独身貴族って誰が言い出したんだ

独身貴族って誰が言い出したんだ

独身貴族という言葉に感じる違和感

世の中には、独身でそれなりに仕事をしている中年男性を見ると「独身貴族」と呼ぶ風潮がある。しかし実際にその当事者である私からすると、「貴族」という表現にはどうにも違和感がある。確かに家庭を持っていない分、自由な時間やお金があるように見えるかもしれない。でも、その裏には孤独や寂しさ、社会的な偏見、年齢と共に増していく不安が渦巻いている。実態を知らずに与えられる称号ほど、むず痒くて空々しいものはない。

貴族ってそんなに優雅でしたっけ

「貴族」って、もっとこう…お抱えの料理人がいて、白馬に乗って、晩餐会に呼ばれて…そんなイメージじゃないですか。私の一日は、朝から晩まで地味な書類の山と格闘し、コンビニ弁当をデスクでかき込むことで終わる。週に一度の休みも、買い出しと掃除と選択で終わる。最近じゃ、趣味だった草野球も足腰の痛みで引退気味。これが「貴族」の現実です。優雅さなんて、まるでない。

エアコン代すら気にしてるんですけど

電気代の高騰が止まらない昨今、うちの事務所でもなるべく節電を心がけている。でも一人きりで残業する夜なんか、「もう少しだけ我慢しよう」ってエアコンを切ることもしばしば。そんなときにふと、「あぁ、俺ってほんと貴族だわ」って皮肉を込めて呟いてしまう。事務員さんがいる昼間なら笑い話にもできるけど、夜の無人の事務所で一人呟くそれは、なんとも切ない。

スーパーの見切り品コーナーにいる「貴族」

「独身貴族」のリアルな生態系として、スーパーの閉店前の見切り品コーナーは外せない。割引シールを追いかけて、誰よりも早くお惣菜を手に取るその姿が「貴族」なら、きっと世界は皮肉でできている。私なんて、手に取ったエビフライを隣の高校生に譲ってしまう優しさすら持ち合わせてしまってる。「貴族」って、こんなに切なくて庶民的なものでしたっけ?

実態は「孤独と責任のワンオペ体制」

うちの事務所は事務員さんが一人。それ以外は全部、私がやる。登記も、相続の相談も、営業も、資料作成も、もちろん会計も。時にはお茶出しも掃除もゴミ捨ても。一人司法書士事務所の「貴族」は、もはやワンオペ状態。これで「自由そうでいいですね」と言われるたびに、苦笑いしかできない。自由という名の「全部自分」状態だ。

誰も褒めてくれないけど、誰かのためには働いてる

仕事って、結局誰かの役に立っているから成り立つんだと思う。だけど、それを直接褒めてくれる人はほとんどいない。家に帰れば誰もいないし、日報にスタンプを押してくれる上司もいない。だけど、お客さんの「助かりました」の一言だけで次の一日をなんとか迎えられる。そんな自分が、ほんの少しだけ誇らしいし、ほんの少しだけ虚しい。

電話も来客も郵便もすべて自分でさばく日々

事務員さんが休みの日は地獄絵図だ。電話対応して、来客に頭を下げて、郵便受け取りながら印鑑を押して、急ぎの書類をPDFで送る。お昼を食べる隙もなく、気が付けば夕方。「一人でよくやってますね」と言われることがあるが、内心では「やらないと終わらないだけです」と返したくなる。やるしかない日々に貴族の余裕はない。

そもそも誰が言い出したのか独身貴族

この言葉、いつから使われるようになったのかと調べてみたら、どうやらバブル時代に独身で高収入な男性を指していたらしい。確かに当時は給料もよく、消費も盛んだったのかもしれない。だが今は違う。年金制度の不安、税金の重圧、健康不安…貴族どころかサバイバル生活に近いのが現代の独身中年のリアルだ。

バブル時代の幻想に今も付き合わされてる

昭和の終わり頃、テレビドラマで「独身貴族」という言葉が生まれたらしい。その頃は一人暮らしで外車に乗って、高層マンションでワインを嗜む姿が理想だったのだろう。でも現実は、軽自動車で市役所に行き、レトルトカレーを食べて寝る毎日。幻想に付き合わされてるようで、ちょっと腹が立つ。

独身=自由で金持ちってどこの世界線

独身って、自由だよね、お金も自分で使えるし…って言われるけど、そんな単純なもんじゃない。自由には責任が伴うし、お金も「全部自分のため」には使えない。将来への備え、親の介護、設備投資、そして何より不安の解消。自由に見えて、実は縛られている。そんな矛盾のなかで、今日も目の前の仕事をこなしている。

ローンと確定申告と書類の山しかない日常

日々の生活は現実的すぎて、貴族のイメージとはほど遠い。ローン返済日を気にして、確定申告の準備で休日も潰れ、取引先とのやり取りで夜までメールチェック。登記書類の誤字脱字に神経を尖らせながら、夕飯は冷めた味噌汁。誰がこんな生活を「貴族」だと言ったんだろう。むしろ書類貴族、もしくは孤独戦士と名乗りたい。

しがない司法書士
shindo

地方の中規模都市で、こぢんまりと司法書士事務所を営んでいます。
日々、相続登記や不動産登記、会社設立手続きなど、
誰かの人生の節目にそっと関わる仕事をしています。

世間的には「先生」と呼ばれたりしますが、現実は書類と電話とプレッシャーに追われ、あっという間に終わる日々の連続。





私が独立の時からお世話になっている会社さんです↓