司法書士という肩書きの裏側
「司法書士」という肩書きは、世間から見ると少し堅くて、信頼されていそうな響きがある。たしかに書類の山と格闘しながら法律に沿った手続きをこなす日々は、責任もあるしやりがいもある。でも正直な話、肩書きだけが一人歩きして、中の人間の疲労や孤独までは誰も気づかない。そんなふうに思うとき、ふと鏡に映る自分が他人に見えることさえある。
見た目は立派？でも中身は孤独と戦っている
「先生」と呼ばれるたびに、どこかでうすら寒い気持ちになる。世間の目には専門職として映っているのかもしれないけど、実際には一人事務所でひたすら書類と電話に追われる毎日。依頼者の前では平静を装っているけど、帰宅後の部屋には会話の相手もいない。立派に見えて、実は毎日が静かすぎる戦いなんです。
年収の話は聞かれるけど、現実は聞かれない
飲み会なんかで職業を言うと、決まって「けっこう稼げるんでしょ？」なんて質問が飛んでくる。だけど、実際には収入が不安定で、手続きをすればするほど責任の重さものしかかる。繁忙期には土日も潰れるし、暇な時期は不安しかない。なのに、そういった現実には誰も興味を持たない。「司法書士＝安定」と思われてるけど、内情はいつも綱渡り。
一人事務所の気楽さと重さ
一人で事務所を回していると、好きなように時間を使える自由さはある。だけど、それは裏を返せば、全部の責任を一人で抱えるということ。事務員は一人雇っているけれど、結局のところ最後に判断を下すのは自分。たったひとつのミスで依頼者の信頼を失いかねない緊張感に、ずっとさらされている。楽そうに見えて、実は重すぎる毎日なんです。
「先生」と呼ばれても、気持ちは空っぽなときもある
何か相談を受けて、「先生、助かりました」と言われるときは確かにうれしい。でも、心のどこかで「自分がこの人の役に立ってるのか？」と疑う瞬間もある。業務に追われる日々のなかで、自分の存在価値を感じにくくなる。そんな気持ちを誰にも言えず、また翌朝もいつものようにスーツに袖を通すのだ。
事務所の看板がプレッシャーになる瞬間
開業してから掲げた看板は、最初のうちは誇りだった。でも時間が経つにつれて、重しのように感じることが増えてきた。「ミスできない」「信頼を裏切れない」というプレッシャーに、毎日押しつぶされそうになる。とくに最近はネットの口コミも気になって、ちょっとしたミスでも一生残るかも…と考えてしまう。看板一つがこれほど重いとは、開業前には想像できなかった。
事務員に頼れない悩みもある
一人事務員を雇っているとはいえ、任せられる範囲には限界がある。専門的な判断や対応はどうしても自分でやらざるを得ないし、逆に業務を振りすぎても負担になって辞められたら困る。結局、自分が全部抱え込んでしまう。頼ることが怖くて、孤立していく。気がつけば、愚痴を言う相手すらいなくなっていた。
なぜ司法書士を目指したのか、今さら考える
若いころ、何か「手に職」をつけようと選んだこの道。あの頃は資格を取れば人生が安定すると思っていた。だけど、気づけばいつも不安と隣り合わせ。自営業の世界は甘くないと、実感する日々が続いている。そんなとき、ふと「なんでこの道を選んだんだっけ？」と自問自答してしまうことがある。
資格を取ったあの日の情熱はどこへ
合格通知を受け取ったあの瞬間は、人生で一番の達成感だったと思う。でも、それはほんの一瞬。実務に出てみれば、わからないことだらけで、誰にも頼れず、調べてばかり。理想と現実のギャップに、だんだん情熱も薄れていった。最近は、モチベーションを保つだけでも一苦労。誇りと義務感だけで、なんとか踏ん張っている感じだ。
「安定してそう」の罠
よく「資格職は安定してるからいいね」と言われるけど、それは半分以上、幻想だと思う。毎月の売上は読めないし、急なキャンセルや無茶な要求もある。行政や金融機関との調整で振り回される日もある。結局、誰かに雇われていた方が安定してるんじゃないか？なんて思うこともある。だけどもう、戻る場所もないんだよな。
開業した瞬間から始まる不安
開業当初は、「自由に仕事ができる！」とワクワクしていた。でも実際には、集客から経理まで全部自分。電話が鳴らない日が続くと、心がざわつく。「このまま依頼がなかったらどうしよう」って。開業はゴールじゃなくてスタートだと、身にしみてわかった。むしろ、そこからが本当のサバイバルだった。
「質問あります？」に本音で答えてみた
よく聞かれる質問に、ほんとのところを話してみようと思う。「司法書士って儲かるの？」「楽しいの？」――この手の質問には、いつも表面だけ答えてきた。でも実際は…なかなかしんどい現実がある。
「儲かるんですか？」にイラっとしつつ答える
正直、「儲かるんでしょ？」って言われるたびに、ムッとする。儲かるかどうかは、地域や得意分野によってまったく違うし、何よりも努力と運が大きい。地元で細々とやっている身からすると、派手な印象だけが一人歩きしてるのがつらい。手取りを考えると、バイトの時給と変わらない月もある。そんな現実、あんまり知られてないんですよね。
業務は多岐にわたるが、理解されにくい
不動産登記、商業登記、相続、成年後見、裁判所提出書類作成――こんなに幅広く対応していても、「書類屋さん」くらいにしか思われていないこともある。説明しようとしても、聞く側に興味がなければ意味がない。たまに「行政書士と何が違うの？」と聞かれて、がっくりくることも。ほんと、わかってもらうのって難しい。
報酬より責任が重いときもある
依頼者にとっては「ただの手続き」でも、こちらは間違えられない。たとえば不動産の名義変更ひとつにしても、ミスすれば大きな損害を与えることになる。報酬は数万円でも、背負う責任はその何十倍、何百倍。そんな緊張感の中でやってる仕事だということを、誰かにちゃんと知ってほしいと思う。
「楽しいですか？」と聞かれて黙ってしまう理由
「楽しいですか？」という質問ほど、答えるのが難しい。達成感がある瞬間はある。でも「楽しい」と言い切れるほど、心に余裕があるわけじゃない。むしろ、やらなきゃいけないことに追われて、自分の感情にフタをしてる感じ。楽しさよりも、責任と義務感で動いてる日々の方が多いと思う。
自己肯定感が下がる日々
一日中パソコンに向かい、電話対応をして、誰にも感謝されないまま終わる日もある。そんな日は「自分は何のためにこの仕事をしてるんだろう」と思ってしまう。誰かに必要とされてるはずなのに、それを実感できない。それでも、ミスしないように集中して、また次の日を迎える。自己肯定感を維持するのは、簡単じゃない。
けれど辞める勇気もない
「しんどいなら辞めればいいじゃん」と言う人もいる。でも、ここまできたらもう、ほかの仕事なんて想像もできない。司法書士として生きていくと決めた以上、簡単に逃げられない。独立した身には、退職願を出す相手すらいない。続けることも苦しいけど、辞めることの方がもっと怖いんだ。
それでも続けている理由
たくさんの葛藤がありながらも、司法書士を続けているのは、やっぱりこの仕事が「誰かの助け」になっているという実感があるからだ。日々の疲れの中でも、その一言に救われてきた。
誰かの「助かった」に救われる
「本当に助かりました」「あなたにお願いしてよかった」――その一言をもらえる瞬間だけは、すべてが報われる気がする。人の人生に少しだけでも関われたという感覚は、何にも代えがたい。だから、また翌日もスーツに腕を通す。文句を言いながらも、きっと自分はこの仕事を好きなんだと思う。
司法書士という生き方しか、もう残ってない
若いころのように、あれこれ選べる年齢じゃない。女性にもモテないし、プライベートは空っぽ。でも、司法書士という生き方は、自分にとって唯一の「誇れるもの」になっている。逃げ道がないぶん、ここで生き抜くしかない。そう腹を括ったとき、不思議と力が湧いてくる。たとえ誰に理解されなくても、自分だけは自分の選んだ道を信じたい。
