電車には間に合うのに恋には乗り遅れる

電車には間に合うのに恋には乗り遅れる

時間にはやたらと正確な性格

昔から「時間だけは守れ」と言われて育ってきたせいか、5分前行動が染みついています。学生時代の野球部では、集合が1分遅れただけで全体責任でしたし、今の司法書士という仕事も、期限が命のようなもの。登記の提出期限を1日でも過ぎれば、依頼人からの信頼は失われます。だからか、僕の中で「遅れること」は悪であり、常に時間との勝負をしているような感覚があるのです。

司法書士としての時間感覚はシビアで当然

業務の多くが「期日」に追われる仕事です。たとえば相続登記なら、依頼を受けてから書類収集→チェック→申請と段取りよく進めないと、関係者からの連絡一つ遅れるだけで全体が止まります。僕はその歯車を止めたくないという思いから、常に事前に段取りを立て、タイムスケジュールを綿密に組みます。それが癖になって、プライベートでも電車は必ず一本早い便、待ち合わせは15分前集合。当然のように、時間には正確な人間だと思われています。

遅刻は信用を失うという強迫観念

僕にとって、時間に遅れることは信用をなくすことと同義です。過去に一度だけ、役所での用事が長引き、依頼者との面談に5分遅れてしまったことがあります。その時の相手のちょっとした顔の曇りが今でも忘れられません。たとえ「大丈夫ですよ」と言われても、内心では「この人、時間にルーズなんだな」と思われてるんじゃないかと考えてしまうのです。その一件以来、遅刻に対しての恐怖感のようなものが染みついてしまったのかもしれません。

書類の締切と登記の期限に追われる日々

司法書士の仕事には「余裕」という言葉がほとんど存在しません。役所は平日しか動かず、依頼者の都合も限られているため、限られた時間の中でタスクを詰め込み続ける毎日です。そんな生活が長く続けば、もはや「時間に正確」というより「時間に縛られている」に近いかもしれません。でも、どれだけタイトなスケジュールでも崩さないのが僕の性分。だからこそ、時間に正確な自分を保てているのだと思います。

事務所の中でも時間にうるさい自分

事務所では、唯一の事務員さんに対しても、つい「それ今日中でお願い」と口うるさく言ってしまいます。彼女は本当に頑張ってくれているのに、僕の性格上、スケジュールが崩れると不安になってしまう。特に登記申請の前日や期限直前にはピリピリして、必要以上に急かしてしまうことも。きっと彼女も「この人、細かくてうるさいな」と思っているはずですが、そこに反省と申し訳なさを感じています。

事務員にもつい口うるさくなってしまう理由

言わなくても分かってるはずなのに、つい「午後3時までにファイル出して」と再確認してしまう。何度も確認することで自分を安心させたいだけなんです。事務員さんはしっかりやってくれてるのに、僕の不安をぶつけてしまっているんだと思います。実際、事務所を離れた後、ひとり反省会をして「また言い過ぎたな」と自己嫌悪に陥ることもあります。性格なんでしょうね、本当に。

電話の時間もきっちり5分単位

電話でも「今、2分で終わらせよう」と無意識に考えています。相手が世間話をし始めると、心の中で「この後、何分押すかな」と計算してしまう。友人との電話でさえも、「そろそろ10分だから切るか」とタイマーを見ている始末。こんなに時間に正確な性格なのに、なぜか恋愛になるとまるで逆の現象が起きるんです。まるで別人のように、タイミングを見誤るんです。

恋愛にはなぜかタイミングが合わない

仕事では1分も遅れないのに、恋愛となると「気づいたら終電が出ていた」ようなことばかり。明確な締切や期日があるわけでもなく、「今だ」と思った時にはもう相手の気持ちは冷めていたり、別の誰かと付き合っていたり。なぜか恋愛においてだけ、僕はいつも後手後手にまわってしまうのです。

思い返せばチャンスはあったのかもしれない

振り返れば、学生時代から何度か「あれは脈アリだったのかも」と思う場面はありました。でもその時は、「いやいや、考えすぎだろ」と自分に言い聞かせてしまう。あるいは「今は部活が忙しいから」や「資格試験に集中しないと」と、理由をつけて距離を置いてきた。その結果、せっかくのチャンスをことごとく見逃してきた気がします。

でもその時も仕事のことばかり考えていた

仕事モードが切れないタイプなんでしょうね。誰かと飲みに行っても、どこかで「明日の登記の件、漏れないかな」とか「裁判所の書類ちゃんと揃ってるかな」とか考えてる。目の前の相手に集中できていない。そんな空気って、たぶん相手にも伝わってたんだと思います。余裕のなさが、そのまま恋愛の不成立に繋がっていたのかもしれません。

「いまじゃない」と先延ばしにする癖

何かにつけて「落ち着いたら連絡しよう」とか「タイミングを見て誘ってみよう」とか、いつも言い訳をしていた気がします。実際、その「落ち着いたら」は永遠に来ないまま、相手には別の人が現れてしまう。先延ばしにするたびに、自分のチャンスが薄れていくことに、ようやく気づきました。でも、それに気づいた時にはもう遅いんですよね。

恋愛下手な司法書士という生き物

恋愛において自分はどうもうまく立ち回れない。仕事のときのような段取りやマニュアルが存在しない世界で、僕はただの不器用なおじさんになる。話し方も、間合いも、視線の向け方すら分からない。そうなると、どうしてもまた「次のタイミングで」と逃げ腰になってしまうのです。

自分の感情を言語化するのが苦手

普段の業務では、事実関係や論点を整理して文章にまとめるのは得意です。でも自分の感情になると、途端に語彙が貧弱になります。「好き」と言えば軽いし、「好意を抱いてます」なんて堅すぎる。結局、変に言葉を選びすぎて、沈黙してしまう。だから気持ちを伝えられない。司法書士は言葉で仕事をする職業なのに、こと恋愛に関してはまるで小学生のようなんです。

相手の気持ちを読むより登記識別情報の確認が得意

たとえば、女性が「今日は寒いね」と言ったとします。その裏に「手をつなぎたい」とか「距離を縮めたい」なんて気持ちが隠れていることに、僕はまったく気づかない。「ああ、気温が10度下がったのか」と素で返してしまう。相手の顔色や空気の変化を読むよりも、書類のチェックや押印漏れの確認のほうがはるかに得意なんです。

わかってるけど踏み出せないその一歩

頭では「行動しなきゃ何も始まらない」と分かってます。でもその一歩が踏み出せない。断られたらどうしよう、気まずくなったら困る…そんな考えが先に立ってしまう。年齢を重ねれば重ねるほど、余計なことを考えてしまって、若い頃のように勢いだけでは動けません。「この年で失敗したら恥ずかしい」そんなプライドが、ますます恋愛を遠ざけているような気がします。

恋のタイミングは時間厳守では測れない

電車の時刻表のように、「恋は17時発」なんて分かっていたら、僕は確実に間に合う自信があります。でも恋愛にそんなタイムテーブルはありません。むしろ、予測不可能な展開の連続。だからこそ、自分の中の時計だけを頼りにしていてはダメなんですよね。

スケジュールに書けないからこそ難しい

仕事なら「いつまでに何をやる」と紙に書いて進めればいい。でも恋愛にはゴールも納期もない。進行管理もできなければ、フィードバックもない。だから難しいんです。計画好きな僕にとって、恋愛のこの「曖昧さ」こそが一番の壁かもしれません。予定に入れられない感情の処理は、仕事では学ばなかったことばかりです。

だからこそ一歩の勇気が必要だった

恋のタイミングは、正確さではなく「今だ」という直感と勇気。どれだけ頭で考えても、最終的には心で動くしかない。その瞬間に動けた人だけが、一歩先に進めるのだと思います。僕がそれを恐れてばかりいたせいで、何度も恋を逃してきた。後悔は、いつも後からやってくるのです。

行動に移せるかどうかは相手次第ではなく自分次第

結局、恋愛のタイミングを逃すのは、自分が動けなかったからなんですよね。相手の気持ちがわからないからと様子を見て、遠慮して、タイミングを図っているうちに相手の気持ちはどこかへ行ってしまう。勇気を出すのは「今しかない」と思ったその時なんだと、ようやく気づきました。

もう遅いと思ってしまう自分との闘い

「今さら誰かと恋愛なんて」「この年齢で恋なんて痛いかな」そんなことを思いながら、また今日も家に帰ってカップ麺をすすってます。でも、もう遅いなんてことはないのかもしれません。少なくとも、心が何かを求めてるうちは、チャレンジしてもいいのかもしれません。

遅れた電車でも乗れることはある

昔、電車を一本逃したとき、「次があるから」と思ってぼーっとしてたら、遅れていた先発がやってきて乗れたことがあります。恋愛も似たようなもので、「もう終わった」と思っても、ふとしたことでチャンスが巡ってくることもある。そんなとき、ちゃんと一歩踏み出せるように、自分の中の時計を止めないようにしていたいと思います。

チャンスは時刻表どおりには来ない

人生も恋も、想定どおりには進まないからこそ面白いのかもしれません。完璧な準備や理想的なタイミングなんてものは存在しない。その瞬間をどう生きるかがすべてなんでしょうね。僕も、次のチャンスには「時間ぴったり」に乗れるように、心の準備くらいはしておこうと思います。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓