朝のドタバタはもう日常
毎朝、目覚ましが鳴る前に目が覚めるのは年のせいか、仕事のせいか。寝た気がしないまま布団から這い出て、冷えた台所でインスタントコーヒーを入れる。もうそれが自分の「出勤の儀式」みたいになっている。司法書士という肩書きは、時間の自由があるようで実際は全然ない。朝からの依頼メール、電話、事務員さんの「これどうしましょうか」の声で、今日もまた始まる。「今日くらいは穏やかに」と思っても、そんな日は年に数回あるかないかだ。
コーヒー一杯で始まる戦い
コーヒーを飲んで、深呼吸して、「よし」と声を出してパソコンを開く。でも、その「よし」は気合いというより諦めに近い。朝のうちにやっておきたい作業は、たいてい予期せぬ電話で遮られる。登記の補正依頼や、急な相続相談。こっちの予定なんて関係ない。もう慣れたけど、やっぱりきつい。「何のために早起きしてるんだっけ？」と自問自答しながら、気づけばまたコーヒーのおかわりをしている。
出勤前から「今日も無事に終わってくれ」と祈る
昔は「今日はあれをやって、これも進めよう」と前向きな気持ちで朝を迎えていた。でも今は違う。出勤前からすでに「お願いだから何事も起きないで」と心の中で祈っている。トラブルが起きるのは業務時間内とは限らない。書類の不備や、お客さんの勘違い。それに振り回されるのが日常になってしまった。特別なことは望まない。ただ、無事に一日を終えられれば、それで十分だ。
依頼が来るのはありがたい、けど…
仕事があるというのは、ありがたいことだ。世の中には仕事がなくて困っている人もいるし、そう思えば贅沢な悩みかもしれない。でも、それでもやっぱり「ありがたい」だけではやっていけない。量にも限度というものがある。忙しい＝良いこと、という言葉がどれだけ無責任か、身をもって知っている。
忙しい＝嬉しいとは限らない
一日に何件も電話が鳴り、お客様が絶え間なく訪れると、「儲かってますね」と言われる。でも実際は、時間に追われ、昼飯も食えず、頭の中は常に処理漏れの恐怖でいっぱい。嬉しいという感情よりも、「もう無理かもしれない」と思う瞬間の方が多い。忙しさは数字では見えないストレスを生む。誰かに「大丈夫？」と聞かれたら、それだけで涙が出そうになるくらいには、疲れている。
一人事務所のキャパシティを超える瞬間
事務員さんが一人いてくれるだけでも本当に助かっている。でも、それでも追いつかないときはある。補正対応が同時に三件も来れば、もう頭はパンク寸前。何を優先すればいいかもわからなくなる。そんなときに限って、「今すぐ来てほしい」という飛び込みの電話が入る。キャパオーバーを感じたとき、「ああ、そろそろ限界かもしれない」と、思わず独り言が漏れる。
「回せてる風」だけで乗り切る毎日
外から見ればきっと「ちゃんとやってる事務所」に見えるんだろう。でも実際の中身は、綱渡り。期限ギリギリの処理、夜な夜なのチェック作業、誤字脱字を恐れて何度も読み返す契約書。何とか回っているように見せているだけで、実は綱がほつれかけている。その綱を踏み外さないように祈るような気持ちで、今日もキーボードを叩く。
それでも断れない人情とプレッシャー
「先生にしか頼めなくて」「忙しいのは分かってるんですが…」そんな言葉をかけられると、断れない。地方の司法書士は、業務以上に“関係”を重視される。「困ってる人を助けるのが仕事」という綺麗事ではなく、断ったら次はない、というリアルなプレッシャーもある。だから、多少無理してでも受けてしまう。結局、自分をすり減らすことになると分かっていても。
事務員さんのありがたみを痛感する瞬間
ひとりでやっていた頃もあったが、今思えばどうやって回していたのか不思議だ。事務員さんが来てくれてから、細かな作業やチェック業務に助けられている。とはいえ、完璧ではない。お互いにミスもある。でも、それが人間というものだろう。
ひとつの書類に潜む落とし穴
ある日、相続登記の資料の中に、住所が1文字違っていたことがあった。事務員さんがチェックしてくれていなければ、そのまま提出していた。お客様に迷惑がかかるところだった。あのとき、「ありがとう」とすぐに言えばよかったのに、バタバタしていて伝えそびれた。感謝の言葉を口にするタイミングって、案外難しい。
ありがとうをちゃんと伝えられない自分が情けない
本当は毎日でも「助かってるよ」と言いたい。でも、言えない。男だから、年上だから、というわけではなく、ただ不器用なんだと思う。忙しさにかまけて、感謝を忘れがちになる。でもそれじゃいけない。次に言うタイミングが来たら、今度こそはちゃんと伝えたいと思っている。
午後2時、集中力の崖
一通り午前の対応が終わり、午後に差し掛かると、なぜか頭がぼーっとする。集中力が切れて、電話の相手の言っていることが頭に入ってこない。なのに、そこからが本番だったりする。午後はなぜこうも過酷なんだろう。
電話と訪問と修正と
午後になると、電話の本数も増えるし、訪問の予約も集中する。さらに、午前中に作った書類に誤りが見つかることもある。修正作業は神経をすり減らす。「これ、さっき直した気がするけど…」と不安になり、何度も同じファイルを開いて確認する。その間にも電話は鳴り、来客がある。「もうちょっと静かに仕事したい」それが切実な願いだ。
何も終わらない感覚と焦燥感
リストに書いたタスクは、昼過ぎにはすでに「未処理」のまま残っている。終わらせたいのに、終わらない。集中しようとしても、割り込み作業が増えるだけ。時計を見ても進んでいないように感じる。気持ちだけがどんどん焦っていき、頭の中がカオスになる。こんなに頑張っているのに、何も片付いていないという感覚が、一番つらい。
「これ、明日でもよくない？」との闘い
「この仕事、明日回しても大丈夫かも…」と、心の中のささやきが聞こえる。でも、それを許すと明日がさらに地獄になるのも分かっている。だから、やるしかない。やらなきゃ、自分が困る。誰かが代わってくれるわけじゃない。いつからこんなに孤独な戦いをしているんだろうと、ふと立ち止まりたくなるけれど、それさえも許されない日々だ。
「今日という一日を無事に終えたかっただけ」
毎日が戦場だ。大げさではなく、本当にそう思う。トラブルを未然に防ぎ、時間通りに手続きを進め、ミスなく仕事を終える。それだけで、もう拍手ものだ。誰に褒められなくても、自分だけは「今日も頑張った」と言ってあげたい。
予定通りに終わらない現実
スケジュール通りに終わった日は、数えるほどしかない。思わぬ依頼、書類の差し戻し、そして飛び込みの電話。「今日こそは定時で」と思っても、それが叶った日はいつだったかすら思い出せない。でも、それでも机に残って作業を続ける自分がいる。なぜかって？ それはきっと、「誰かの明日」を守るためだ。
疲れの先にある小さな達成感
最後のメールを送り終えたとき、やっと少しだけ深呼吸できる。「今日も終わった」と思える、その瞬間が救いだ。達成感なんて大げさなものじゃない。でも、小さな「よかった」が心の片隅に灯る。それだけで、また明日も踏ん張れる気がする。
明日もまた同じような日が来る
きっと明日も、似たような一日が待っている。疲れもある。愚痴もまたこぼれるだろう。でも、「今日という一日を無事に終えたかっただけ」という願いを持ち続けている限り、自分はまだ大丈夫だ。そんなふうに、自分をなんとか支えながら、また明日もコーヒーを片手に、静かに闘うつもりだ。
