身分証の期限が切れてたそれだけで崩れた一日

身分証の期限が切れてたそれだけで崩れた一日

朝イチで発覚した身分証の期限切れ

朝一番、役所の窓口でふと気づいた。「あれ、免許証…?」差し出した身分証を見た職員が一瞬間を置いて言った。「あ、こちら、期限切れですね」。その瞬間、背筋が凍った。何かを忘れていたような気はしていた。けれどまさか、こんな初歩的なことで一日の予定が全部吹き飛ぶとは。自分が信じられなかった。

窓口で言われた一言が地味に刺さる

「有効期限、切れてますね」──言い方は柔らかいのに、その一言はやたらと重くて、じわじわ効いてくる。まるで自分の怠慢がすべて暴かれたような気がした。恥ずかしさ、情けなさ、そして「またやってしまった…」という自己嫌悪の波。昔、試合前にユニフォームを忘れて怒られた記憶がよみがえる。

「失効ですね」の破壊力

手続きは止まり、再発行には日数がかかると言われた。「失効ですね」という言葉が何度もリフレインする。たかがカード一枚の話なのに、信頼や信用といった言葉の影がちらつく。今まで積み上げてきたものが、わずか一つの確認ミスで揺らいでしまう感覚。気が抜けて、座り込みそうになった。

事前確認ってなんだっけという自問

普段、クライアントには「事前確認が大事です」と偉そうに言っている自分。そのくせ自分の身分証の期限すら見ていなかったのかと思うと、恥ずかしさで顔が熱くなる。確認なんて習慣にしておけばいいだけなのに、それすらできていないという現実。仕事の信頼って、こういうところで問われるんだろうなと思った。

その場で全部やり直し宣告を受ける

申請は一旦すべて取り下げ。再発行された身分証が手元に来るまで、何も進められないという現実を突きつけられた。午前中に済ませる予定だった手続きも、お客様との面談も、全部リスケ。小さなミスが大きな波紋を広げていく。電話一本、メール一通、謝る作業が続く。こういう日って、ほんとに心がすり減る。

予定はすべて白紙に戻った

Googleカレンダーはスカスカになった。さっきまで詰まっていた予定が、すべてグレーに変わっていく。仕事のスケジュールがゼロになると、なぜだか自分の存在意義も消えたような気がしてしまう。何のために毎日頑張ってるんだっけと、ふと立ち止まってしまう。たった一つの期限切れが、自分をこんなにも揺さぶるとは。

お客様への連絡も気まずい

「本日予定していた面談は、こちらの不手際により延期をお願いしたく…」と、メールに打ち込む指が重かった。誠意を込めても、相手にどう思われるかはわからない。信頼を得るのは時間がかかるのに、失うのは一瞬だと痛感する瞬間だった。電話越しの「大丈夫ですよ」には救われたけど、それが余計につらかった。

スケジュールが音を立てて崩れていく

カレンダーを見ては溜息。前倒しで進めていた案件が、全部後ろ倒しになる。「効率よく動けたはずなのに…」という後悔ばかりが募る。ちょっとしたことが、こんなにも波及していくのかと驚くと同時に、日々の“確認作業”の大切さが身に沁みた。もう今日という日は完全に“崩れた日”として記憶されるだろう。

焦りと自己嫌悪のループ

一つの失敗が、心の中でどんどん大きくなっていく。自分は信用される司法書士なのか、本当に向いているのか。こんな日には、いつものような自信も余裕も消えてしまう。過去の小さなミスまで掘り返し、自分を責める。冷静にならなきゃと思っても、感情のコントロールがうまくいかない。ひたすら内側に沈んでいく。

自分だけ時間が止まったような感覚

外では車が走り、人が動いているのに、自分だけ取り残されているような気分になる。時間は流れているのに、自分の一日はまるで止まってしまったかのよう。事務所に戻っても、書類を見ても、頭が動かない。こういう時に限って、誰にも頼れないのがまたつらい。事務員さんに愚痴すら言えなかった。

情けなさと苛立ちと少しの諦め

「なんでこうなるんだよ…」と心の中で何度も繰り返す。でも原因は自分だ。誰のせいにもできない。ただただ情けない。でも完璧にはなれない自分に苛立ちも感じる。いつもギリギリの綱渡りで仕事をしているような日々。今日は落ちた、その縄が切れた日だ。どこかで「まあ、そういう日もあるか」と思おうとしてる。

無駄になった一日が教えてくれたこと

何も進まなかった日。でも、この「無駄」が教えてくれるものもある。確認の重要さ、余裕の大切さ、そして自分の脆さ。全部痛感した。しんどい一日だったけれど、同じ失敗は繰り返さないようにしようと思えたことは、ひとつの収穫だったのかもしれない。傷は残るけれど、意味のない日はない、と思いたい。

確認という仕事の土台を見直す

仕事のスキル以前に、人としての確認力を問われる場面だった。自分のことも、相手のことも、社会との接点も、すべて「確認」から始まる。それを怠ると、今日みたいな一日になる。今回は身分証だったけれど、もし契約書だったら…と考えるとゾッとする。確認って、つまらなくて面倒だけど、それが土台なんだ。

笑い話になるにはまだ時間がかかる

「期限切れてました」って笑って話せるには、まだ時間がかかりそうだ。心の中ではまだ消化しきれていない。でも、いつか同業者との飲み会で、「あれさぁ…」と笑って言える日が来ると信じている。その時に、誰かのミスも笑って許せるようになっていたら、それがこの日の収穫かもしれない。そう思って、今日は寝よう。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。