭では「一つずつこなせばいい」とわかっていても、心がついていかないのが現実だ。
午前中に一件も終わらない焦り
時計を見て驚いたのは、すでに正午を回っていたのに、まだ一件も完了していなかったこと。これは地味に堪える。達成感がないと、人間は本当に疲れるものだ。メールの返信を書いては途中で電話に中断され、そのたびに思考がリセットされる。脳が散らかっていくような感覚に襲われる。
やっと終わっても「これもお願いします」の連鎖
やっと一件片付けたと思ったら、すぐに次の依頼が飛んでくる。「ありがとうございます。ついでにこれもお願いできますか?」の一言が、体にずしりと重くのしかかる。こちらの都合なんてお構いなし。信頼されている証拠とはいえ、ちょっとは気遣ってくれても……と愚痴りたくなる。
それでも明日も書類はやってくる
どれだけ今日頑張っても、明日になればまた新しい書類が届く。エンドレスに続くこの日常。それでも仕事だからやるしかない。司法書士って、こんなにも地道で孤独な仕事なんだと、つくづく思う。でも、そんな毎日でも、ふとした瞬間に「ありがとう」と言われると救われるのだから、やっぱり不思議なものだ。
終わらないけど終わらせるしかない
逃げても誰かがやってくれるわけじゃない。目の前の山を崩していくしかない。その積み重ねだけが、自分の信用につながる。やりがいとか、達成感とか、そんな立派な言葉はもう求めていない。ただ、黙々とやる。それが、今の自分にできる唯一のことだ。
積み重ねが信頼だと信じている
小さな依頼を確実にこなすこと。地味な書類を丁寧に扱うこと。目立たなくても、それが信用を築いていく。華やかさはないけれど、「この人なら大丈夫」と思ってもらえるような仕事を続けたい。今日一日が誰かの安心につながっていると信じて、また明日も戦う準備をする。
同じように踏ん張ってる誰かへ
今、この記事を読んでくれているあなたも、きっと何かと戦っているんだろうと思う。司法書士であれ、別の仕事であれ、山は違えど登っている道は似ている気がする。だからこそ、無理せず、それでも前へ。一緒に今日を乗り越えた者同士、また明日もなんとかやっていこう。