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誰も見てない場所で僕は今日も働いている
司法書士という仕事は、外から見ると地味だ。派手なプレゼンもなければ、拍手が起きるようなシーンもない。ただ静かにパソコンに向かい、黙々と書類を整える。電話のベルが鳴れば手を止め、法務局に走れば汗だくで戻ってくる。そんな毎日を、誰が見てくれているのだろう。誰にも気づかれない努力が、積み重なっていく。たとえそれが見えなくても、自分だけは知っている。この仕事の重さも、静かにこなしている自分の姿も。
派手さはない仕事だけど地味な努力は積み重なる
毎日、目を通すだけで肩がこるような契約書。間違いが許されないからこそ、一文字ずつ確認する。表には出ないが、その緻密な作業が「信頼」になる。友人に仕事内容を話しても、「へぇ〜、難しそうだね」で終わる。でも本当は、細かいチェックに何時間もかかっているし、何度も修正してようやく完成する。スポットライトが当たることのない裏方の作業。でも僕にとっては、それが仕事の“本番”なんだ。
登記が一発で通る裏には無数の確認作業がある
法務局に提出する書類が一発で通ったとき、お客さんには「やっぱりプロですね」と言われる。でもその裏では、登記簿の確認、不動産の地番チェック、添付書類の取り寄せなど、実に多くのプロセスがある。住所の番地が1文字違えば、やり直し。表現のゆれをどう処理するかで、頭をひねる。成功の陰には、地味で孤独な確認作業が必ずあるのだ。
書類1枚のために何度も法務局とにらめっこ
「この書類、補正ですね」と窓口で言われた瞬間の絶望感は、何度経験しても慣れない。たった1枚の不足書類、たった一行の表記ミスで、すべてがやり直しになる。お客さんには見せないけれど、内心では悔しさと情けなさが入り混じる。法務局とのやりとりは、まさに一球入魂。元野球部として言うなら、毎回が勝負のピッチングだ。たとえ結果が見えなくても、全力投球するしかない。
「ありがとう」と言われないことに慣れてしまった
仕事をしても、感謝されることは少ない。うまくいって当たり前、失敗すれば批判。そんな空気の中で働いていると、「ありがとう」という言葉がどれほど尊いか身にしみてくる。最近では、感謝されないことに慣れてしまっている自分に気づいて、少し切なくなった。昔はもっと、人に喜んでもらいたいと思っていたのに。
お客さんの期待値が高すぎて、ほぼ減点方式
「こんなに手続きって時間かかるんですか？」「もっと早く終わると思ってました」といった言葉は、日常茶飯事。期待されるのはありがたい。でもその期待が、現実と乖離していることも多い。手続きを正確に、かつスピーディーに進めるには、慎重な準備が欠かせない。なのに評価は“結果のみ”。まるで点数をつけられているような気分になる。
結果だけ見られる仕事のやるせなさ
どれだけ苦労して書類を整えても、「ありがとうございました」の一言で終わってしまう。言葉以上の手応えを感じることは、そう多くない。スポーツなら数字や勝敗で努力が報われることもある。でも司法書士は違う。結果は見えるが、その過程は見られない。報われないような気がして、夜ふとため息が漏れる。そんなときは、自分で自分をねぎらうしかないのだ。
事務員ひとりの小さな事務所でできること
この小さな事務所で、僕と事務員だけでまわしている。地方の片隅で、こじんまりと。それでも、相談に来てくれる人がいる限り、ここでできることを丁寧にやるしかない。大手のように分業もできない。だからこそ、ひとつひとつの仕事に、全部自分の責任が乗っかってくる。重い。でも、それがこの場所のやり方だ。
誰にも頼れない分、全部自分で背負い込んでしまう
「ちょっと手伝ってくれ」と気軽に言える相手がいない。一人で悩み、一人で決めて、一人で動く。相談できる上司も部下もいない。だから間違いを恐れて余計に慎重になる。結果、時間も労力もかかる。でも、誰かに迷惑をかけたくない一心で、自分の中で処理してしまう。その積み重ねが、いつか自分を疲弊させるとわかっていながら。
休みを取るのに理由が必要な空気
有休？まとまった連休？夢みたいな話だ。事務員に「休んでくださいね」と言っておきながら、自分は気軽に休めない。留守にしても代わりがいない。郵便物は溜まるし、電話は鳴りっぱなし。仕事が遅れれば、信頼にも影響が出る。「休む＝罪悪感」という空気が、無意識に染みついている。
それでも一緒に頑張ってくれてる事務員には感謝してる
唯一の事務員。文句も言わず、毎日きちんと出勤して、きっちり仕事をこなしてくれる。僕の愚痴にも付き合ってくれるし、気づかない小さなミスも指摘してくれる。たまに「あの人、ほんとによくやってるね」ってお客さんに言われると、自分のこと以上に嬉しくなる。僕一人じゃ続かなかった。感謝の気持ちは、もっとちゃんと伝えないといけないな。
